介護業界の離職経験者1,600人に対する調査 

2018年12月06日

ベネッセスタイルケアの社内シンクタンク「ベネッセ シニア・介護研究所」と、パーソル総合研究所は、介護業界の離職経験者1,600人を対象としたアンケート結果をもとに、介護人材の成長とキャリアの観点から定着・離職のポイントを分析しました。

調査結果概要


  • 離職した介護職の31%が入社1年未満。離職者の55%が業界外に流出し(無職含む)、条件によらず介護職への明確な復職意向がある人は6%だが、条件次第で復職したい人も52%いる。
  • 介護職を離職した人のうち、21.3%が「給与の低さ」、17.3%が「キャリアの見通しのなさ」を離職理由として挙げている。
  • 「キャリアの見通しのなさ」による離職には「仕事内容が変わらないこと」や「給与・報酬が上がらないこと」が影響していた。また、ロールモデルや相談相手の存在が「キャリアの見通しのなさ」を和らげる効果が確認された。
  • 介護業界への復職の後押しにはキャリアと連動した給与の改善とともに働きやすい職場づくりが不可欠である

調査結果詳細


1.離職した介護職の31%が入社1年未満。離職者の55%が業界外に流出し(無職含む)、条件によらず介護職への明確な復職意向がある人は6%だが、条件次第で復職したい人も52%いる。

図1に示したように、離職した介護職のうち、31%が1年未満、61%が3年未満に離職をしていました。1年以内での離職者が多く、早期離職が課題であると言えます。
また、離職した介護職の55%が業界外へ流出していますが(無職含む)、元介護職のうち条件によらず介護職への明確な復職意向がある人は6%、条件次第で復職してもよいと考えている人が52%いることが明らかになりました。

2.介護職を離職した人のうち、21.3%が「給与の低さ」、17.3%が「キャリアの見通しのなさ」を離職理由として挙げている。

介護職を離職した人に離職理由を聴取したところ、図2に示したように、21.3%が「給与の低さ」、17.3%が「キャリアの見通しのなさ」を理由として挙げていました。
離職までの在籍期間別に見ると、入社1年以上5年未満で「給与の低さ」「キャリアの見通しのなさ」を離職理由として挙げる人の割合が高くなっていました。入社後1年を過ぎると、給与の低さやキャリアを不安視するようになる様相が見てとれます。特にキャリアの面では、1年を過ぎたところでキャリアの見通しのなさにより離職する人の割合が大きく増えていました。

また、図3に示したように、「給与の低さ」「キャリアの見通しのなさ」は男性30代で離職理由として挙げられる割合が高くなっていました。男性においては、30代で多くなる結婚などのライフステージ変化の時期に、キャリアの見通しを立てることが重要となります。

3.「キャリアの見通しのなさ」による離職には「仕事内容が変わらないこと」や「給与・報酬が上がらないこと」が影響していた。また、ロールモデルや相談相手の存在が「キャリアの見通しのなさ」を和らげる効果が確認された。

重回帰分析をおこなった結果、「キャリアの見通しのなさ」には、「仕事内容が変わらず、飽きてしまった」「ロールモデルがいない」といった職場要因が影響を与えていました*1。「仕事内容が変わらず、飽きてしまった」というのは、介護の仕事の専門性や深化が感じられていないことを示唆しています。パーソル総合研究所が実施した「働く1万人の就業・成長定点調査2018」では、介護職は自身の成長を非常に重視する傾向が出ており、役職・等級が上がることよりも専門性を高めることやより広い視野で仕事ができるようになることを成長として捉えていることがわかっています*2。このように高い成長志向を持っている介護職のキャリアを支援するための鍵は、いかにして成長を実感できるような環境を整えていけるかであると言えます。そのためには、「ロールモデルがいない」と感じられている現状を是正することも必要です。

また、「キャリアの見通しのなさ」の背景要因として、「給与・報酬が上がらない」ことも影響していました。「給与の低さ」は、単純に低いことが問題であるというよりも、成長やキャリアとの関係性のなかで問題視されていることが分かります。したがって、介護職の能力・仕事ぶりをきちんと評価し、これを給与にも反映することが、介護職が長く働き続けることにつながると考えられます。

一方、離職理由と人間関係との関連性を見たところ、図4に示したように、「給与の低さ」は周囲の人が話を聞いてくれなかったこと、「キャリアの見通しのなさ」はホーム長・施設長やリーダー・主任といったマネジメント層との関係性が関連していました(統計的に1%水準で有意であり、影響があると判断できます)。上述したように、「キャリアの見通しのなさ」には「ロールモデルがいない」ことも影響しており、たとえばベテランスタッフがロールモデルとしての役割を担うことが有効であると考えられます。

さらに、相談相手がいない場合に、キャリアや給与の問題による離職者の割合が高くなっていることもわかりました(図5)。

これらの職場の人間関係や相談相手の存在についての結果も併せて考えると、上司だけでなく、職場の周りの人たちが介護職としての成長を支えて、仕事ぶりを評価したり相談にのったりすることが、本人のキャリアアップを支えるとともに離職を食い止めることにもつながるのではないかと思われます。

4.介護業界への復職の後押しにはキャリアと連動した給与の改善とともに働きやすい職場づくりが不可欠である。

1で示したように、現在介護業界で働いていない元介護職のうち、条件によってはまた介護業界で働きたい、と回答した人は52%でした。
図6に示したように、復職の条件として、現在介護業界で働いていない元介護職の5割が、給与・報酬が十分高ければ復職したいと考えていることが分かりました。しかし、給与・報酬を復職条件として挙げた人の80.9%は他の条件も挙げており、介護業界を去った介護職経験者を呼び戻すには、給与・報酬の改善を前提としながらも、働きやすい職場づくり、環境づくりも不可欠であることが窺えます。

復職にあたって希望する給与水準(月額)は、いずれの性別・年代においても離職時の水準よりも高く、平均するとプラス5.7万円でした。働く上で給与・報酬が重要なポイントであることは間違いありません。しかし、3で述べたように、介護職の中で給与はあくまでキャリアとの関係性の中で問題視されているため、単に給与を改善するのではなく、働き方やキャリアと連動した形で給与体系を整えることが、介護職の定着につなげる上で重要であると言えるでしょう。

*1 投入した全変数で欠損(非該当)がない介護職離職者(n=634)を対象として、各理由による離職有無を目的変数としたロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を実施したところ、「仕事内容が変わらず、飽きてしまった」「ロールモデルがいない」「給与・報酬が上がらない」といった職場要因がp<.01で有意となりました。

*2 パーソル総合研究所「働く1万人の就業・成長定点調査2018」によると、介護職は他の職種と比べて「働くことを通じた成長が重要だと思う」という回答が86.2%と高くなっています(全体は79.7%)。介護職の成長イメージは、「より専門性の高い仕事ができるようになること」(全体+6.2ptsで有意に高い)、「より広い視野で仕事ができるようになること」(全体+4.8ptsで有意に高い)、「役職・等級が上がること」(全体-4.6ptsで有意に低い)などが特徴です。

調査概要


■調査名:パーソル総合研究所/ベネッセシニア・介護研究所「介護人材の離職実態調査2017」
■対象および回収サンプル数:
・介護業界の現場職を過去10年以内に離職した者:1,600名
・年齢 20-65歳
※離職理由の1位・2位がともに不可避退職(転居・事業閉鎖など)の者は除外
※施設形態(訪問介護・通所介護・有料老人ホーム等)/企業/雇用形態/勤務時間 すべて条件不問
■調査方法:インターネット定量調査
■実施時期:2017年12月27日(水)-2018年1月5日(金)

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