幼児期から小学生の家庭教育調査・縦断調査(年少児から小学4年生) 

2019年02月25日

ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所では、子どもを持つ保護者402名を対象に、2012年1月~2018年3月にかけて「幼児期から小学生の家庭教育調査・縦断調査」を毎年実施してまいりました。

本調査は、3歳児から小学4年生までの7年間、同じ子どもの様子や保護者の意識の変化を追い、幼児期から児童期にかけての子どもの育ちや保護者の関わりを明らかにすることを目的としています。近年、幼児教育に関心が高まる中、このようなテーマで行う縦断調査は少なく、幼保小接続や家庭での保護者の関わりを考える上で貴重な知見を得られる機会となっております。

<幼児期に必要な学習準備に関する3つの軸>
 本調査では、小学校入学以降の学習や生活につながる幼児期の学習準備として、3つの軸の《生活習慣》、《学びに向かう力》、《文字・数・思考》を設定して調査を行いました。『がんばる力』は、《学びに向かう力》を構成する5つの力のうちの1つで、「物事をあきらめずに、挑戦することができる」「自分でしたいことがうまくいかないときでも、工夫して達成しようとすることができる」「一度始めたことは最後までやり通せる」「どんなことに対しても、自信を持って取り組むことができる」の4項目ではかったものです。 ※5つ各々の力に関する説明は図1参照

*《生活習慣》 生活リズム、食事、あいさつ、片付けなど、生活していくために必要な生活習慣全般。
*《学びに向かう力》自分の気持ちを言う、相手の意見を聞く、物事に挑戦するなど『好奇心』・『自己主張』・『協調性』・『自己抑制』・『がんばる力』の5つの力から成り立つ。
*《文字・数・思考》文字や数の読み書き、順序の理解など小学校段階での学習につながる、『文字』・『数』・『言葉』・『分類する力』の4つの力から成り立つ。

このたび小学4年生まで追跡したことで、幼児期には《学びに向かう力》を構成する5つの力の中で『がんばる力』を身につけることが、小学校低学年での「自分から進んで勉強する」といった学習態度や小学校高学年の思考力を伸ばすことが明らかになりました。また、幼児期から児童期にかけて『がんばる力』を育むには、保育の質(園で過ごす環境や体験の内容)、家庭環境などの様々な要素がありますが、家庭教育の調査として親子の関わりの観点からは「保護者が子どもの意欲を支えること」「自分で考えられるように働きかけること」の重要性がわかりました。

主な調査結果


1. 幼児期に「物事をあきらめずに挑戦する」といった『がんばる力』が高い子どもほど、小学校低学年(1~3年)で「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」などの学習態度や『がんばる力』も引き続き高い傾向にある。
●幼児期に「物事をあきらめずに挑戦する」、「自分でしたいことがうまくいかないときでも、工夫して達成しようとすることができる」といった『がんばる力』が高く身についた子どもほど、小学校低学年で「勉強していてわからないときに、自分で考え、解決しようとする」、「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」傾向が見られた。(図2・3)

2.小学校低学年で学習態度や『がんばる力』が身についていると小学4年生での言葉のスキルや思考力が高くなる。
●「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」といった小学校低学年での主体的な学習態度や「物事をあきらめずに挑戦する」といった『がんばる力』の高さは、小学4年生での「ノートを整理して書いている」「自分のことばで順序をたてて、相手にわかるように話せる」などの言葉のスキルや思考力の高さにつながっている。(図4・5)

3.親の関わりでは、子どもの意欲を大切にする態度や思考の促し(子どもが自分で考えられるように働きかけること)が幼児期から児童期にかけての『がんばる力』に影響を与えている。
●幼児期から児童期の『がんばる力』に、親の関わりがどのように影響するかを分析した結果、子どもの意欲を大切にすることや、思考の促しといった養育態度が影響を与えていた。(図6・7)また、それは親の就労の有無や子どもが幼稚園、保育園出身であるかによる違いは見られなかった。(図8・9)

【調査結果からの考察】
 7年間にわたる追跡調査により、幼児期に培った『がんばる力』が土台となり、小学校低学年で主体的な学習態度やがんばる力が身につき、小学校高学年(4年生)の言葉のスキル・思考力につながっていることが明らかになりました。幼稚園教育要領や保育所保育指針等、小学校学習指導要領では、子どもが主体的・対話的で深い学びができるよう配慮されています。また、言葉のスキルや思考力は、教科を理解する上での基本的な力であり、より抽象的で深い学びに入っていく小学4年生にとって大切です。小学校での学びの土台としての幼児期の《学びに向かう力》である『がんばる力』の大切さが改めて確認されたと言えるでしょう。

 また、保護者の関わりと子どもの育ちの関係においては、母親の就労状況や子どもが保育所に通ったか幼稚園に通ったかといった違いに関わりなく、保護者の養育態度や関わりが子どもの育ちに影響を与えていることが明らかになりました。子どものやりたいことを尊重し、思考を促す関わりが、子どものがんばる力を育て、小学校での言葉のスキルや思考力につながっていく。変化のスピードの激しいこれからの社会において主体的に学ぶ態度や学び方を身につけるためには、このような大人の関わりを含めた子どもを取り巻く環境を豊かにするとともに、子ども自身が主体的に考えることのできる機会を保障することが求められているのではないでしょうか。
 『がんばる力』は、児童期以降でも身につくものであることが先行研究により明らかにされています。今後は小学校入学以降の育ちについても詳しく見ていく予定です。

調査概要


■名称:幼児期から小学生の家庭教育調査・縦断調査(年少児から小学4年生)
■調査テーマ:幼児期から小学4年生までの子どもの学びの様子と、保護者の関わりや意識
■調査方法:郵送法(自記式アンケートを郵送により配布・回収)
■調査時期:初回調査 :年少児期(3 歳児クラス) 2012 年 1~2 月
(縦断調査)第 1 回~7回 :毎年 1~3 月に実施。
■調査対象:子どもが年少児から小学4年生までの縦断調査に7年間参加した母親 402 名(全国)
■調査項目:学びに向かう力・生活習慣・学習準備等の実態/母親の養育態度/母親の関わ
りなど

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