年金運用ガバナンスに関する実態調査2018(上場・非上場企業の年金運用実務ご担当者) 

2019年03月29日

あずさ監査法人は、確定給付型企業年金の運用担当者を対象に、年金運用ガバナンスに関する実態調査を実施しました。

2017年度は堅調な株価を反映して年金運用利回りは良好でしたが、2018年度は米中関税摩擦等に端を発する先行き不明な世界経済の見通しを反映し、軟調に推移しています。
このような環境下の中で、年金資産の確保および運用収益の向上を目的として、年金資産運用のガバナンス対応が本格化しています。
2018年4月の確定給付企業年金法の改正でガバナンス強化が図られたことに加え、2018年6月の改正コーポレートガバナンス・コードでは自社の企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮を求められており、どのような対応を行っているかの開示が必要となりました。

本調査では、年金運用の人材配置の状況、年金運用に関するガバナンス体制・モニタリング体制をはじめ、企業が直面する課題やそれらに対する提言をまとめています。主な調査結果は、以下のとおりです。

調査結果


■年金運用人材は他の業務との兼務者が8割以上を占める

企業の規模を問わず大半の企業では、80%以上が他の業務を兼務しながら年金運用に従事している状況であり、かつ年金運用業務への従事割合も50%以下の人材が大半となっています。また、年金運用担当者の育成を支援していると答えた企業は、30%以下にとどまっています。外部専門家を利用している企業は40%以下にとどまっており、担当者が助力もない兼務状態で年金運用業務を行っている現状が考えられます。企業は担当者がより年金運用業務に注力できるよう人材配置を行うほか、社内人材の育成支援や外部専門家の利用によるサポートが望まれます。

■年金運用の報告頻度は毎月または四半期ごとが過半数を占める

調査結果では、年1回は取締役会・経営会議へ報告するという企業が49%ある反面、報告なしの企業も35%あり、ばらつきがみられます。マネジメント自身が年金運用の重要性を認識し、定期的な実績報告体制の整備や運用担当者の育成を支援することが望まれます。また、年金運用担当者が負担に感じている事項として、「専門的内容を上位者に理解してもらうための工夫」が第1位に挙がっています。担当者がマネジメントの理解を得ることに苦労している様子が伺われます。

■年金受益者と母体企業の利益相反管理ができている企業は約3割にとどまる

確定給付企業年金法によれば、企業年金の実施者は、年金受益者の利益を第一に考えて、年金資産の運用能力・運用成績の高い委託先を選定することが必要です。しかし実際には、母体企業の取引関係も考慮して委託先は決定されており、純粋に能力だけで委託先を決定している企業は、全体の30%程度です。
ガバナンス強化にあたって、企業自身が年金運用受託機関との利益相反に関する課題を認識する必要があります。

本調査結果より、年金運用担当者が孤軍奮闘している様子がうかがわれ、その結果として業務が属人化することが懸念されます。企業においては、長期的に安定した年金運用が組織的に行われるよう、定期的な人事ローテーションや後継者の育成などの人事支援策を講じていくことが求められます。

調査概要


■調査対象:以下に該当する上場・非上場企業(約1,900社)の年金運用実務ご担当者
(1)連結従業員数300名以上
(2)有価証券報告書に退職給付制度に関する注記をしている
(3)確定給付企業年金または厚生年金基金を実施している旨の注記がされている
■調査期間:2018年10月~11月
■調査方法:書面による回答
■回答数:211名(回答率:11%)

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[あずさ監査法人]
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