介護の不安に関する調査 

2014年12月24日
明治安田生活福祉研究所は、全国の20歳~69歳の男女 6,195 人を対象に、介護の不安に関する調査を実施。
自分が将来“介護する”場合と“介護される”場合を想定すると、それぞれどのような不安があり、その不安はどの程度なのか。また、介護の不安には、介護経験者と未経験者にどのような違いがあるのかなどについて、調査結果から浮かび上がった点をご紹介します。

【調査結果のポイント】

○自分が将来介護すると思う相手(介護未経験者のみ対象)
・女性が将来介護すると考える相手は平均「2人」で、男性の「1.4人」を大きく上回る
・女性の4人に1人が「姑」、5人に1人が「舅」の介護を想定

○自分が将来介護する場合の不安(介護未経験者のみ対象)

・介護経験のない男性の約4割、女性の約半数が「自分の経済的負担」に大きな不安
・将来介護する際に特に不安なことは、「介護費用」と「介護相手の認知症」

○将来自分を介護してくれると思う人
・介護を経験した男性は、自分は「妻」に介護されるだろうという気持ちが増加
・介護経験者の約3割、未経験者の約4割が、将来自分を介護してくれる家族・親族を想定できず
・女性の約2割が、将来自分を主に介護してくれると思うのは「娘」

○自分が将来介護を受けることになった場合の不安の大きさ
・介護未経験の女性の半数近くが、将来自分が介護を受けることが「とても不安」
・女性は介護経験により経済的負担への不安が減少、男性は変化なし

○自分が将来介護を受けることになった場合の具体的な不安の内容
・介護を経験した女性は、認知症になった自分を介護してもらうことへの不安が増加

○姑を介護する嫁の不安と苦労
・嫁は予想より高い確率で姑の介護に深く関与
・姑を介護した嫁の半数以上が、姑との人間関係に苦労

【調査結果】

1.自分が将来介護すると思う相手(介護未経験者のみ対象)
◎ 女性が将来介護すると考える人数は平均「2人」で、男性の「1.4 人」を大きく上回る
◎ 女性の4人に1人が「姑」、5人に1人が「舅」の介護を想定

■ 介護未経験者の半数が、将来「自分の母親」を介護することを想定
・介護経験のない人に、将来自分が誰を介護することになると思うかを訊ねたところ(複数回答)、約半数(50.1%)が「自分の母親」と回答しました。次いで「配偶者」(41.3%)、「自分の父親」(37.8%)と続きます。
・「自分の母親」が「自分の父親」を 10 ポイント以上上回っているのは、平均寿命の男女差をふまえ、“父親が要介護になった際は母親が介護し、母親がひとりになって介護が必要になったら自分が介護する”というようなことを想定している人が多いからであると考えられます。

■ 女性が将来介護すると考える人数は平均「2人」で、男性の「1.4 人」を大きく上回る
・自分が今後介護すると考える平均人数は、男性の「1.4 人」に対し、女性は「2.0 人」でした。女性のほうが多い傾向が見られます。
・女性が介護相手として一番多く挙げているのは「夫」(53.2%)。「自分の母親」(52.7%)、「自分の父親」(40.3%)と続きます。

■ 女性の4人に1人が「姑」、5人に1人が「舅」の介護を想定
・男女の違いが際立つのは、まず、女性は半数以上(53.2%)が「夫」を介護すると考えているのに対し、「妻」の介護を想定している男性は約3割(30.2%)にすぎないことです。
・義理の父(舅)・義理の母(姑)の介護に関しては、「舅」は男性の 8.7%に対して女性は 18.9%、「姑」は男性の 12.8%に対して女性は 26.4%が介護することを想定しており、それぞれ女性が男性の2倍以上となりました。また、介護を想定する相手が「誰もいない」と回答した割合は、女性は 17.6%なのに対し、男性は 30.9%を占めています。
・女性のほうが介護を自分のこととして考えている人が多いことがうかがえます。

■ 女性の1割近くが、自分が最も深く介護に関わると思うのは「義理の親」
・自分が将来最も深く介護に関わると思う相手をひとり選んでもらったところ、「配偶者」が約3割(30.9%)、次いで「自分の母親」(27.0%)、「自分の父親」(10.8%)の順でした。
・女性の回答では、「夫」が 38.9%、「自分の両親」が 33.6%(「母親」26.3%、「父親」7.3%)ですが、「姑」(6.0%)と「舅」(2.0%)を合わせると 8.0%となっており、自分が最も深く介護に関わる相手を「義理の親」と予想している女性が約1割いる点が注目されます。

2.自分が将来介護する場合の不安(介護未経験者のみ対象)
◎ 介護経験のない男性の約4割、女性の約半数が、「自分の経済的負担」に大きな不安
◎ 将来介護する際に特に不安なことは、男女とも「介護費用」と「介護相手の認知症」
介護の経験がない人に、将来自分が介護をする場合の不安(介護全般と6項目の不安要素)について、その不安の大きさを訊ねました。

■ 女性のほうが男性より介護に対してより大きな不安を
・介護全般(「介護について総合的に」)について「とても不安を感じる」と回答した割合は、男性が 38.0%、女性は男性より7ポイント高い 45.0%でした。「とても不安を感じる」と答えた割合は、6項目の不安要素すべてで女性が男性を上回っており、女性のほうが将来介護をすることに対して、より大きな不安を感じていることがわかりました。

■ 男女とも最も不安が大きいのは「自分の経済的負担」
・不安の要素別に「とても不安を感じる」人の割合を比較すると、男性は、「自分の経済的負担」(42.0%)、「介護についてわからない点」(35.1%)の順でした。
・一方、女性は「自分の経済的負担」が男性と同様に1位であることに加え、半数以上(51.1%)を占めている点が注目されます。次いで「自分の精神的負担」(46.8%)と「自分の身体的負担」(45.7%)となっており、自分が介護の主体となることを想定し、経済面とともに、介護行動に直接つながる要素に関する不安が大きいことがわかりました。

■ 将来介護する際に不安なことは、男女とも1位「介護費用」、2位「介護相手の認知症・物忘れ」
・将来介護する際に不安な具体的内容(複数回答)は、男女とも1位は「介護費用」、2位は「介護する相手の認知症・物忘れ」でした。
・「介護と仕事の両立」と「自分の住まい」以外の項目は、すべて女性が男性を上回っており、特に「介護疲れによるうつ」(女性 55.1%、男性 39.7%)、「家族・親族の協力不足」(女性 27.5%、男性 14.8%)は、男女差が目立っています。女性は、介護を担うこととなった場合の自分の精神的な負担と、ひとりで介護をしなければならなくなる不安が強いことがうかがわれます。

3.将来自分を介護してくれると思う人
◎ 介護を経験した男性は、自分は「妻」に介護されるだろうという気持ちが増加
◎ 介護経験者の約3割、未経験者の約4割が、将来自分を介護してくれる家族・親族を想定できず
◎ 女性の約2割が、将来自分を主に介護してくれると思うのは「娘」

■ 介護を経験した男性は、自分は「妻」に介護されるだろうという気持ちが増加
・家族・親族のうち将来自分を介護してくれると思う人(複数回答)のトップは、男女とも「配偶者」でした。
・ただし、女性は、「配偶者」が介護未経験者・経験者いずれでも 40%台だったのに対し、男性は、介護未経験者では 49.3%、介護経験者では 65.6%で、介護経験により大きく増加しています。母親が父親を介護する姿を間近に見てきたことで、自分のこともきっと「妻」が介護してくれるだろうという思いを持つのではないでしょうか。
・女性の2位は「娘」でした。自分が介護する側で「母親」の介護を想定する人が多かったことから、自分が介護される側で「娘」による介護を期待する気持ちは頷けます。一方、男性も「娘」を想定する割合は比較的高く、特に介護経験者では2位で、4人に1人(25.3%)が挙げています。自分が介護と仕事の両立に苦労した経験から、女性である娘による介護を期待するのかもしれません。

■ 介護経験者の約3割、未経験者の約4割が、将来自分を介護してくれる家族・親族を想定できず
・この質問は、家族・親族のいる人(独身だが将来結婚すると思う人を含む)に回答いただいたものですが、自分を介護してくれる家族・親族を想定できない人(「わからない」と「誰もいない」)が、介護未経験者の約4割(男性 43.4%、女性 39.6%)、介護経験者でも3割前後(男性25.2%、女性 31.4%)を占めることは、とても注目されます。

■ 女性の約2割が、将来自分を主に介護してくれると思うのは「娘」
・将来、自分に対する介護に最も関わると思う人を1人挙げてもらうと、男性の場合、「わからない」と「誰もいない」を除くと、回答は「妻」が大半となりました。
・一方、女性も「夫」が1位(介護未経験者 34.9%、経験者 33.9%)ですが、介護未経験者の 16.7%、介護経験者では 22.8%が「娘」を挙げており、自分が将来介護が必要になった場合に「娘」への期待が大きいことがわかります。

■ 家族介護を期待できない人の半数近くが公的介護保険サービスの利用手続きを「知らない」
・家族・親族のうち将来自分を介護してくれると思う人が「誰もいない」人のうち、全年齢で半数近く(44.3%)、60 歳代でも4人に1人(23.4%)が、公的介護保険サービスを利用する場合に必要な手続きを「ほとんど・まったく知らない」と回答しました。
・これらの人が将来介護が必要になった場合、家族・親族や行政等によりサービス利用手続きが適切に行なわれない限り、必要な介護を受けられないおそれがあります。

4.自分が将来介護を受けることになった場合の不安の大きさ
◎ 介護未経験の女性の半数近くが、将来自分が介護を受けることが「とても不安」
◎ 女性は介護経験により経済的負担への不安が減少、男性は変化なし自分が将来介護を受けることになった場合の不安(介護全般と7項目の不安要素)について、その不安の大きさを訊ねました。

■ 介護未経験の女性の半数近くが、将来自分が介護を受けることが「とても不安」
・介護全般(「介護について総合的に」)について「とても不安を感じる」と回答した割合は、介護未経験者では男性が 31.4%、女性が 47.3%でした。介護を経験したことのない女性の半数近くが、自分が介護を受けることに大きな不安を抱いていることがわかりました。

■ 介護を経験することで、不安がやや軽減される面も
・一方、介護経験者で「とても不安を感じる」と回答した割合は、男性は 27.3%、女性は 40.0で、介護未経験者を男性で 4.1 ポイント、女性では 7.3 ポイント下回っています。
・介護未経験者は漠然と大きな不安を持ちがちなのに対し、自ら介護を経験して介護の実態を知ることによって、介護全般に対する不安がやや小さくなる面があるようです。

■ 介護を経験することにより、介護の準備や知識の不安は減少
・不安の要素別に見ると、「とても不安を感じる」と回答した割合は、介護全般と同様にすべての項目で女性が男性を上回っています。
・介護未経験者と経験者について、不安の要素別・男女別に「とても不安を感じる」と回答した割合を比較しました。その結果、「介護についてわからない点」においては、介護経験により大きく減少していました(男性:29.3%→21.2%、女性:41.1%→28.1%)。また、「介護に対する準備」においても、介護経験により減少していました(男性:28.8%→23.0%、女性:41.4%→31.2%)。実際に介護を経験することで、介護の知識が得られたり、自分が将来介護を受けることの準備をしたりするようになったことがわかります。
・一方、「介護する家族・親族の精神的負担」「介護する家族・親族の身体的負担」「介護する家族・親族の時間に対する拘束」においては、男女とも介護未経験者と経験者でほとんど差がありませんでした。これらの項目については、自分が介護した際の苦労が大きく、介護される側になった場合に介護してくれる人にかける苦労への不安が減らないのではないかと考えられます。

■ 女性は介護経験により経済的負担への不安が減少、男性は変化なし
・「介護する家族・親族の経済的負担」「自分の経済的負担」について「とても不安を感じる」と回答した割合は、男性では介護を経験することによってあまり変化していないのに対し、女性では大きく減少していました(「介護する家族・親族の経済的負担」:49.5%→41.3%、「自分の経済的負担」:49.7%→42.1%)。
・女性のほうが家計の支出について把握している傾向が高いと考えられるところ、介護経験により実際の経済的負担がわかることで、女性は経済的負担への不安が減るのではないかと考えられます。

5.自分が将来介護を受けることになった場合の具体的な不安の内容
◎ 介護を経験した女性は、認知症になった自分を介護してもらうことへの不安が増加

■ 介護を経験した女性は、認知症になった自分を介護してもらうことへの不安が増加
・将来自分が介護を受けるとした場合に具体的に不安な内容(複数回答)は、介護経験の有無にかかわらず、男女とも「介護費用」「自分の認知症・物忘れ」「介護する人との人間関係」「経済的な準備不足」「介護する人手の不足・介護する人がいない」がトップ5です。
・全項目とも、男性より女性のほうが不安に挙げる人の割合が高いのですが、中でも「自分の認知症・物忘れ」は男女で大きな差となっています。特に介護を経験した女性の 63.9%がこの不安を挙げており、自身の介護経験から、将来自分が認知症になることに不安を感じる女性が多いことが推察されます。

■ 介護を経験した女性は、子どもなどの「仕事と介護の両立」を心配
・「介護する人の仕事との両立」も、将来介護を受けることになった際の不安として、介護を経験した男女間に差が目立つ項目です(女性 31.7%、男性 20.6%)。親の介護の際に自分自身が離職したりするケースは女性のほうが多く、そうした経験をふまえ、子どもなどに同じ苦労をさせることを心配する人も、女性のほうが多いものと考えられます。
・介護経験者が未経験者を大きく下回った項目としては、「介護する人のうつ」が挙げられます(男性:未経験者 28.2%・経験者 18.2%、女性:未経験者 36.4%、経験者 21.3%)。経験者は、自身が介護を乗り切ったことで、「介護うつ」に対する不安が薄らいだものと思われます。

6.姑を介護する嫁の不安と苦労
◎ 嫁は予想より高い確率で姑の介護に深く関与
◎ 姑を介護した嫁の半数以上が、姑との人間関係に苦労

■ 嫁は予想より高い確率で姑の介護に深く関与
・介護経験のない女性に、「姑」(義理の母親)を将来介護することになると思うか訊ねたところ、4人に1人(26.4%)が「介護すると思う」と回答しました。この想定は現実とほぼ一致しており、介護経験のある女性のうち、姑を介護したことがある割合は 21.7%でした。
・また、自分が最も介護に深く関わると思う相手が「姑」だと考えている介護未経験の女性は 6.0%なのに対し、介護経験者のうち最も介護した相手が実際に「姑」だった女性は 14.8%です。介護未経験の女性が想定するより、高い確率で姑の介護に深く関わることになるようです。

■ 最も深く介護に関わるのが姑と考える介護未経験の女性の4割が、「自分ひとりで姑を介護することになるのでは」と心配
・姑を介護することは、嫁にとってどの程度不安が大きいものなのでしょうか。自分が最も介護に深く関与する相手を「姑」と想定している女性、「実の母親」と想定している女性、「それ以外の家族・親族」を想定している女性について、主な不安がある人の割合を比較しました。
・「介護する相手との人間関係」を不安に思う人の割合は、想定する介護相手が「姑」の場合は59.3%で、「実の母親」の場合の 35.8%を大きく上回っています。
・また、「家族・親族の協力不足」を不安に思う人の割合は、想定する介護相手が「姑」の場合は39.5%で、「実の母親」の場合(29.9%)とは 10 ポイント近い差がありました。介護未経験の女性の4割が、将来自分ひとりで姑の介護をすることになるのではと心配しているのです。

■ 姑を介護した嫁の半数以上が、姑との人間関係に苦労
・「姑」を介護した経験のある嫁は、実際にどのようなことに苦労しているのでしょうか。
・最も介護に深く関与した相手が「姑」だった女性の半数強(53.2%)が、介護相手である「姑」との人間関係に苦労したと回答しています。これは、介護相手が「実の母親」だった場合(32.1%)を 20 ポイント以上上回っています。
・さらに、「家族・親族の協力不足」に苦労した女性も、介護相手が「姑」だった人(33.1%)のほうが、「実の母親」だった人(23.3%)より 10 ポイント近く高い結果となりました。
・また、「介護する相手の認知症・物忘れ」に苦労した女性は、介護相手が「姑」の場合は 42.4%でした。「実の母親」(38.4%)とは差が4ポイントでしたが、「それ以外の家族・親族」(32.5%)とは 10 ポイント近くの大きな差がついています。
・以上のように、嫁が「姑」を介護する場合には、姑以外の家族・親族を介護する場合に比べて苦労を多く味わう傾向が見られます。将来の介護に備え、できるだけ早いうちから、夫はもちろん、夫の親や親族と話し合って、協力が得られる関係を作っておくことが、介護の苦労を少しでも軽減させることにつながると思われます。


【調査概要】
調査対象: 全国の 20 歳以上 69 歳以下の男女
調査方法: WEB アンケート調査(株式会社マクロミルの登録モニター対象)
調査時期: 2014 年3月 18 日~3月 20 日
回収数: 6,195 人(うち、過去 10 年以内に自身の家族・親族を介護した経験がある人 3,101人、経験がない人 3,094 人)

その他、詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[明治安田生活福祉研究所]
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