連合(日本労働組合総連合会)は、労働者の労働実態(時間)や労働時間に対する考え方、受け止め方を探るため「労働時間に関する調査」を、モバイルリサーチにより、2014年10月31日~11月5日の6日間において実施し、20歳~59歳の男女雇用労働者3,000名の有効サンプルを集計しました。

【調査トピックス】

・1日の平均的な労働時間 正規労働者は平均8.9時間、非正規労働者は平均6.4時間

・「残業を命じられることがある」約6割

・平均残業時間 一般社員20.5時間/月、課長クラス以上28.4時間/月

・「賃金不払い残業(サービス残業)をせざるを得ないことがある」4割強

・平均賃金不払い残業(サービス残業)時間 一般社員18.6時間/月、課長クラス以上28.0時間/月

・残業の原因 1位「仕事を分担できるメンバーが少ない」、2位「業務量が多い」

・「適正な人員配置」で残業は減らせると思う 5割半

・「上司は業務量について適切なマネジメントを行っているとは思わない」3割半

・ホワイトカラー・エグゼンプションが導入されようとしていること「内容までは知らない」8割半

・労働時間に関するルール 緩和vs強化 「緩和すべき」約1割、「強化すべき」5割


【調査結果】

~~就業規則について~~
◆「勤め先の就業規則を把握していない」4人に1人
◆「勤め先に就業規則があるか、ないかわからない」1割、非正規労働者では1割半

会社で働く場合の労働時間の長さや休日等は、就業規則に定められています。
そこで、20歳~59歳の男女雇用労働者(正規労働者・非正規労働者)3,000名(全回答者)に、勤務先に就業規則があるか、また自身が内容を把握しているか聞いたところ、「会社に就業規則があり、自分自身その内容を把握している」は59.1%、「会社に就業規則はあるが、自分自身はその内容を把握していない」は25.7%、「会社に就業規則はない(従業員数が10人未満であるため等)」5.3%、「会社に就業規則があるかどうか分からない」は9.9%となりました。
就業形態別にみると、「会社に就業規則があるかどうか分からない」と回答したのは、正規労働者では4.7%でしたが非正規労働者では16.7%となり、正規労働者より10ポイント以上高くなりました。

~~労働時間について~~
◆1日の平均的な労働時間 正規労働者は平均8.9時間、非正規労働者は平均6.4時間
◆労働時間の管理方法 一般社員は「タイムレコーダー」、課長クラス以上は「自己申告」が最多

全回答者(3,000名)に、通常の勤務日1日の、平均的な労働時間を聞いたところ、最も多かったのは「7時間~8時間未満」26.0%、僅差で「8時間~9時間未満」24.9%となり、平均時間は7.8時間となりました。
就業形態別に平均時間をみると、正規労働者では8.9時間、非正規労働者では6.4時間となりました。
また、正規労働者について、役職別に平均時間をみると、一般社員8.7時間、主任クラス9.1時間、係長クラス9.0時間、課長クラス以上9.1時間という結果でした。

続いて、全回答者(3,000名)に、勤務先では、自身の労働時間をどのように管理しているか聞いたところ、「タイムレコーダーによる管理」が最も多く35.3%、次いで「自己申告による管理」26.9%が2割半、「ICカードによる管理」13.2%、「PCによる管理(ログイン・ログオフの時刻による管理)」12.7%が1割台で続きました。
正規労働者について、役職別にみると、一般社員と主任クラスでは「タイムレコーダーによる管理」が最も高く、それぞれ34.7%、30.7%でしたが、係長クラスでは「タイムレコーダーによる管理」と「自己申告による管理」が23.3%で同じ割合となり、課長クラス以上では「自己申告による管理」が39.0%で最も高くなりました。

~~残業について~~
◆「残業を命じられることがある」約6割
◆平均残業時間 一般社員20.5時間/月、課長クラス以上28.4時間/月
◆「賃金不払い残業(サービス残業)をせざるを得ないことがある」4割強
◆平均賃金不払い残業(サービス残業時間) 一般社員18.6時間/月、課長クラス以上28.0時間/月
◆「残業時間が前年に比べ増えた」4人に1人
◆残業の原因 1位「仕事を分担できるメンバーが少ない」、2位「業務量が多い」
◆「適正な人員配置」で残業は減らせると思う 5割半
◆「上司は業務量について適切なマネジメントを行っているとは思わない」3割半
◆“残業を命じるには36協定が必要” 6割が「知らない」

労働時間についてみてきましたが、労働時間は残業の有無によって大きく変わってきます。
全回答者(3,000名)に、残業を命じられることがあるか聞いたところ(※)、「ある」59.2%、「ない」が40.8%となり、約6割が残業を命じられることがあると回答しました。
就業形態別にみると、残業を命じられることがある人の割合は、正規労働者では62.7%と6割を超え、非正規労働者では54.6%となりました。
また、正規労働者について、役職別にみると、残業を命じられることがある人の割合は、一般社員64.5%、主任クラスでは65.3%、係長クラスでは70.7%と役職が上がるにつれ高くなりましたが、係長クラスが最も高く、課長クラス以上は46.6%と半数を下回る結果となりました。
※残業を「する」ことではなく、「命じられること」について聴取した点に留意

次に、残業を命じられることがある1,775名に、1ヶ月の平均残業時間を聞いたところ、「10時間未満」53.6%、「10時間~20時間未満」17.8%、「20時間~30時間未満」11.0%となり、平均時間は18.0時間となりました。
就業形態別にみると、正規労働者では、月60時間以上という、特に長い残業を命じられることがある人が6.9%存在しており、正規労働者、非正規労働者のそれぞれの平均時間は、正規労働者22.1時間、非正規労働者11.8時間となりました。
また、正規労働者について、役職別に平均時間をみると、一般社員20.5時間、主任クラス25.8時間、係長クラス21.6時間、課長クラス以上28.4時間となりました。

そして、賃金不払い残業(サービス残業)をせざるを得ないことがあるか聞いたところ、「ある」42.6%、「ない」57.4%となり、4割強が賃金不払い残業(サービス残業)をせざるを得ないことがあると回答しました。
就業形態別にみると、賃金不払い残業(サービス残業)をせざるを得ないことがあると回答したのは、正規労働者では51.9%と半数を超え、非正規労働者では30.5%となり、正規労働者のほうが20ポイント以上高くなりました。
また、正規労働者について、役職別にみると、賃金不払い残業(サービス残業)をせざるを得ないことがある人の割合は、一般社員48.6%、主任クラス57.8%、係長クラス63.9%と役職が上がるにつれ高くなり、係長クラスが最も高い結果となりました。

次に、賃金不払い残業(サービス残業)をせざるを得ないことがある1,277名に、1ヶ月の平均的な賃金不払い残業(サービス残業)時間を聞いたところ、「10時間未満」59.7%、「10時間~20時間未満」16.8%となり、平均時間は16.7時間となりました。
就業形態別に、平均時間をみると、正規労働者では20.0時間、非正規労働者では9.5時間となりました。
また、正規労働者について、役職別に平均時間をみると、一般社員18.6時間、主任クラス19.6時間、係長クラス17.5時間、課長クラス以上28.0時間となり、課長クラス以上が他の役職に比べて長い結果となりました。

また、残業を命じられることがあると回答した1,775名に、残業時間が前年と比べてどう変化したか聞いたところ、「増えた」25.8%、「減った」20.6%、「変わらない」53.6%となりました。4人に1人が、前年と比較して残業時間が増えたようです。

それでは、何が残業の原因となっているのでしょうか。
残業を命じられることがあると回答した1,775名に、どのようなことが残業の原因になっていると思うか聞いたところ、最多回答は「仕事を分担できるメンバーが少ないこと」で53.5%、僅差で「残業をしなければ業務が処理しきれないほど、業務量が多いこと」52.6%となり、「職場のワーク・ライフ・バランスに対する意識が低いこと」23.7%、「職場に長時間労働が評価される風潮があること」10.4%が続きました。職場のメンバーが少ないことや業務量が多いことに原因を感じている人が多いようです。また、ワーク・ライフ・バランスに対する意識が低いといった職場の体質も上位となりました。
他方、「残業代を稼ぎたいと思っていること」8.7%、「時間を掛けてよりよい仕事・自分が満足できる仕事にしたいこと」8.6%、「自分自身が残業を前提に仕事の計画を立てていること」5.6%、「仕事に集中していない時間が多いこと」4.2%は、それぞれ1割未満となり、自身の仕事に対する姿勢を原因と考えている人は多くはないようです。

次に、残業を命じられることがあると回答した1,775名に、どうすれば残業を減らすことができると思うか聞いたところ、「適正な人員配置を行う」55.6%がトップとなり、次いで「上司が部下の労働時間を、適切にマネジメントする」25.7%、「職場のワーク・ライフ・バランスに対する意識を変える」24.0%、「会社との話し合いで職場環境を改善する」23.0%、「意味のない会議やミーティングを減らすなど、仕事の進め方を変える」22.4%、「長時間の残業(時間外労働)を規制する法律・ルールを新たに作る」21.1%が2割台で続きました。残業を減らすためには、会社によるマネジメントの見直し・適正化が必要と考えている人が多いようです。

どうすれば残業を減らすことができると思うかについて、“上司が部下の労働時間を適切にマネジメントする”ことが上位に挙がりましたが、上司は実際に部下の労働時間を適切にマネジメントできているのでしょうか。
残業を命じられることがあると回答した1,775名に、上司は、部下の業務量がオーバーしそうなときに、適切なマネジメント(※)を行っていると思うか聞いたところ、「そう思う」33.6%、「そうは思わない」36.9%、「分からない」29.5%となり、適切なマネジメントが行われていると思う人とそう思わない人が拮抗する結果となりました。
※部下の業務遂行の状況や抱えている課題等を把握し、それに基づいて仕事の進め方に関してアドバイスをしたり、与える仕事の量を増減させたりするなど

会社が残業を命じるには、労働者の過半数を代表する者との間で労使協定(いわゆる36協定)を結んでおくことが必要となります。
全回答者(3,000名)に、そのことを知っているか聞いたところ、「知っている」39.4%、「知らない」60.6%となり、知らない人が多数派となりました。

~~法定休日・年次有給休暇について~~
◆法定休日が「あらかじめ定められていない」1割強
◆昨年の年次有給休暇消化状況 4割が「取得・消化していない」、5人に1人が「1割程度消化」
◆年次有給休暇が消化できない理由 「人手不足」、「取りづらい雰囲気」、「(病気などに備え)残しておきたい」

全回答者(3,000名)に、勤務先では、法定休日(※)がどの日・曜日であるかが、あらかじめ定められているか聞いたところ、「あらかじめ就業規則に定められている(シフト制で、シフトについての就業規則があり、守られている場合を含む)」が76.1%で、4人に3人の割合となりました。「あらかじめ定められていない(その都度、上司によって指定・変更されている)」は11.1%、「分からない」は12.7%でした。
※労働基準法第35条に定められた休日のことで、「毎週少なくとも1日、または4週間に4日以上の休日を与えなければならない」とされている休日をいう

全回答者(3,000名)に、昨年1年間、年次有給休暇をどのくらい消化したか聞いたところ、「有給休暇は取得・消化していない」が39.6%で最も多く、「1割程度消化」21.0%、「3割程度消化」12.4%、「5割程度消化」7.9%、「7割程度消化」7.6%、「全て消化」11.6%という結果となりました。

年次有給休暇を全て消化した人は、全体(取得していない人も含まれる)の1割程度にとどまっていましたが、年次有給休暇を消化できない理由はどこにあるのでしょうか。
全回答者(3,000名)に、どのようなことが年次有給休暇を消化できない理由になっていると思うか聞いたところ、最も多かったのは「人手不足のため、年次有給休暇を取ると業務に支障が生じるから」45.6%、次いで「年次有給休暇を取りづらい雰囲気があるから」30.9%、「病気や休養などに備えて残しておきたいから」29.4%、「職場に仕事量が多く休暇が取れないから」24.8%、「周囲のメンバーも休暇を取っていないから」16.6%が続きました。“人手不足”や“仕事量の多さ”、“周囲の雰囲気・状況”、“万が一の備え”が理由になっているようです。

現在、労働時間のあり方については、ワーク・ライフ・バランスの重要性が指摘される一方、国際競争の観点から、企業の生産性向上といった視点も重要だといわれています。
そこで、全回答者(3,000名)に、ワーク・ライフ・バランスと企業の生産性向上を両立することができると思うか聞いたところ、「(両者は無関係なので)それぞれに対応する取り組みを進めていけばよい」37.1%、「(両者は二律背反の関係にあるので)両立させることはできない(難しい)」23.0%となりました。また、「分からない」は40.0%となり、ワーク・ライフ・バランスと生産性向上の両立は、難しい問題だと捉えられているのかもしれません。

~~ホワイトカラー・エグゼンプションの導入について~~
◆ホワイトカラー・エグゼンプションが導入されようとしていること 「内容までは知らない」8割半
◆ホワイトカラー・エグゼンプションが導入されたら「利用は避けたい」約4割、「利用したい」約2割
◆労働時間に関するルール 緩和vs強化 「緩和すべき」約1割、「強化すべき」5割

現在、日本では「1日8時間以内、1週間40時間以内」といった労働時間に関するルールが法律で定められていますが、いま、政府は、一定以上の年収を得ている労働者をこうしたルールの対象外にする法改正を行い、そうした労働者には残業代を一切支払わなくてよいとする仕組み(=ホワイトカラー・エグゼンプション)を導入しようとしています。
全回答者(3,000名)に、このような形で労働時間に関するルールが緩和されようとしていることを知っていたか聞いたところ、「内容まで詳しく知っている」は15.0%と1割半にとどまり、「見聞きしたことはあるが、内容までは知らない」が51.3%、「見聞きしたこともなく、全く知らない」が33.7%となり、雇用労働者(正規労働者・非正規労働者)の大多数が“内容を知らない”ことが明らかになりました。

また、このような労働時間に関するルールが緩和された場合(ホワイトカラー・エグゼンプションが導入された場合)、利用したいか、利用を避けたいかを一般社員(2,382名)に聞いたところ、「(自分で労働時間を決定できる自由度の高い制度だと思うので)積極的に利用したい」19.8%、「(長時間労働が増え、過労死などが増えると思うので)利用は避けたい」37.5%となり、利用を避けたい派が利用したい派を上回りました。また、「分からない」との回答は42.7%と4割以上みられました。

年収別にみると、「積極的に利用したい」は、年収200万円未満の層では1割台(100万円未満16.1%、100万円~200万円未満16.5%)、年収200万円~800万円未満の層では2割前後(200万円~300万円未満23.4%、300万円~400万円未満21.9%、400万円~500万円未満24.0%、500万円~600万円未満19.0%、600万円~800万円未満22.2%)と、いずれの層でも利用を避けたい派が利用したい派より多いことが明らかになりました(※)。
※年収800万円~1000万円未満、年収1000万円以上はn数が少なく参考値のため、記載を省略した

いま、政府は、成長戦略を進めるため、世界一ビジネスがしやすい国をつくるとして、“労働時間に関するルールの緩和”を進めようとしていますが、労働時間に関するルールについては、どのような意見が多いのでしょうか。
全回答者(3,000名)に、労働時間に関するルールについて、どのように考えるか聞いたところ、「国の経済成長のために、労働時間に関するルールを緩和すべき」と回答したのは11.2%にとどまり、「労働者の命と健康を守るために、労働時間に関するルールを強化すべき(緩和すべきではない)」が49.9%で多数派となりました。雇用労働者(正規労働者・非正規労働者)の半数が労働時間に関するルールは強化すべき(緩和すべきでない)と考えていることがわかりました。また、「どちらともいえない(分からない)」は38.9%でした。


【調査概要】
・調査タイトル:労働時間に関する調査
・調査対象:ネットエイジアリサーチのモバイルモニター会員を母集団とする20歳~59歳の男女雇用労働者(正規労働者・非正規労働者)
・調査期間:2014年10月31日~2014年11月5日
・調査方法:インターネット調査
・調査地域:全国
・有効回答数:3,000サンプル(有効回答から性別×年代が均等になるよう抽出。)
 男性(20代 375サンプル/30代 375サンプル/40代 375サンプル/50代 375サンプル)
 女性(20代 375サンプル/30代 375サンプル/40代 375サンプル/50代 375サンプル)
・実施機関:ネットエイジア株式会社

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