エネルギー・環境問題をはじめとする社会問題への意識や理解度調査(就活生対象) 

2015年09月03日
生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研は、就活生300名を対象に、エネルギー・環境問題をはじめとする社会問題への意識や理解度を探るために、アンケート調査を行いました。なお、調査対象とした就活生とは、「現在、就職活動を行っている」、あるいは、「これまでに就職活動を行ったことがある」という大学生、大学院生、短大生としました。

【調査結果】

◆ 文系と理系の大きな差… 大学生のエネルギー・環境問題への意識・理解を探る

就職活動では、大学生が企業や経済について知ったり、社会をより近い存在として感じたりする機会が増えます。多くの大学生にとって、就職活動は社会問題を“自分ごと化”して考えるきっかけになっていると言えるでしょう。しかし、一言に「社会問題」といっても、そのテーマは様々です。そこで、社会問題を8つのテーマに分けて、意識・関心が高いのはどんなテーマなのかを調べました。

[社会問題の8つのテーマ]
・ 政治・行政に関するテーマ :
  法律・政令・政府・政党・国会・財政などに関する問題
・ 経済に関するテーマ :
  企業・経済変動・為替・国際競争力・技術などに関する問題
・ 社会制度に関するテーマ :
  教育・育児・社会保障・少子高齢化などに関する問題
・ 資源・エネルギーに関するテーマ :
  電力、ガス、水などの安定供給・各種資源の輸入、価格などに関する問題
・ 環境に関するテーマ :
  地球温暖化・酸性雨・砂漠化・オゾン層破壊・環境汚染などに関する問題
・ 災害・事故に関するテーマ :
  自然災害・交通事故・火災などに関する問題
・ 犯罪・治安に関するテーマ :
  様々な犯罪・テロ・迷惑行為などに関する問題
・ 外交・国際社会に関するテーマ :
  各国との関係性・戦争・国際紛争・内乱・国際的な犯罪などに関する問題

その結果、各テーマに対する意識・関心については、理系と文系の大学生の間で大きな差が見られました。理系の大学生が意識・関心が高いとした上位3つのテーマは、「環境に関するテーマ」(68%)、「資源・エネルギーに関するテーマ」(65%)、「災害・事故に関するテーマ」(57%)。一方、文系の就活生にとっての上位3つのテーマは、「政治・行政に関するテーマ」(76%)、「社会制度に関するテーマ」(73%)、「経済に関するテーマ」(68%)でした。
特に、今回フォーカスする「エネルギー・環境問題」については、両者の差が顕著です。理系の大学生にとっては上位2テーマだった「環境に関するテーマ」(理系:第1位・68%、文系:第7位・61%)と「資源・エネルギーに関するテーマ」(理系:第2位・65%、文系:第8位・59%)ですが、文系では、意識・関心が高いテーマの中で下位2つとなりました。「エネルギー・環境問題」について考えるには、科学的な知識や技術的な知識など、理系ならではの領域に関わる理解を要することがあります。そのため、文系の大学生にとっては立ち入りがたい専門領域のテーマとして見えてしまうこともあるかもしれません。
それでは、こうした社会問題に対して、大学生はどのように情報収集をしているのでしょうか。「社会問題について知るための情報源」を複数回答形式でたずねたところ、最も多かった回答は「インターネット」(78%)でした。幅広くパソコンやスマートフォンを利用している就活生においては、「テレビ」(72%)、「新聞」(62%)といったメディアよりも、インターネットの影響力が上回ることが分かりました。

◆ 二択の選択形式で5割を下回る正答率も… 大学生の理解度の低さが目立った、エネルギー・環境問題

次に、これらの社会問題の中でも、エネルギー・環境問題にフォーカスし、詳しく聞いてみました。
まず、気をつけたいのは、エネルギー・環境問題の範囲は非常に広く、その課題や解決方法は様々だということです。そのため、単純に一括りにして議論することはできません。そこで、エネルギー問題、および、環境問題のそれぞれについて、大学生にとって特に興味・関心の高いテーマを調べました。
まず、環境問題においては、大学生の関心度が最も高いテーマは「地球温暖化」(68%)でした。2位の「大気汚染」(43%)の1.5倍以上の就活生が関心を示しており、大学生にとっては、地球温暖化が環境問題における中心的な問題であるようです。

一方、エネルギー問題については、各テーマの関心度は総じて高く、それぞれの差が小さかったのが特徴です。その中でも、特に関心を示した人が多かったのは、「原子力発電のニーズとリスク」(75%)、「太陽光発電などの再生可能エネルギー」(73%)、「二酸化炭素の排出量と温暖化リスク」(72%)といったテーマです。

しかし、このように多くの大学生が興味・関心を示すエネルギー・環境問題ですが、前述の通り、その問題を正しく理解するためには、科学や技術など、理系ならではの領域に関わる知識が前提となることも少なくありません。また、経済や外交、国際問題など、幅広い領域にまたがり、多角的に捉えるべき問題が多いのも特徴です。そのため、様々なエネルギー・環境問題に対して、誤った理解をしている大学生もいるのではないかと思われます。
そこで、エネルギー・環境問題に関する10個の情報に対して、それぞれを正しく理解できているか調べるために、各情報の正誤を答えてもらいました。二択の選択形式としたので、ランダムで選択しても正答率は50%となるこの正誤問題。正答率が50%を下回る設問などもあり、全体的に非常に低い正答率にとどまりました。

[正しく理解しているか調べた、エネルギー環境問題に関する10個の情報]
<正答率:46%>
 2015年7月時点で、日本の原子力発電所は全て稼働を停止している。
<正答率:49%>
 電気料金の値上がりの一因である電力賦課金は、今後20年間は値下がりすることはない。
<正答率:50%>
 日本の電力(2013年度)の内、火力発電による電力はおよそ9割を占める。
<正答率:52%>
 原子力発電所が再稼働すれば、電気料金は値下がりするとされている。
<正答率:57%>
 日本の温室効果ガスの削減目標は、「2030年度に2013年度比26%削減」である。
<正答率:61%>
 再生可能エネルギーの導入量が増えると、その分、消費者が負担する電気料金は増える。
<正答率:61%>
 2015年6月のG7サミットでは、参加国間において、世界の温室効果ガスの削減目標が合意された。
<正答率:64%>
 日本の電気料金は、値上がりを続けており、2014年度には2010年度比25%以上の値上がりとなった。
<正答率:67%>
 日本の電力(2013年度)の内、太陽光発電などの再生可能エネルギーが占める割合は3%未満。
<正答率:72%>
 2015年12月に開催されるCOP21では、温暖化対策の枠組みが世界的に合意されることが期待される。

その中でも、最も正答率が低かったのが原子力発電所の稼働停止に関する設問です。先日、川内原子力発電所が再稼働するまでの約2年間、日本の全ての原子力発電所は稼働を停止していました。しかし、こうした事実を正確に理解している人は非常に少ないと言えるでしょう。
次いで正答率が低かったのは、電気料金の値上がりと再生可能エネルギーに関する設問です。東日本大震災の後、日本の電気料金は値上がりを続けており、2014年度には、その値上がりの幅は2010年度比25%以上にものぼります。その最大の理由は、原子力発電所が稼働を停止し、その代わりを火力発電で賄っていることによる燃料費が増加したことですが、この他にも一因となっているのが、電力賦課金です。この電力賦課金に関する質問についても、正答率が50%を下回りました。再生可能エネルギーの利用拡大のために導入された電力賦課金ですが、このことを理解できている大学生が非常に少ないことが分かります。
原子力発電と再生可能エネルギー。これらは、エネルギー問題の中でも特に関心が高かったテーマです。しかし、興味・関心は高くとも、それが正しいエネルギー・環境問題の理解にはつながっていないというのが、今回の結果だと言えるでしょう。


【調査概要】
・調査名 : 就活生の社会問題への意識・理解に関する調査
・調査対象 : 10代・20代の男女300名
 ⇒ 現在、大学、大学院、短期大学に通っている人
 ⇒ 「就職活動を行った経験がある」という人
※ 就職活動には、企業の直接的な採用活動への参加だけに限らず、インターンシップへの参加など、幅広く就職するための活動全般を含む
・調査期間 : 2015年8月6日(木)~2015年8月12日(水)
・調査方法 : インターネット調査
・調査実施機関 : 楽天リサーチ株式会社

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[トレンド総研]
 マイページ TOP