ドライブ旅行と鉄道旅行の実態と今後の意向調査 

2015年05月29日
JTB総合研究所は、「クルマと鉄道、どう使い分ける?~ドライブ旅行と鉄道旅行の実態と今後の意向調査~」を実施しました。当社は、生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を継続的に行っています。

国内旅行で車は長い間重要な移動の手段となってきました。「観光の実態と志向(平成25年度版)」(日本観光振興協会)によれば、宿泊観光における主な交通手段として自家用車を利用した割合は46.2%と半数近くを占めています。過去しばらく高騰していたガソリン代も値下がり傾向に転じ、今後は車を利用した旅行への後押しともなりそうです。一方、近年、「ななつ星in九州」をはじめ、乗ること自体が旅の目的となるような観光列車が次々と導入されるなど、鉄道を利用した旅も人気を博しています。今年3月の北陸新幹線や15年に控えている北海道新幹線の開業が、新しい旅行や交流の動機づけになり、沿線地域の活性化につながることが期待されています。では、人々はどのように車と鉄道を使い分け、旅を楽しんでいるのでしょうか。2013年3月に実施した「ドライブ旅行に関するアンケート調査~SA・PA、道の駅の利用動向について~」の調査に引き続き、ドライブ旅行の実態や今後の意向などについて調査を実施しました。

【調査結果サマリー】

◆ドライブ旅行頻度が高い人は鉄道旅行頻度が高い。普段からスポーツやボランティアなどにも積極的な傾向

◆旅行の行程はともに「単純往復」が最も多い(ドライブ旅行51.3%、鉄道旅行55.1%)。「周遊」の場合はドライブ旅行21.9%、鉄道旅行8.2%と差が広がる

◆観光先は「あらかじめ計画を立てる」(ドライブ旅行51.9%、鉄道旅行53.4%)と意外に計画的

◆荷物が多い時や周遊型旅行はドライブ旅行、遠方への旅行や都市型観光は鉄道旅行


【調査概要】
・調査手法:インターネットアンケート調査
・調査対象:日本全国に居住する20歳以上の男女で、過去2年以内に1回以上、宿泊を伴うドライブ旅行をした人1,185名、宿泊を伴う鉄道旅行をした人928名(重複あり)
・調査期間:2015年5月8日~5月13日

【調査結果】

1.旅行で利用した交通手段、全体で車が51.8%、鉄道が40.0%(過去2年間)。ただし都心部(東名大)は車が49.3%、鉄道が43.6%。この2年間にドライブ旅行に出かけた人は51.8%、鉄道旅行へ出かけた人は40.0%

この2年間の宿泊を伴う旅行で利用した交通手段(複数回答)を見てみると、自家用車やレンタカー/友知人の車を利用して自宅近くから出発するドライブ旅行へ出かけた人は全体の51.8%。鉄道旅行は40.0%、飛行機は32.6%と続きました。地域別では、都市部である東名大(首都圏、名古屋圏、大阪圏)の地域では、鉄道旅行の割合が43.6%と高くなっています。また、性年代別に利用した主な交通手段を見てみると、20代の男性、20~30代の女性で比較的自宅近くからレンタカーや友知人の車を借りて出かけるドライブ旅行や、鉄道旅行、飛行機旅行の割合が高くなりました。
自分で運転をするかどうかを聞いたところ、全国平均で男性が89.0%、女性が44.8%となりました。性年代別でみると、男性では40代で90%前後、60代でも90%前後と、自分で運転をする割合はあまり変わりません。一方、女性は男性に比べて同乗するだけの割合が高く、53.3%が「同乗するだけ」となりました。地域・性年代別に見ると、東名大の女性は年齢による差が少なく、30代~40代でやや自分で運転する割合がやや高まるものの、60代では38.3%が自分で運転をしてドライブ旅行に出かけています。

2.ドライブ旅行頻度が高い人は鉄道旅行頻度が高い。普段からスポーツやボランティアなどにも積極的な傾向

ドライブ旅行頻度の高い人は鉄道旅行頻度も高い結果となり、概して旅行好きといえるでしょう。普段どのような活動をしているかを聞いたところ、ドライブ旅行の頻度が高い人は、スポーツやボランティアなどにも積極的に時間を使っていることがわかりました。一方、芝居や芸術、映画鑑賞などは、スポーツやボランティアほどドライブ旅行頻度との関連は強くないようです。また、ライフスタイル価値観への回答を見てみると、ドライブ旅行頻度が高いほど旅行好きなのはもちろん、流行や話題の場所へ興味が強く、知的好奇心も旺盛である傾向がみられました。また、どちらかというと外に出て身体を動かしたり、人と接したりするような行動を好み、流行に敏感で情報感度が高い人が多い傾向にありました。鉄道旅行頻度も比較的高かったことから、どちらかの交通手段に限定するよりは、旅行の目的や同行者などによって使い分ける人が多いのではないでしょうか。

【直近のドライブ旅行と鉄道旅行(過去2年以内)の実態と今後の意向】
3.旅行を思い立ったきっかけは「友人や家族との会話」が1位(ドライブ旅行 32.2%、鉄道旅行 32.5%)
 旅行決定後の情報源はドライブ旅行では「宿泊施設のサイト(23.9%)」、鉄道旅行では「旅行会社や旅行情報サイト(20.8%)」


直近の旅行について、旅行を思い立ったきっかけは、「友人や家族との会話」がドライブ旅行 32.2%、鉄道旅行 32.5%と、どちらの旅行でも1位でした。2位には、ドライブ旅行では「宿泊施設のサイト(16.6%)」、鉄道旅行では「旅行会社や旅行情報サイト(14.7%)が旅行を思い立ったきっかけとしてあげられました。
旅行先が決まった後、旅行先について詳しく調べる情報源としては、ドライブ旅行では「宿泊施設のサイト(23.9%)」、鉄道旅行では「旅行会社や旅行情報サイト(20.8%)」が1位となりました。ドライブ旅行では、宿泊施設だけを自分自身で予約する場合も多いことから、宿泊施設のサイトがきっかけとなる割合が高いのだと考えられます。また、観光協会のサイト、自治体のサイトは(ドライブ旅行 14.3%、10.5%、鉄道旅行 17.6%、11.6%)、過去の調査から見ると、年々情報源として参考にする割合が高くなってきています。地域の詳しい最新情報は地域の方がよく知っているという期待や認識が広がってきたと考えられます。
旅行中の情報源は、ポータルサイトでの検索、次いでガイドブックがドライブ旅行、鉄道旅行共に1位、2位でした。スマートフォンが普及する中、旅行中に旅行情報を検索して調べることが多くなっているのではないでしょうか。

4.荷物が多い時や周遊型旅行はドライブ旅行、遠方や旅先での交通の便が良い場所への旅行は鉄道旅行
 ドライブ旅行先トップ3は長野、静岡、北海道。鉄道旅行先トップ3は東京、京都、神奈川


直近のドライブ旅行と鉄道旅行で、それぞれの交通手段を選んだ理由を聞いてみると、自動車を利用した理由の1位は「荷物が多いから(33.0%)、2 位は「車が好きだから(31.6%)」、3 位は「色々な観光地を回りたかったから(31.4%)」となりました。一方、鉄道を利用した理由の1位は「距離が遠いから(33.5%)」、2 位は「旅先での交通の便が良さそうだから(25.8%)」、3 位は「列車が好きだから(21.7%)でした。旅行先を見ても、鉄道旅行の行先トップ3は東京、京都、神奈川と、公共交通機関を使って観光しやすい都市部となりました。また、ドライブ旅行では、鉄道旅行と比較して居住地と

同一地域内での旅行が多く見られました。比較的距離が近く、荷物が多い場合や複数の観光地を回る場合はドライブ旅行、遠方への旅行や交通の便が良い都市部などへの旅行では鉄道と使い分けていることが考えられます。
また直近の旅行で車と鉄道を選んだ理由を聞いたところ、年齢別に、それぞれ車が好きで自動車を利用した人は 20代と 60代で高く、列車が好きで鉄道を利用した人は 40 代、60 代で高くなりました。

5. 旅行の目的は「観光(ドライブ旅行 80.8%、鉄道旅行 75.5%)」が大半。ドライブ旅行の目的の2位は「宿でゆっくり(30.8%)」、鉄道旅行は「家族友人訪問(24.6%)」

次にドライブ旅行、鉄道旅行、それぞれの主な目的としては、どちらの旅行も「観光」が 80.8%、75.5%と圧倒的でした。
2位は、それぞれドライブ旅行で「宿でゆっくり(30.9%)」、鉄道旅行は「家族や友人訪問(24.6%)」についで3位となりました。鉄道旅行では、帰省などにからめた観光旅行も比較的多いということでしょう。

6.旅行の行程はともに「単純往復」が最も多い(ドライブ旅行 51.3%、鉄道旅行 55.1%)。
周遊(往復のルートが全く別)の場合は、ドライブ旅行 21.9%、鉄道旅行 8.2%と差が広がる


次に旅行の行程について聞いたところ、ドライブ旅行でも鉄道旅行でも、往復のルートが全く同じ「単純往復」がそれぞれ 51.3%、55.1%と最も多くなりました。一方、ドライブ旅行では往復のルートが全く別である「周遊型」の割合も 21.9%と鉄道の 8.2%を大きく上回り、ドライブ旅行を選んだ理由の一つとしてあげられた「色々な観光地を回りたかった」を裏付けています。
主要な観光施設や宿泊施設を選ぶ際に、どの程度最寄駅やICからのアクセスを気にするかについては、ドライブ旅行では71.7%、鉄道旅行では57.8%が「気にしない」と回答しました。アクセスを気にしない人が過半数を超えてはいますが、気にする人も鉄道旅行では4割以上、ドライブ旅行でも3割近く存在します。アクセスを気にすると回答した人の内容としては、ドライブ旅行では「自宅からかかる時間(17.1%)」を気にすると回答した人が一番も多くなりました。その許容できる時間を聞いたところ、平均は 170 分でした。鉄道旅行では「最寄駅から徒歩圏内である」を気にする割合が 24.9%となり、許容できる時間の平均は 12 分でした。ドライブ旅行では、「高速道路の IC に近いこと(13.0%)」も比較的重視されていました。

7.旅行の計画の立て方は観光先と昼ごはんで異なる
観光先は「あらかじめ計画を立てる」ドライブ旅行 51.9%、鉄道旅行 53.4%、昼ごはんは行き当たりばったり。「全く計画は立てず」ドライブ旅行 45.0%、鉄道旅行 40.8%


旅行や旅先で昼ごはんを食べる場所について、あらかじめ計画を立てるかどうかという質問をしたところ、観光先については過半数が「あらかじめ計画を立てる」と回答しました。一方、昼ごはんを食べる場所については、「全く計画は立てずに出かけた」と回答した人がドライブ旅行(45.0%)、鉄道旅行(40.8%)で4割を超えました。
20 代の男女で比較してみると、女性の方がドライブ旅行でも鉄道旅行でも、「全く計画を立てずに行く」割合が高くなりました。特に鉄道旅行での昼ごはんについては、20 代男性が昼ごはんの計画を立てずに行く割合は 34.6%と同年代の女性より 20 ポイント近くも低く、意外に男性の方が計画派と言えそうです。

8.ドライブ旅行の不満は「駐車場を見つけるのが大変(25.2%)」「渋滞(25.1%)」「お酒が飲めない(21.1%)」
鉄道旅行の不満は「二次交通が不便(46.9%)」「荷物の持ち運び(35.6%)」「案内情報の不足(9.4%)」


旅行を快適に楽しんでもらうためには、不満を如何に改善するかも重要な要素の一つとなります。では、旅行者はそれぞれの旅行手段において、どのような不満を持っているのでしょうか。ドライブ旅行の不満は「駐車場を見つけるのが大変(25.2%)」「渋滞(25.1%)」「お酒が飲めない(21.1%)」が1位~3位となりました。一方、鉄道旅行の不満のトップ3は「二次交通が不便(46.9%)」「荷物の持ち運び(35.6%)」「案内情報の不足(9.4%)」でした。駐車場を簡単に探せるアプリやナビゲーションなどもありますが、ピーク時には満車であるなど、現状ではまだ十分に解決しきれてない問題と言えるでしょう。鉄道旅行では「二次交通が不便」が 46.9%と過半数近くとなりました。また、ドライブ旅行の不満としても、特に 20 代では 27.6%となりました。20代は、旅行先で公共交通機関を併用して動く人も 18.0%と比較的多く見られることから、不満も高くなっているのだと考えられます。また、鉄道旅行に関する不満も他の年代よりも 20 代で高いということがわかりました。
一方、お酒が飲めないという不満が全年代を通じて最も低いことは、昨今の若者事情を反映していると言えるかもしれません。

9.SNSやブログを通じた旅行体験の発信はドライブ旅行の方が“じっくり”。鉄道旅行ではコメントだけなど、ちょっとした投稿を“旅行中”にする割合が高い。

直近のドライブ旅行と鉄道旅行で、自分の旅行体験をSNSやブログなどを通じて発信したかどうかについては、それぞれ21.4%、21.9%となりました。年代別では、20代はそれぞれ4割以上が発信していると回答しています。また、主な発信先としては、ドライブ旅行、鉄道旅行、共に Facebook(12.2%、11.6%)が1位、次いで Twitter(5.9%、8.3%)でした。
40 代では、ブログも比較的多いようです。

発信するタイミングは、ドライブ旅行は運転をしているせいもあるのか、「自宅に戻ってからゆっくり」が 39.5%と、鉄道旅行の 34.5%と比較して5ポイント高く、発信する内容も画像や写真を伴うものが多いようです。一方、鉄道旅行では、旅行中の発信が多く、ドライブ旅行と同様に写真や画像を投稿する場合が多いものの、コメントのみや URL のシェアなど簡単な発信もドライブ旅行より多くなりました。

10.旅行先で会ったらよいと思うサービスは、頻繁に観光地を巡る循環バス(26.5%)、気軽にちょっと利用できるレンタサイクル(15.0%)、最寄駅から離れている宿泊施設までの送迎(14.2%)

旅行先であったら便利だと思うサービスについて、調査対象者全員に聞いたところ、1位は、「頻繁に観光地を巡ってくれる循環バス」26.5%で、2位の「旅先で気軽に利用できるレンタサイクル」15.0%を 11.5 ポイント上回りました。二次交通の不便さが鉄道旅行の1位に上がったことからもわかるとおり、旅行先で効率的に自分の行きたいところへ行くことができる「足」を求める気持ちが強いことが伺えます。

11.今後、「頻度を増やしたい」はドライブ旅行で 34.6%、鉄道旅行で 32.9%
理由の1位は「自分の時間に余裕ができたから(ドライブ旅行 29.4%、鉄道旅行 31.4%)」。2位はドライブ旅行「ガソリン代が安くなったから」19.2%、鉄道旅行「魅力的な列車が増えたから」17.6%


今後、ドライブ旅行と鉄道旅行の頻度を増やしたいかどうかを聞いた質問では、それぞれ 34.6%、32.9%が「増やしたい」と回答しました。性年代別では、特に 20 代の男女でドライブ旅行を増やしたいという意向が強く見られました。増やしたい理由としては、どちらの旅行でも「自分の時間に余裕ができたから」が 46.6%、44.9%と最も多くなりました。また、ドライブ旅行では「ガソリン代が安くなったから(23.4%)」、鉄道旅行では「魅力的な列車が増えたから(28.2%)」がそれぞれ2位となり、最近の環境の変化が旅行者の気持ちにも変化を与えている様子がわかります。

12.北海道新幹線の利用意向は東北居住者で高い。「利用して函館や函館周辺の観光をしてみたい(63.5%)」

最後に、2016 年3月に新青森・新函館北斗間の開業が予定されている北海道新幹線の利用意向について聞きました。
最も利用意向が高かったのは、東北エリアに住んでいる人で、「利用して函館や函館周辺の観光をしてみたい」と回答した人は 63.5%に上りました。関東地方に住んでいる人も、「利用して函館や函館周辺の観光をしてみたい」は 42.8%ありましたが、「東北旅行のついでに函館まで足を伸ばしたい」人が 10.6%と、全地域の中で最も多い結果となりました。これは、新青森駅から函館までの時間が大幅に短縮されることで、東北からの心理的な距離が縮まり、足を伸ばしたいと考える人が増えると考えられます。一方、飛行機を利用したい人も 25.8%となりました。一方、近畿より西では「函館に行くなら飛行機を利用したい」という回答の割合が多くなります。また、意外にも「あまり利用したくない」と回答した人の割合は、北海道に住んでいる人で 42.6%と最も高く、全体の 25.6%を大きく超えました。

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[JTB総合研究所]
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