医療機関におけるストレスチェック実態調査 

2016年08月10日
エス・エム・エスは、当社グループが提供する「医療機関特化型ストレスチェック代行サービス」を通してストレスチェックの実施支援をした医療機関の結果を分析しました。

厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルには、「職業性ストレス簡易調査票」に基づき、高ストレス者の割合が「10%」となるように設定された数値基準の例が示されています。当社グループでストレスチェックの実施支援をした医療機関を上記基準で判定したところ、9割以上の医療機関で高ストレス者の割合が10%を超える結果となりました。
このように医療業界に高ストレス者が多く存在している一方で、本来職員の健康管理に重要な役割を果たすべき産業医については、約3割の医療機関で「理事長・院長」が兼務している状態であることがアンケート調査により明らかになりました。経営者が産業医を兼務している場合、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先するなど、産業医としての職務が適切に遂行されない恐れがあると推測されます。

<調査結果>

【医療機関におけるストレスチェック実態調査レポート】

調査1.医療機関における高ストレス者の割合

ストレスチェック調査結果1

結果:ストレスチェック実施済医療機関の約9割で、高ストレス者の割合が10%を超える
91.9%の医療機関で、高ストレス者の割合が10%を超える結果となった。 また、15%を超える医療機関も29.7%存在した。
※数値基準は「ストレスチェック制度実施マニュアル」に記載のある「職業性ストレス簡易調査票(57 項目)」を用いて、20万人のデータから高ストレス者の割合が「10%程度」となるように設定された数値基準の例を基に判定

■分析:
高ストレス者割合の目安となっている10%を91.9%の医療機関が超えただけでなく、15%を超える医療機関も29.7%存在するなど、業界として高いストレス傾向を示す結果となった。
医療機関は入院患者の生死を扱う職場であることや、夜勤当直などの不規則なシフト勤務が多いことに加えて、慢性的に人手不足であることなどから心身への負担度合いが高く、高ストレス者の割合が高くなったと推測される。高ストレス者の割合が10%という目安については「ストレスチェック項目等に関する検討委員会」において、現場が対応出来る上限という意見なども踏まえて設定されているため、産業医などの現場スタッフへの負担が懸念される。

調査2.医療機関における産業医選定状況

ストレスチェック調査2

結果:医療機関における産業医の約3割は、院長や理事長などの経営者が兼務している
25.6%が「産業医は院長・理事長などの経営者」と回答した。
また、院内の医師が産業医を兼務しているケースは全体の87.2%にのぼることも判明した。

■分析:
今回の調査で、25.6%が経営者と産業医を兼ねていると回答したが、理事長・院長などの法人の代表者・経営者や、事業場において事業を統括管理する者による産業医の兼務については、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する可能性があることから、平成29年4月1日より禁止される予定となっている。(参考:厚生労働省報道発表資料)
また、経営者に加え、一定の人事権を有していると想定される「役職者」が産業医を兼務しているケースも加えると約55%の医療機関が該当する。人事権を持つ職員が産業医を兼務する場合、人事上の不利益を懸念し、職員が自身の健康や精神的な悩みについて相談しづらくなるなどのリスクが想定される。そのため、「院外の医師」に産業医を依頼することが有効であると考えられるが、外部委託している割合は、10.3%に留まっている。
仮に人事権が無かったとしても、内部の医師が産業医を兼務している状況自体が、職員心理や産業医の独立性・中立性の観点から望ましくないと考えられるため、今後医療機関における産業医選定の方向性が変わっていく可能性があると予測される。


【調査概要】
調査1
調査対象:当社グループにて「医療機関特化型ストレスチェック代行サービス」を提供した医療機関
調査期間:2016年6月15日~2016年6月23日
調査方法:上記期間においてストレスチェック結果の集計が完了している医療機関のデータを分析
調査対象数:36事業所

調査2
調査対象:病床数20以上の医療機関に勤務する事務長
調査期間:2016年6月10日~2016年6月23日
調査方法:当社運営の医療機関事務長向け情報サイト「じむコム」上でアンケート調査を実施
有効回答数:78名

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[エス・エム・エス]
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