在宅医療・介護の連携推進に関する実態調査(ケアマネジャー対象) 

2016年11月24日
エス・エム・エスは、ケアマネジャー向けコミュニティサイト「ケアマネドットコム」にて、「在宅医療・介護の連携推進に関する実態調査」を実施し、ケアマネジャー(以下「ケアマネ」)604名より回答をいただきました。

 本調査は、2016年11月16日に開催された厚生労働省社会保障審議会介護保険部会で、在宅医療・介護の連携等に関する議論が行われたことから、当社が独自で実施したものです。同部会では、在宅医療・介護の連携等の推進のために、国や都道府県によるバックアップを充実していく方向性が確認されました。

 調査の結果、現場における在宅医療・介護の連携について「推進されていないと感じる」と回答したケアマネが4割以上おり、まだ半数近くが在宅医療・介護の連携は推進されていないと感じていることがわかりました。また、「推進されていないと感じる」と回答したケアマネほど、行政からのバックアップを感じておらず(94%)、情報共有支援のニーズが高い(23%)という結果になりました。一方で、利用者が入院した際に「要請の有無に関わらず常に情報提供している」と回答したケアマネほど「推進されていると感じる」傾向にあり、入院時カンファレンスやケアマネタイム(医師がケアマネからの電話などを受ける時間帯)の利用についても頻度が高いという結果になりました。行政に望むバックアップは両者が共通して「医療・介護関係者の情報共有の支援」との回答が最多となりました。

 以上のことから、医療側だけでなく、介護側の当事者が自ら積極的に連携を図ること、また医療・介護双方の情報共有支援を中心とする行政の充実したバックアップが、連携推進には欠かせない要素であることが浮き彫りとなりました。

【在宅医療・介護の連携推進に関する実態調査(抜粋)】

調査結果1. ケアマネの4割以上が在宅医療・介護の連携について「推進されていないと感じる」と回答
Q. ケアマネジャーとして、現場における在宅医療・介護の連携は推進されていると感じますか?

◆考察
4割以上が「推進されていないと感じる」と回答。まだ半分近くのケアマネが連携推進を実感していないことが明らかになった。一方、「推進されていると感じる」との回答は48%と、半分以下にとどまった。

調査結果2. ケアマネの8割以上が行政からのバックアップを「感じていない」
Q. ケアマネジャーとして、行政から在宅医療・介護の連携推進のためのバックアップを受けていると感じますか?

◆考察
国は2018年4月までに市町村に対し8つの在宅医療・介護連携推進事業を実施するよう求めているが、現時点で行政からのバックアップを「感じていない」と回答したケアマネが8割を超える結果となった。

調査結果3. 行政に期待するバックアップは「医療・介護関係者の情報共有の支援」が最多
Q. 行政に対し、望ましい医療・介護連携を結ぶためにどのようなバックアップを期待していますか?当てはまるものをすべてお選びください。

◆考察
ケアマネが行政に期待するバックアップは「医療・介護関係者の情報共有の支援」が最も多かった。ケアマネにとって利用者の入退院時における医療機関との情報共有が、その後の自立支援業務において非常に重要であることからも、医療・介護の関係者同士が共通の理解を得られるよう支援することが大切と言えそうだ。

調査結果4. 医療・介護の連携「推進されていると感じる」ケアマネは積極的に自ら動いている傾向
Q. 利用者が入院したとき、在宅での生活情報やケアプランなどの情報を医療機関に提供していますか?

◆考察
「医療機関からの要請の有無に関わらず常に提供している」ケアマネと「要請があった場合のみ提供している」ケアマネを比較したところ、「常に提供している」と回答した“積極的”ともいえるケアマネの方が「推進を感じている」割合が多かった。つまり「推進を感じている」ケアマネは医療機関側の要請に左右されることなく、自ら進んで連携に取り組む傾向があると考えられる。

調査結果5. ケアマネがもっとも連携を取りやすい相手は「ソーシャルワーカー」が圧倒的多数
Q. 医療機関と連携を取る際、どのような相手との関わりがもっとも連携を取りやすいですか?

◆考察
圧倒的に「ソーシャルワーカー」との回答が多かった。昨今では連携のための専門部署にMSW(医療ソーシャルワーカー)*を設置する医療機関も増えており、介護側とのパイプ役の代表と言えそうだ。

*医療ソーシャルワーカーとは、保健医療の場において、社会福祉の立場から患者のかかえる経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助し、社会復帰の促進を図る専門職の総称。(厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針」より)

調査結果6. ケアマネがもっとも連携を取りにくい相手は「医師」が圧倒的多数
Q. 医療機関と連携を取る際、どの相手との関わりがもっとも連携を取りにくいですか?

◆考察
「医師」との回答が圧倒的多数となった。忙しすぎて連絡が取れない、介護保険の理解が得られていないといった課題があると同時に、「同じ総合病院のなかでも医師によって対応が違う」、「勤務医と開業医で連携に対して温度差を感じる」という意見もあった。

調査結果7. 医療機関の病床数が少なくなるにつれて、連携が取りやすくなる傾向
 「病院の規模によって、連携の取りやすさに違いはありますか?」と質問したところ、100床以下の規模では「非常に取りやすい」「やや取りやすい」が39.2%だったのに対し、500床以上の規模になると19.4%まで減少した。

調査結果8. 都市とそれ以外で調査結果に大差なし
 2016年3月に開催された介護保険部会では、市町村の規模によって連携の進捗に違いがあるという論点が示されていた。そこで今回、東京都・大阪府・愛知県を「都市部」、それ以外の都道府県を「地方」として比較したところ、結果に大きな差はなかった。

調査結果9. ケアマネが利用者の入院を知る方法は「家族や親族から聞く」が7割超
 利用者が入院したことをどのように知るかについて質問したところ、「家族や親族から聞く」との回答が74.3%で最多となった。次いで「介護サービス事業所から聞く」11.9%、「医療機関から聞く」5.3%、「本人から聞く」3.1%だった。

調査結果10. 在宅往診医不足の指摘や独居ケースの対応時の難しさなどの課題も
 その他、自由意見では多職種合同会議などの開催により連携がうまく図られているという地域もある一方で、下記のような様々な課題が挙げられた。

(個別回答抜粋)
・往診医が不足しているため、在宅医療が促進されても結局病院に戻ってしまう。往診医を増やすべき。
・退院連携加算をもっと手厚くして、必ず連携しなければならないようにしては?
・医療・介護がいつでもどこでも連携が取れるようにするコミュニケーションツールの開発が必要。
・独居の利用者の在宅医療(特に緊急時)はキーパーソンが不在であることが多く対応が難しい。
・医療機関側の敷居の高さがある。介護を見下している。
・医師によって在宅医療に協力的かどうかがかなり違う。バラつきが大きい。
・ケアマネがもっと医療を勉強すべき。
・医療機関のホームページで連携例を紹介したり、連携室の有無を掲載してほしい。


【調査概要】
調査対象:「ケアマネドットコム」に会員登録をしているケアマネジャー
調査期間:2016年11月10日~11月15日
調査方法:インターネット調査
有効回答数:ケアマネジャー604名

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