企業における転勤の実態に関するヒアリング調査(15社対象) 

2016年11月30日
労働政策研究・研修機構は、企業における転勤の実態に関するヒアリング調査を実施。

【研究の目的】

企業における労働者の転勤については、企業独自の経営判断に基づき行われるものであるが、就職後、複数回の転勤が行われることにより、結婚・妊娠・出産・子育てといった、将来のライフプランの設計に困難をきたし継続就業の妨げになる、あるいは家族形成を阻害するとの指摘がある。現在、政府は、まち・ひと・しごと創成会議を中心に、少子化対策をはじめとする人口減少対策を検討しており、その中で、転勤については一つのテーマとしてあがっていることから、企業の転勤に関する実態について、ヒアリング調査を実施した。

【研究の方法】

ヒアリング調査。調査対象は15社。業種は、建設業、製造業、運輸業、小売業、金融業、保険業、不動産業、宿泊業、飲食業、旅行業、教育・学習支援業、介護・福祉サービス業。

【主な事実発見】

・全国的に拠点網が整備されている企業では、転勤が発生しやすく、企業買収・合併などで拠点数が増加傾向にある企業では、転勤の必要性が高まっている。全国に支社等を網羅している企業のなかには、ブロック別の採用・人事管理方針を有する企業や勤務地限定社員制度を有する企業がある。

・転勤が多い企業のなかには、勤務地限定社員制度を有する企業がある。総合職で勤務地限定がかかっているため、仕事内容では全国転勤型と勤務地限定型では同じ。転勤のリスクプレミアムとして、全国転勤型に比べて賃金格差がある。多様な人材確保(女性の地域での採用、ライフスタイルに合わせた雇用・定着化など)が導入理由として目立つ。地域限定型のまま課長職に就ける企業が多い。全国転勤型から地域限定型への転換ができる企業もある。転換は、ライフステージに合わせた働き方として転換条件・基準なしとする企業や、病気・育児・介護などの該当理由の合致を条件とする企業がある。

・転勤を求める理由は、人事ローテーション(欠員補充含む)の結果や、人材育成 、本人・組織の活性化、経営幹部育成をあげる企業が多い。

・国内転勤の特徴としては、①ジョブ・ローテーションがあり、どの年齢層でも転勤がある企業がある一方で、②若年育成の観点から入社後一定期間に転勤が少なく、30~40代中心で転勤が多い企業、③若年・中堅期までに転勤が多く、それ以降はホームタウンに定住化する企業、④転勤頻度の低い企業で中堅期以降にマネージャー職を中心に転勤がみられる企業――などがみられた。性別・未既婚の特徴をみると、女性の転勤者は少ないとする企業が多い。女性も転勤しているが、未婚者中心とする企業が目立つ。既婚者(育児期)に対しては、本人希望等を踏まえ、家庭の事情への配慮が行われている面もある。ただし、家庭の事情で女性既婚者の転勤が難しい場合でも、異動対象から外しているわけではなく、本人居住地と異動先を考慮して、子育てと両立できる範囲の異動を行うなどの工夫をしている企業が目立つ。

・海外転勤では、基本的に、語学など適性がある者を派遣している。性別では、派遣者の多くが男性である。海外派遣先が現地法人や支店等であることから、ローカル社員の管理のためマネジメント職を派遣することが多い(例えば、50歳以上層など高齢層)。また、30~40代の即戦力(プレーヤー)も派遣している。近年、若年研修の意味から1~2年の短期派遣をするケースも増えている。海外転勤者数の変化では、増加(微増)・横ばいの企業がほとんどである。現地化が進んでいる地域は、現地法人のローカル社員の育成が進んでおり、高コストの日本人(マネジャー層)を配置する必要性が減っている。そのため、現地化が進んだ地域での派遣人数は減少傾向にある。しかし、アジアを中心に拠点数が増加し、派遣人数も増えていることから、トータルではやや純増か横ばいの認識が強い。

・転勤配慮については、病気関係(本人・親の介護等)や介護(本人しかみることができない場合)、女性の育児等の家庭の事情でも配慮する企業がある。なお、女性の社会進出が進む中で、夫婦共働きへの配慮(配偶者の転勤関係含む)を求める要望もみられた。


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[労働政策研究・研修機構]
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