子育て世帯の追跡調査(第2回:2015年) 

2016年09月05日
労働政策研究・研修機構(JILPT)では、子育て中の男女に対する就労支援のあり方の検討に資するため、2011 年と 2012 年に行った「子育て世帯全国調査」(Wave1)および 2013 年に行われた「子育て世帯の追跡調査(第1回)」(Wave2)の同じ協力者に対して、2015 年 11 月、第 2 回目の追跡調査(Wave3)を行いました。1,321 世帯を対象に生活状況、保護者の就業実態などを継続して調べたもので、回収は 1,075 世帯(母子世帯 310、父子世帯 21、ふたり親世帯 726、その他・世帯形態不詳 18)でした。

【調査結果のポイント】

<ひとり親への就業支援制度に、一定の就業効果が見られる>
「自立支援教育訓練促進費」制度の未利用者に比べて、新規利用者の労働供給の増加が顕著である。Wave1 期から Wave3 期までの間に、該当制度の新規利用者において、新規就職や正社員転換といった「就業増加」型の者が全体の 42.7%を占めている。一方、「高等職業訓練促進給付金」制度については、未利用者に比較して新規利用者の労働供給の増加は見られないものの、正社員として働き続ける者の割合が高い。Wave1 期から Wave3 期までの間に、該当制度の新規利用者において、就業形態に「変化なし(正社員)」と回答した者が全体の 41.8%を占めている(9 頁、図表 5)。

<貧困状態から脱出できた世帯の割合は、母子世帯はふたり親世帯の約半分程度>
Wave1 期では貧困状態だった 86 母子世帯のうち、21 世帯(24.4%)が Wave3 期では貧困状態から脱出している。一方、Wave1 期では貧困状態だった 46 ふたり親世帯のうち、23世帯(50.0%)が Wave3 期では貧困状態から脱出している。ふたり親世帯に比べると、母子世帯は貧困状態から脱しにくいことが分かる(13 頁、図表 9)。

<子どもの成長に伴い、保育料支出は減ったが、学費の支出が大幅に増えている>
Wave1 期に比べて、Wave3 期では「保育料支出あり」と回答した世帯の割合が 2.1 ポイント下がっている(27.9%→25.8%)。一方、Wave3 期で、「学費支出あり」と回答した世帯の割合が 6.1 ポイント上昇している(56.5%→62.6%)。平均支出金額で比較しても、Wave2 期から Wave3 期までの保育料支出額はやや減少しているのに対して、学費の年間支出額が 10.3 万円も増えている(15 頁、図表 11)。

<収入が上昇した世帯と、収入が停滞・低下の世帯がそれぞれ半数程度>
半数程度の子育て世帯は収入が増えておらず、収入が停滞または低下している。母子世帯の場合、全世帯の 10.2%は年収に「変化なし」(±5%以下)、3.8%は「小幅に低下」、38.2%は「大幅に低下」した。ふたり親世帯の場合、全世帯の 19.7%は年収に「変化なし」、6.4%は「小幅に低下」、21.4%は「大幅に低下」した。残りの約半数の子育て世帯は、収入が顕著に増加した(12 頁、図表 8)。

<資格取得のための学習を行った者は労働供給と収入の伸びが大きい>
「(再)就職の準備に関する学習」を行った者は、労働供給の増加がより顕著である。「語学の学習」を行った者は、収入の上昇幅が比較的大きい。一方、「資格取得のための学習」を行った者は、労働供給の増加と収入の上昇がともに顕著である。そのうち、Wave1 期と Wave3期で有業だった母親について、「資格取得のための学習」を行ったグループでは、平均年収が49.1 万円上昇しており、それを行わなかったグループに比べて収入上昇幅が 10.5 万円大きかった(10 頁、図表 6)。

<医療・福祉関連資格の取得者は労働供給と収入の伸びが大きい>
「教育・事務関係資格」の新規取得者は、労働供給の増加がより顕著である。「実用系資格」を新規取得した者は、収入の上昇幅が比較的大きい。一方、「医療・福祉関連資格」の新規取得者は、労働供給の増加と収入の上昇がともに顕著である。そのうち、Wave1 期と Wave3 期で有業だった母親について、「医療・福祉関連資格」の新規取得者は、平均年収が 71.0 万円上昇しており、非新規取得者に比べて収入上昇幅が 31.4 万円も大きかった(11 頁、図表 7)。


【調査概要】
調査方法:訪問留置回収法
調査期間:2015年11月~12月
調査対象:JILPT「子育て世帯全国調査2011、2012」対象世帯の一部
有効回収数/回収率:1,075世帯/81.5%

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[労働政策研究・研修機構]
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