2018年度 外国人留学生の就職活動に関する調査 

2017年08月24日
ディスコではキャリタス就活 2018 に会員登録している外国人留学生を対象に、職業観や就職活動状況などを調査した。比較可能なものに関しては、国内学生や海外の大学で学ぶ日本人留学生の調査データを引用しながら分析する。

【調査結果】

1.現在の日本語力
はじめに、現在の日本語力について尋ねた。「ネイティブレベル」(12.4%)と「ビジネスレベル」(58.0%)を合わせて、ビジネスレベル以上の日本語を話せる外国人留学生は 7 割を超える(70.4%)。JLPT(日本語能力試験)のレベルについては、最高レベルである「N1」を保有している人は約 7 割(69.3%)。他方、「持っていない」人は 1 割強(11.5%)であった。企業が求める日本語コミュニケーションレベルやJLPTの入社基準に達している外国人留学生は多い。 

■JLPT(日本語能力試験)とは?
日本語を母国語としない人の日本語能力を測定し認定する試験。
【N1】幅広い場面で使われる日本語を理解することができる。
【N2】日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる。
【N3】日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。
【N4】基本的な日本語を理解することができる。
【N5】基本的な日本語をある程度理解することができる。 

2.就職後のキャリアプランと出世希望ランク
就職後のキャリアプランについては、「一つの会社にこだわらず、転職などでキャリア・アップをしたい」が最も多く(46.0%)、「一つの会社に定年まで勤めたい」(31.9%)を上回った。国内学生と比べて、転職でのキャリア・アップや独立・起業を志向する学生の割合が高い傾向にある。

続いてどこまで出世したいかを尋ねたところ、「社長」と回答した人は 25.3%。国内学生や日本人留学生と比べると、より上位の役職を目指している人が多い。 

3.就職したい企業の種類
 卒業後にどのような企業に就職したいかを尋ねたところ、「日本にある日系企業」が最も多く半数を超えた(52.3%)。「日本にある外資系企業」(24.7%)と足し合わせると 8 割近くに上り(77.0%)、卒業後も日本で働きたいと考える学生が多いことがわかる。文理別で見ても、ともに「日本にある日系企業」が半数を超えているが、文系では「日本にある外資系企業」(27.1%)が 2 番目に多いのに対し、理系では「海外にある日系企業」が 2 番目に多い。文系学生は「日本で働く」こと、理系学生は「日系企業で働く」こと希望をする傾向があるようだ。

4.日本での就職を希望する理由
 「日本で就職したい」と回答した人に、その理由を尋ねた。最も多いのは「生活環境に慣れているから」で、6 割強(61.9%)。3 位の「治安がよくて安全だから」も 4 割を超えるなど(43.7%)、日本の住みやすさを理由に挙げる留学生が多い。「外国人として日本語力を活かせるから」は 2 番目に多く過半数が選択(54.1%)。日本での留学経験を活かして活躍したい考えがうかがえる。 

5.日本企業のイメージ
日本企業のイメージについて尋ねたところ、「集団主義的な企業文化」(80.2%)、「高い日本語力が求められる」(77.6%)、「社員研修が充実している」(76.4%)、「長時間労働」(75.6%)などが多くのポイントを集めた。数字が割れる項目は少なく、外国人留学生が日本企業に対して持つイメージはある程度共通していることがわかる。

6.就職したい企業の規模と志望業界
就職したい企業規模を尋ねたところ、「業界トップ企業」(21.0%)と「大手企業」(36.5%)を合計すると 6 割近くに上り(57.5%)、国内学生よりもやや大手志向が強いと言えそうだ。一方で、「中堅中小企業」を希望する学生の割合も、国内学生を大きく上回る。国内学生に比べ、外国人留学生は希望の企業規模を明確にして就職活動をする傾向があるようだ。

 続いて、志望業界を 40 業界の中から 5 つまで選んでもらった。文系では 1 位が「商社(総合)」(34.5%)で、グローバルに活躍できる業務に携われそうな業界として毎年人気だ。2 位は「ホテル・旅行」(31.3%)で、前年調査の 24.3%から大きくポイントを伸ばした。訪日外国人対応など企業側のニーズの高まりが影響していると考えられる。
理系では、1 位「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」(30.8%)、2 位「自動車・輸送用機器」(26.9%)、3 位「医薬品・医療関連・化粧品」(25.6%)と続き、研究・開発職など専門性の高い仕事に就ける業界が人気のようだ。
「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」は文系 5 位、理系 1 位、「情報・インターネットサービス」は文系 4 位、理系 5 位に入り、国内学生に比べ IT 業界の人気が高い。

7.就職先企業を選ぶ際に重視する点
外国人留学生が就職先を選ぶ際に重視する点は、「将来性がある」が群を抜いて多く(54.6%)、2 位「給与・待遇が良い」(37.1%)、3 位「安定している」(31.0%)が続いた。
 国内学生では、1 位「安定している」、2 位「将来性がある」、3 位「給与・待遇が良い」で、上位 3 位の項目は同じだが、ポイントには差がある。「将来性」は外国人留学生の方が 10.7 ポイント高いのに対し、「安定している」は国内学生の方が 16.6 ポイント高い。
 4 位以下の「職場の雰囲気が良い」、「有名企業である」、「大企業である」などは、国内学生と同水準のポイントで、両者が企業選びで重視する点には、異なる点ばかりでなく共通点も多く見られた。

8.インターンシップ
日本国内でのインターンシップ参加経験を尋ねたところ、「参加した」と回答した外国人留学生は約 4 割(42.2%)。国内学生のインターン参加率が 8 割を超えている(84.6%)ことと比較すると、半分程度にとどまり、参加状況に大きな差が見られる。
インターン参加企業に「就職したいと思った」外国人留学生は半数を超える(52.4%)。

9.就職活動開始状況
 外国人留学生が就職活動を開始した時期は、「4 年生の 4 月」が約 3 割(27.3%)で最多で、次いで「3 年生の 3 月」(14.1%)が多い。採用広報解禁(3 月)以降の合計は過半数(54.6%)。国内学生では「3 年生の 6 月」が最も多く(20.9%)、3 月より前の合計が 9 割を超えている(95.7%)ことと比較すると、動き出しがかなり遅いことがわかる。

10.就職活動量と内定状況
調査時点(7 月)での企業へのエントリー社数は、平均 26.1 社。同時期の国内学生(39.6 社)の約 6 割の水準。セミナー参加を見ると、企業単独開催セミナーが 11.1 社、合同開催セミナーでの訪問社数 10.7 社、学内開催セミナーは 6.3 社で、いずれも国内学生を下回る。とりわけ企業単独セミナーは 5.2 社差。絞り込みが進んだと言われる国内学生よりさらに少ない。選考試験については、筆記、グループディスカッションは国内学生と大きな差はないが、面接受験から最終面接に至る割合が低いのが特徴的。国内学生は約 3 社に 1 社の割合で最終面接に進んでいるが、外国人留学生は 4 社に 1 社で、最終面接までのハードルが高いと言える。
内定率は、国内学生が 8 割超(83.2%)であるのに対し、外国人留学生は 3 割台(38.2%)。内定取得者も含め 73.9%が調査時点で就活中だった。国内学生(33.8%)の 2 倍以上に上り、外国人留学生の進捗の遅れが目立つ。

11.企業研究をする上で必要な情報・もっと発信してほしい情報
「企業研究をする上で必要な情報」と「企業にもっと発信してほしい情報」について尋ねた。
まず、企業研究をする上で知りたい情報は「外国人留学生の採用実績」が 78.4%で最も多く、「同じ出身国の社員の採用実績」が 39.9%など、外国人の採用にまつわる情報が多い一方で、「採用スケジュール」「採用予定人数」といった基礎的な採用情報にも関心が集まった。
企業にもっと発信してほしい情報については、「採用スケジュール」「採用予定人数」「採用方法やプロセス」などの採用情報の数値は大きく下がり、企業側が積極的に情報発信している様子がうかがえる。一方で、「外国人留学生の採用実績」は 6 割を超えて最も多く(64.1%)、「同じ出身国の社員の採用実績」も 3 割を超えるなど(30.7%)、外国人採用にまつわる情報の積極的な開示を、企業に求めていることがわかる。

12.就職活動の情報源
外国人留学生が活用している情報源について尋ね、上位項目をグラフにまとめた。最も多いのが「留学生向け就職サイト」で、8 割以上が選んだ(82.5%)。「日本国内学生向け就職サイト」(68.1%)がこれに続き、国内学生向けの情報源も並行して活用していることがわかる。
「留学生向けの就職イベント」(59.2%)、「日本国内学生向けの就職イベント」(37.9%)など、イベントに足を運んで情報収集をする姿勢も見られる。

また、大学や公的機関で受けたいサービスについて尋ねたところ、「留学生採用に積極的な企業情報の提供」(67.8%)、「先輩留学生からの就職アドバイス」(54.0%)、「留学生が気軽に相談できる窓口」(46.6%)の順に多かった。外国人留学生の就職活動に特化した情報や、気軽に相談できる人・窓口を求めていることがわかる。
「特になし」を選択した人は 1.4%にとどまり、多くの外国人留学生が就職に関して専門的な支援を必要としていることが読み取れる。

13.日本の就職活動でおかしいと思った制度や習慣
外国人留学生が、日本での就職活動を通して、おかしいと思った制度や習慣を尋ねてみた。
最も多いのが「就職活動の時期」(32.6%)で、卒業前の早い時期に就職活動をする必要があるため、学業との両立が厳しいというコメントが多く寄せられた。2 番目は僅差で「服装(リクルートスーツ)」(30.9%)。欧米やアジアの国でも就職活動でスーツやそれに近い服を着ることはあるが、就活専用スーツがある国は日本だけと言われており、日本特有の服装に違和感を覚えたようだ。3 位の「筆記試験」(29.4%)については、海外ではレジュメ(履歴書)と面接が選考のメインで筆記試験は行わないケースが多いからだろう。日本では習慣化している制度も、外国人留学生から見ると奇異に映ることが多いという結果となった。

14.日本への留学について
日本に留学した感想を尋ねた。「大変良かった」(50.0%)と「良かった」(39.4%)を合わせて約 9 割(89.4%)が良かったと振り返り、充実した学生生活を送ってきたことがうかがえる。海外への留学経験をもつ日本人留学生への調査結果と比較すると、満足度はやや低いものの、大半が日本での留学経験を前向きに評価している。
また、日本に留学をした理由を尋ねたところ、「日本の文化に興味があったから」が最も多く
(60.3%)、「将来日本で働きたいと思っていたから」(35.3%)、「日本の経済・企業に興味があったから」(28.7%)と続く。学生として学ぶだけでなく、卒業後に日本で働くことを見据えて留学する人も少なくないことがわかる。全体的に数字が分散しており、様々な理由や希望を持って日本への留学を選択した学生が多いことがうかがえる。


《調査概要》
調査対象:2018 年 3 月卒業予定の外国人留学生(現在、大学 4 年生・大学院修士課程 2 年生)
調査方法:インターネット調査法
調査期間:2017 年 6 月 29 日~7 月 17 日
サンプリング:キャリタス就活 2018 に登録している外国人留学生 3,624 人

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