車載用リチウムイオン電池世界市場調査 

2018年11月16日

矢野経済研究所は、2018年の車載用リチウムイオン電池世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

<車載用リチウムイオン電池市場とは>
車載用リチウムイオン電池(Lithium-ion Battery、以下 LiB)は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)などに搭載され、自動車のモーターを駆動する。本調査における車載用LiB電池市場は、乗用車及ぶ商用車のマイルドハイブリッド車(SSV、12V、48V)、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車に搭載されるLiBを対象として、2017年まではLiBが搭載されたxEVのメーカー出荷ベースで、2018年以降はxEVの生産ベースでLiB容量を算出した。

<市場に含まれる商品・サービス>
EV用LiB、PHEV用LiB、HEV用LiB、Mild HEV用LiB

1.市場概況

2017年の車載用リチウムイオン電池(Lithium-ion Battery、以下 LiB)世界市場規模は容量ベースで前年比123.1%の57.4GWhであった。(図表1参照)自動車の電動化を促進する世界各国の環境規制の強化とxEVに対する各種の優遇策などが功を奏し、深刻な大気汚染問題の改善が急務となっている中国、温室効果ガスの大幅な削減目標を掲げ世界で最も厳しい燃費規制を実施する欧州を中心にxEV市場が拡大し、車載用LiB世界市場も成長を続けている。
しかし、乗用EV向けLiB市場は高い水準で推移しているのに対し、商用EV向けは前年割れとなり、車種によって大きな差が生まれた。2017年の商用EV向けLiB市場の成長鈍化は中国政府のEV・PHEVに対する補助金制度の改正により、EVバス向け補助金が減額され、販売台数が減少したことが原因である。
2018年も乗用EVの好調による成長は続くものの、補助金制度を含む各種規制状況の変動などが影響し、成長の速度には更に陰りが出る見込みであり、2018年の車載用LiB世界市場規模は前年比108.3%の62.2GWhになる見込みである。

2.注目トピック

キーワードは「政策変動」「高容量化トレンド」「低コスト化と安定調達」
車載用LiB市場に影響を与えるxEV市場は主要国における補助金制度や燃費規制等の関連制度の変化に直接、影響を受ける状況にある。中国では補助金制度改正がxEV市場の成長、並びに車載用LiBの開発トレンドに影響を与えており、欧州では2021年のCAFE(Corporate Average Fuel Efficiency ; 企業別平均燃費基準)規制に向けたxEVラインナップの強化がOEM各社で推進されている。
一方で、車載用LiB市場では電動航続距離の延長と低コスト化を実現するため、高容量化が大きなトレンドとなっており、セルレベルやパックレベルでの様々な取組みが行われているが、原料価格の上昇や高容量化に向けた材料改良、新材料開発等が車載用LiBセルメーカーのコスト課題として挙げられる。また、品質面の課題から大手車載用LiBセルメーカー数社に需要が集中する傾向が見られ、OEMは車載用LiBセル調達におけるリスクヘッジが必要な状況が続くと見られる。

3.将来展望

2019年~2020年にかけては、各国の補助金制度を含む各種xEV優遇政策を背景にxEV市場の成長が見込まれ、車載用LiB世界市場も拡大の見通しである。主要OEMのxEV投入計画を見ると、環境規制の強化に応じて2020年前後に新規xEVモデルのラインナップ強化が予定されている。2020年の車載用LiB世界市場は容量ベースで129.2GWhと予測する。xEV種別ではHEV用が1.3GWh(構成比1.0%)、PHEV用が10.3GWh(同8.0%)、EV用が117.5GWh(同91.0%)になると予測する。
ただし、その後はxEV普及拡大の障害と指摘される、高い車体価格や短い電動航続距離、充電インフラ不足等の問題を解決するためにはまだまだ時間を要すると見られる。急速な市場拡大は期待できず、xEVのタイプや地域によって伸び率には大きな格差が生まれる可能性があると考える。2025年の車載用LiB世界市場は容量ベースで2020年比166.0%の214.5GWhと予測する。xEV種別ではHEV用が2.7GWh(構成比1.3%)、PHEV用が26.1GWh(同12.2%)、EV用が185.6GWh(同86.5%)になると予測する。

調査概要


■調査期間:2018年4月~9月
■調査対象:自動車メーカー(日本、欧州、米国、韓国、中国) 、車載用リチウムイオン電池メーカー(日本、韓国、中国)
■調査方法:当社専門調査員による直接面談取材、ならびに文献調査併用

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[矢野経済研究所]
 マイページ TOP