2012年M&Aリテンションサーベイ(M&Aで有能な人材の引き留めに成功した企業の戦略) 

2012年07月04日
合併及び買収(M&A)を行う企業の大多数は、有能な人材の流出を防ぐため継続雇用契約を活用しているが、グローバルなプロフェッショナルサービスを提供しているタワーズワトソンの調査で、人材の引き留めに成功している企業は、M&Aプロセスの初期段階からそのための施策に着手(人材を特定し、引き留めの準備)しており、単に金銭報酬に頼っていないことが明らかになった。

調査は今年初めに世界19カ国の180社を対象に実施し、優れた人材の引き留めに成功したとみられる企業が、現在用いている手法や具体的な方策に焦点を当てて分析した。それらの企業の回答により、様々な人材引き留め戦略が有効であることが判明すると同時に、経済の不透明感を背景に世界の一部地域でM&Aのペースが鈍化しているものの、買収や事業売却は依然として多くの企業にとって有効な成長戦略であることが確認された。企業の半数以上は、過去2年間に2~10件のM&Aを完了したと回答した。

成功を収めた企業の特徴

M&A戦略の一環として継続雇用契約を用いている企業の大半は、依然として優れた人材を引き留めるのに苦労している。タワーズワトソンは、人材の引き留めに成功した企業はどのような戦略を用いたのかを把握するため、成功を収めたと回答した買い手企業に焦点を当てて分析した。これらの「成功した」買い手は、買収時に継続雇用契約がかなりあるいは概ね効果的だったと答えた企業や、過去の買収において引き留め期間にすべてあるいは大半の社員を引き留めることができたと答えた企業で、全体の44%を占めている。

調査では、成功を収めた企業は、プロセスの初期段階において、どの社員を継続雇用契約の対象としたいかを決めていたことが明らかになった。成功を収めた買い手企業の4分の3近く(72%)は、デューデリジェンスの段階かあるいは買収交渉の期間内に、継続雇用契約にサインを求める社員を選別していた。そうした企業の割合は、あまり成功したとは言えない買い手企業(36%)の倍に達している。実際、あまり成功したとは言えない買い手企業では10社のうち6社近く(58%)が、買収が完了するまで社員に対して継続雇用契約へのサインを求めていなかったことが明らかになった。

成功を収めた企業が用いた方策の種類は、その多くがさほど成功しなかった企業が用いた方策と変わらないが、特定の方策を重視する傾向がある。成功を収めた買い手企業の大多数(92%)がターゲットとする社員にリテンションボーナスを支払っているのに対し、さほど成功しなかった企業は53%しか支払っていなかった。それに加え、成功を収めた企業の4分の3(74%)は、マネジャーやリーダーによる個人的な人間関係を活用しており、この方策を用いた買い手企業の割合は、さほど成功しなかった企業(24%)の3倍以上に達した。

全体的な調査結果が示す、継続雇用契約が幅広く活用されている実態

判明した調査結果の要点:

・継続雇用契約は人材を引き留める主な施策(買い手企業の84%、売り手企業の70%が活用)。このアプローチの柱はリテンションボーナス。

・買い手企業及び売り手企業のどちらも、約3分の2から4分の3以上の企業が継続雇用契約を活用。対象とする人材は、主に上級幹部、業績に貢献できる主要スタッフ、優れた技術を持つ専門家。

・リテンションボーナスはアジア企業(活用している企業の割合は40%)や欧州企業(56%)に比べ、北米企業(83%)がはるかに積極的に活用。リーダーによる個人的な人間関係を人材引き留めに活用している企業の割合は、すべての地域で同じようなパターン。

・3地域とも、買い手企業の90%あるいはそれ以上が、継続雇用契約の条項として「残留期間に応じた報酬」を規定。期間は買収完了後6ヶ月から1年間が一般的。

・成果に応じた報酬を継続雇用契約で定めている企業はそれほど多くないが、全地域に渡って買い手企業の約半数が採用しており、成果目標としては、会社全体の目標を定めている企業(38%)の倍近い企業(74%)が個人の成果目標を設定。

・人材引き留めが有効なのは、しばらくの間に限られる。回答企業によると、継続雇用契約を結んだにもかかわらず退社した社員のうち、6割がその主な理由としてM&Aを挙げた。


調査について:
タワーズワトソンの2012年M&Aリテンションサーベイは、2012年2月下旬から2012年4月上旬にかけて、世界19カ国で積極的に買収を続けている企業180社を対象に実施しました。

その他、詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[タワーズワトソン]
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