小学生の計算力に関する実態調査 2013 

2013年11月29日
ベネッセ教育総合研究所は、小学生の計算力の実態と算数に対する意識調査を実施。第1学年から第6学年までの全学年にわたり、計算に関わる技能面と学習に関わる情意面の実態調査の結果から、次の事項が明らかになってきた

〈小学生の計算力の実態〉

学習指導要領改訂で計算力アップ
学年別でみてみると、第1・2学年の計算の正答率は95%前後と前回同様によくできている。旧学習指導要領による計算が、かなり下の学年に移行し第3~6学年の計算内容がレベルアップしたが、計算力は各学年で上がっている。

計算力は、2層から3層に
前回の学習指導要領内の計算問題の正答率は第1~3学年と第4~6学年の2層で差がみられた。今回の調査では、前回より正答率が第3学年でダウンし、第4学年でアップしているが、他学年では差がみられない。その結果、今回は低学年90%中頃・中学年80%初め・高学年70%初めの3層に大別された。

スパイラルによる学習では、除法計算に課題
新学習指導要領の特徴の一つにスパイラルによる指導がある。全般的には問題なく取り入れられたが、第3学年の除数が1位数の除法計算では、商1位数と商2位数とのギャップが大きく、課題がみられた。

数範囲の拡大による誤答
整数の四則計算は、概ねよくできているといえるが、発展的な計算である第3学年の3位数×3位数の計算では、前回の正答率(25%~30%)と同様に、今回(33%)も低い。他の計算でも数範囲が広がると同様の傾向がみられる。桁数の多い計算は筆算の仕方を理解していても、実際にある程度計算をしないと定着しないといえる。

わり切れない小数のわり算が苦手
児童の苦手な計算は、第5学年の小数の除法である。商を求める際、「わり算」自体が苦手な上に被除数と除数の桁数の異なる除法、「わり進む」「概数で」「商と余り」等で求めるなど結果表現の多様性が原因として挙げられる。特に、「概数で」求める場合の位取りや「商と余り」の小数点の位置に関わる場合等が計算を困難にしている。

「小数・分数混合計算」では、小数より分数が好き
今回新しく調査した「小数・分数混合計算」は、正答率が第5学年で62%、第6学年で77%と差が大きい。一方、小数と分数のどちらに揃えて計算するかをみると、小数ではなく分数に揃える方が圧倒的に多い。第6学年の「小数・分数混合」かつ「四則混合計算」でも同傾向を示していた。

「四則混合計算」の誤答は、左から計算
四則混合計算が正しくできない。第4学年(整数:77%)、第5学年(小数:59%)、第6学年(分数:56%)。誤答の多くが左から順に計算している。整数に対し小数・分数の方が計算順序のほか計算も苦手で、誤答率が高い。

「□やχを求める式の計算」は、小数・分数になると混乱
「未知数の□やχを求める計算」では、整数:第3学年(88%)、第4学年(89%)に対し、小数や分数になると正答率は大幅に低くなる。第5学年小数:(75%)、第6学年分数:(54%)。特に第6学年で を用いた文字式になると正答率は落ちる。

分数の計算は、加減計算より乗除計算が得意
一般的に整数や小数では、乗除計算より加減計算の方が得意だが、分数の計算では、通分を要する異分母分数の加減計算が乗除計算より苦手。さらに整数から分数をひく計算を苦手としている。

基礎的な数の理解が影響
正答率の低い計算では、不注意による誤答や数の理解が不十分なために間違えているものがみられる。3位数×3位数では、部分積の繰り上がりのある加法計算、3位数の減法や諸除法では繰り下がりのある減法、小数の減法では、位取りを無視して計算する等である。分数の計算では、約分や通分、帯分数と仮分数の関係の不理解等が計算や答えを出す際に影響している。

〈算数の学習に関する意識〉

1算数が好き
・算数「好き」から「嫌い」へは、第4学年がポイント
「算数が好き」の割合は、第1学年の82.5%が最高で、第2・3学年は約2ポイントの微減で約80%だが、第4学年は約72%と大幅減、その後、第5・6学年となだらかに減少している。前回と同様に第4学年の学習意欲の低下がキーポイントとなっている。

・計算の苦手な子は、できないから「算数は嫌い」
「算数が好き」と計算力の関係をみると、計算力の上位群は、第1~3学年(84~87%)と第4~6学年(76~78%)に2分されるが大差はない。一方、下位群は、第1~3学年(68~72%)はあまり差はないが、第4学年(59%)と急落し、第5学年(53%)、第6学年(43%)と好きの割合が減少している。

2算数の学習で「うれしい」のは、「考えることができたとき」
・「むずかしい問題がとけるとうれしい」の感情体験がトップ、役立ち感はあまりもっていない
算数については「むずかしい問題がとけるとうれしい」66.4%、「テストでよい点をとれるとうれしい」42.4%、「いろいろな考え方ができておもしろい」38.3%、と考えることに喜びを感じている。なお「生活に役立っている」35.2%、「大人になったとき役に立つ」35.0%と学習に対する「役立ち感」は1/3に留まっている。これらの傾向は前回と同じである。

・「計算が正しくできてうれしい」体験は1/2、「計算のしかたを考えるのが好き」は1/3
計算が正しくできてうれしかった体験が「何度もある」のは、各学年とも50%前後(46~58%)で、喜びの体験は横ばいの約半数に留まっている。計算のしかたを考えるのが「とても好き」は第1学年の45%が最高で、他学年は1/3程度(20~38%)(図は省略)、数や計算の既習事項を活用して計算の仕方を考えることを好まない。

3「算数の宿題」は、各学年週約4日
算数の宿題が「いつも出る」の比率は62.5%である。各学年とも宿題を週に約4日間出し、家庭学習を重視している。

4「1日の家での学習時間」は約1時間、その半分の30分は算数の学習
1日の家での学習時間は平均約1時間。第1学年約45分(図は省略)、第2・3学年約50分、第4学年約60分、第5・6学年約65分と5~10分ずつ微増している。そのうち「算数の勉強時間」は第3~6学年で平均約30分(26~29分)である。これは家での学習時間の1/2にあたる。

5言語活動にかかわる「学び合いの学習」はあまり好まない
「説明する・聞く・話し合いの勉強」が「とても好き」の比率について各項目ごとに第3~6学年の平均をみると、「説明するのがとても好き」16.8%、「友だちの考えを聞くのがとても好き」28.6%、「話し合って勉強するのがとても好き」38.5%と「学び合いの学習」は嫌いの傾向が強い(図は省略)。「まあ好き」を加えると「説明する」は51.7%であまり好きとはいえないが、「聞く」79.8%、「話し合って勉強する」79.0%と消極的な好きが多いといえる。言語を用いた論理的な思考力に課題がみえる。また、男子は女子より「説明する」ことが好きで、女子は男子より「聞く」ことが好きと逆の傾向がみられる。


【調査概要】
調査テーマ:小学生の計算力の実態と算数に対する意識
調査方法:学校通しによる計算力テスト・自記式質問紙調査
調査時期:
 第1回調査(2007年調査) 2007年2月上旬~3月上旬
 第2回調査(2013年調査) 2013年2月下旬~3月下旬
調査対象 全国の公立小学校の1年生~6年生

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