クレイア・コンサルティングは、2012年に引き続き、ビジネスパーソンを対象としたインターネットの意識調査を実施。大企業に勤務する正社員を対象に、当社が提供している従業員満足度調査の項目に沿って意欲や満足の状態を聞くとともに、今年度は特に「女性管理職」と「中高齢者」「M&A」をテーマにした質問を加えて調査を行いました。その第一弾となる「女性管理職」に関する調査の結果、「管理職になりたい」と回答した女性社員は18.7%に留まり、「管理職になりたくない」女性社員は2倍以上の49.0%に上ることが明らかになりました。

【調査の背景と問題意識】

現在の安倍政権による女性登用目標、「2020年までに指導的立場に就く女性比率を30%に(ニーマルサンマル)」を受け、日本企業では率先して役員へ女性を登用したり、女性管理職を優遇するポジティブ・アクション施策が導入され、女性関連の報道が多く見られるようになっています。そのようななか、名実ともに意味のある女性管理職の登用が行われているのか、今後十分な精査が必要になってきています。このような状況において、「管理職になりたいと考える女性はどれくらいいるのか」「女性が管理職になる上で何が障害になっているか」「管理職になりたい女性の特徴は何か」「女性を管理職として育成・登用していく上での組織的な要件は何か」といった問題意識に立脚し、企業組織の実態を洗い出すべく調査を行いました。

【調査結果サマリ】

・現在非管理職で、将来「管理職になりたい」正社員女性の割合は18.7%。
「管理職になりたくない」女性は49.0%と、「管理職になりたい」女性の倍以上。

・「管理職になりたくない」女性の半数が仕事と家庭の両立に疑問符。

・ワークライフバランスを重視する施策は女性の管理職登用に一定の効果あり。しかしそれだけでは本質的な原動力とはならず。
ワークライフバランスを促進する女性活用推進の施策は女性のほぼ半数が認識。女性の管理職志向を高めるのにも有効だが十分ではない。

・女性が「管理職になりたい」との意向を持つかどうかは、責任ある仕事を引き受ける意欲や、創造的な仕事・創発的な取り組みへの意欲の有無が大きく影響。

・「管理職になりたい」女性は、自身の能力や経験を生かして困難な問題を解決することを好み、組織への貢献を実感しながら自律的に仕事に取り組む。仕事に対して前向きなやりがいを持つ。

・管理職志向を高める組織要件は、裁量を与えながら挑戦的な取り組みを推奨すること、そして上司が部下を信頼しながら適切なマネジメントを行うこと。

【調査結果ハイライト】

■管理職への意向
管理職になりたい女性は18.7%にとどまる。

大企業でまだ管理職になっていない女性の正社員において、「将来、管理職になりたい」という設問に肯定の回答をしたのは18.7%にとどまりました。一方でその倍以上の49.0%が「管理職になりたくない」と感じており、女性管理職の登用が、まだまだ険しい道のりであることが伺えます。

■管理職を目指す上での障害
「管理職になりたくない」女性の半数以上(55.0%)が、仕事のために生活面での時間を犠牲することに抵抗感を感じており、管理職への意向を阻害するカベとなっている。

「仕事で成果をあげるためには、生活面での時間がとれないことはやむを得ない」という設問に否定的な回答をした女性は、「管理職になりたくない」女性において半数以上にのぼっています。現在のところ、女性社員にとっては、管理職になり成果を上げていくためには、「ある程度家事などの生活面において時間が取れないのはやむを得ないこと」と捉えられていることがわかります。

■女性の働きやすさを高める施策への評価
ワークライフバランスの促進など、企業側が提供する女性活用施策は、女性社員の管理職への意向を阻む壁を引き下げ、その意向を高めることに、ある程度寄与している。しかし、女性管理職の登用を強く推し進めるまでには至っていない。

出産・育児への配慮による女性の働きやすさの向上や、長時間残業の抑制といった、女性が安心して働き、仕事も生活も謳歌できるようにする、いわゆるワークライフバランスを確保しようとする企業側の諸施策は、現在多くの組織に浸透しつつあることがわかりました。また、これらの施策は管理職への意向を阻害するカベを引き下げる機能を果たしていると考えられ、その結果、これらの施策が導入されている会社ほど、女性社員の管理職への意向が高くなっています。しかし、依然として女性社員(非管理職)における管理職になりたいとの意向が全体として2割を切っているのが現実であり、環境整備により不満を解消していくだけでは、女性の管理職に対する意向を高めていくには不十分と言えます。

■管理職志向がある女性と無い女性との大きな違い
女性の管理職志向を高めるには、責任ある仕事に対する意欲と、創造性を求められる仕事への意欲をかきたてることが必要。

非管理職で「管理職になりたい」女性と「管理職になりたくない」女性との間で、肯定回答と否定回答との差が共に大きい上位3項目を見ていくと、負担が大きくても責任ある仕事をしたいかどうか、新たなアイデアを生み出すことを好むか、そして周りにそのアイデアを話すことで創発的な動きをとることが出来ているか、が鍵となることがわかります。

ワークライフバランスを意識した施策を導入することで女性活用を促す企業を多く見かけますが、それだけでなく、こうした仕事に対する動機づけを行い、女性社員のやりがいや自信などを養っていくことが、女性の管理職の意向をより高めていくための決定打となるのです。

■管理職になりたい女性の特徴(1)仕事の中身
「管理職になりたい」女性社員は、困難かつ複雑な問題の解決や、自分の能力や経験を発揮できる機会を望んでいる。

「管理職になりたい」女性社員の特徴を見ていくと、まず仕事の中身として、困難かつ複雑な問題を解決することに達成感を抱き、また自らの仕事に対して自身の能力や経験が活かせるかどうかを重要視しています。この傾向は既に管理職として働いている女性にも共通して見られた傾向です。

■管理職になりたい女性の特徴(2)意識
「管理職になりたい」女性社員は、組織に対して貢献しているという実感が強く、仕事を自律的にコントロール出来ていると感じている。そして、仕事に対して前向きなやりがいを感じている。

「管理職になりたい」女性の意識面での特徴を見ていくと、仕事をすることで組織へ貢献しているという自負を持ち、仕事を自分がコントロールしているという自信を感じ、また仕事に対する高いやりがいを感じていることが明らかになりました。これらの特徴について「管理職になりたい」女性と男性とを比較すると、男性の肯定回答はいずれも女性より低く(順に75.3%、73.0%、56.3%)、男性以上に女性は仕事に対するやりがいや自信を強く感じていることがわかります。しかし、管理職志向の女性は前述のとおり2割弱にとどまっている状況にあり、まだまだ仕事にやりがいや自信を感じている女性は少ない、ということも言えるでしょう。

■管理職志向を高める組織の条件
管理職志向を高めるための組織の要件は、個人に裁量を与え、社員のチャレンジングな取り組みを推奨すること。そして上司が部下を信頼し、適切にマネジメントを行うこと。

先に上げた「管理職になりたい」女性をさらに増やしていくための組織的な取り組みとしては、まず個人が成果を創出するために、自己裁量を持って働く環境を整備する必要があります。その上で、新しい取り組みや、積極的に難しい仕事に挑戦していくことを推奨する風土を醸成する必要があります。

そして、これらの環境整備や風土形成に大きな影響を及ぼすのが上司の存在であり、上司との密なコミュニケーションが女性社員の管理職志向を高めることに寄与していることも明らかになりました。「裁量」「チャレンジ」「上司とのコミュニケーション」は「管理職になりたい」女性だけでなく男性においても重視されており、管理職への意向を高める上で必要な組織的要件と言えます。


【調査概要】
調査期間: 2014年6月28日~29日
調査方法: インターネットによる調査
回答方法: 多肢選択式
対象者: 従業員300名以上の大企業に勤めている正社員計1,600名

その他、詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[クレイア・コンサルティング]
 マイページ TOP