スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2014) 

2014年10月01日
JTB総合研究所は、「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2014)」を実施。当研究所では、生活者のライフスタイルや価値観が消費行動や旅行に与える影響に関する調査分析を継続的に行っています。
ここ数年のモバイル環境の変化やSNS(FacebookやTwitterなどのソーシャルネットワークサービス)の広がりは目覚ましく、それに伴い人々の生活も大きく変わりました。また、SNSが日常に深く浸透していくことで、その関わり方も、少しずつ変化してきているように感じます。総務省が2014年4月に発表した「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、スマートフォンの利用率は全体で52.8%となり、過去1年間で20ポイント増加しています。本調査は、普及が広がるスマートフォンを、生活者がどのように日常、および旅行の場面で利用しているのか、昨年に引き続き調査を行い、その変化と新たな動きを捉えたものです。

【調査結果】

○ スマートフォンで最も利用する機能:LINE などのメッセージ・チャットアプリ(31.1%)がメール(28.0%)を超える

○ SNS は新たなつながりや移動のきっかけを生み出す
「昔の知り合いとつながって再び交流するようになった」21.3%
「SNS の投稿を見て行ってみたいと思った場所へ行った」15.7%

○ スマホでの旅行予約や購入が前年から増加
主に購入するのは宿泊施設や国内ツアー。支払方法はクレジット決済が主流

○ 29 才以下の男女に SNS 疲れも見られる
「SNS は見るだけで投稿はしなくなってきた」(全体 29.6%、29 才以下男性 39.3%、女性 47.6%)

【調査結果】

1. スマートフォンで最も利用する機能、LINE などのメッセージ・チャットアプリがメールを超える

スマートフォンで最も利用するものを一つだけ選んでもらったところ、1 位が LINE(31.1%)などのメッセージ・チャットアプリ、2位がメール(28.0%)、3位が電話(10.3%)でした。昨年度の調査で1位だった「メール」を「メッセージ・チャットアプリ」が抜いた形となり、メッセージ・チャットアプリが日々のコミュニケーションツールとして広く浸透してきたことがわかります。男女別では、女性のメッセージ・チャットアプリの利用率が高い傾向がみられました(女性 37.4%、男性 24.9%)。
また、利用するものをいくつでも選んでもらった結果では、メールが1位、電話が2位となりました。メールや電話も使われなくなったわけではなく、状況や相手に応じた使い分けをしているのだと考えられます。

2. SNS の利用は Facebook、Twitter の順。一人で複数の SNS を利用するのがあたりまえ
利用(アクセス)頻度は男女とも二極化傾向に


SNS を利用していると回答した 1817 名の回答者に対し、どの SNS を利用するかを聞いた結果(複数回答)は、昨年同様に Facebook の利用者が最も多く 48.0%、次いで Twitter の 34.0%となりました。男女別にみると、Facebook や Twitter は男性の利用者が多く、Instagram は比較的、女性の利用者が多いようです。
利用する SNS の個数をみると、2個以上の SNS を利用している割合は全体の 66%と半数以上となりました。中でも 29 才以下は2個以上の SNS を利用している割合が9割以上、4個以上でも5割を超えており、複数の SNS を利用することがあたりまえとなっていると考えられます。
また、アクセス頻度を昨年の調査と比較したところ、Facebook や Twitter は「毎日 10 回以上」と回答する人の割合が同程度か微増となりました。一方、「2~3日に1回かそれ以下」の回答割合も増加していました。ヘビーユーザーは引き続き高頻度で利用するも、ライトユーザーのアクセス頻度は下がっており、利用頻度の二極化傾向がみられます。

3. SNS を利用していて経験したこと:「昔の知り合いとつながって再び交流するようになった」21.3%
「SNS の投稿を見て行ってみたいと思った場所へ行った」15.7%。
一方 SNS 疲れの傾向もみられる:「SNS は見るだけで投稿はしなくなってきた」29.6%
「見ている人を意識してネガティブな情報は出さないようにした」18.3%


SNS で経験したことについて聞いた回答結果では、「昔の知り合いとつながって再び交流するようになった(21.3%)」「SNS の投稿を見て行ってみたいと思った場所へ行った(15.7%)」「SNS で知り合った人に会いに出かけた(7.2%)」など、SNS が新たなつながりや移動のきっかけとなっていることがわかりました。一方、「SNS 疲れ」といった言葉も聞かれるように、「SNS は見るだけで投稿はしなくなってきた(29.6%)」「見ている人を意識してネガティブな情報は出さないようにした(18.3%)」「あまりいいと思わなくても、投稿者に気を使っていいね、などの評価をつけた(12.3%)」などの項目も上位にあがっています。

性年代別にみると、29 才以下と 30 代の男女で「昔の知り合いと SNS でつながって、再び交流するようになった」という割合が高く、若い世代の交流を促進していることがわかります。特に 29 才以下の女性は「SNSの投稿を見て、行ってみたいと思った場所に出かけた(34.5%)」「SNS で知った情報で、いいと思ったものを購入した(19.9%)」などの項目も全体と比較して 10 ポイント以上高く、SNS の情報がきっかけとなった移動や消費をしていました。同時に 29 才以下女性は「SNS は見るだけで投稿しなくなってきた(47.6%)」「見ている人を意識して、ネガティブな情報はあまり出さないようにした(40.3%)」などの項目も高く、良くも悪くも、SNS の影響を大きく受けていると言えそうです。

4. 旅行を思い立つ「きっかけ」や「旅行先の決定に影響を与えること」は「友人や家族との会話」、旅行先について詳しい情報を得るのはポータルサイトや旅行会社、宿泊施設、観光協会などのホームページ

旅行を思い立つきっかけや、旅行先の決定に大きな影響を与えているのは、「友人や家族との会話(きっかけ 62.0%、旅行先の決定 54.1%)」でした。旅行先を決めるのに影響を与えたことの中では、テレビ(12.1%)、旅行会社や旅行情報サイト(11.5%)、旅行会社のパンフレット(10.7%)なども比較的高くなっています。旅行先が決まったあと、詳しい情報を調べるところについては、友人や家族との会話が 31.8%と、きっかけや旅行先の決定時より減少し、変わってインターネットの割合が上昇しました。インターネットの中では、ポータルサイトでの検索(21.4%)、旅行会社や旅行情報サイト(18.2%)、宿泊施設のホームページ(16.2%)、観光協会などのサイト(14.2%)などが上位にあがっています。

5. スマホでの旅行予約や購入割合が増加。よく購入するのは宿泊施設や国内ツアー。
支払方法はクレジット決済が主流


スマートフォンを利用した旅行の予約や購入についてみてみると、昨年の調査時と比較して 19.4%から28.3%と、約 9 ポイント経験率が上昇しており、徐々にスマートフォンでの予約や購入が浸透してきていることがわかりました。
スマートフォンを利用して予約や購入をした旅行商品は、1位「宿泊施設(51.2%)」、2位「国内ツアー(32.4%)」、3位「レストラン(25.9%)」でした。
支払方法としては、「レストラン」を除き、どの商品でも「クレジットカード決済」が最も多い結果となりました。インターネットにおいては、選択できる支払方法が限られる場合もあり、一概に利用者が利用したいと思っている支払方法の割合が高くなるとは言えません。例えば、「レストラン」「宿泊施設」「レンタカー」など現地払いが可能な商品では、現地払いを選択する割合も高い傾向がみられます。とはいえ、購入率が上がっていることを考えると、徐々にスマートフォン上で決済を行うことへの抵抗感が薄れてきているのかもしれません。

6. 旅行中のスマートフォン利用に「特に不満はない」割合が増加。インフラ・ハード面での改善がみられる
不満の中では、情報の古さや少なさなどコンテンツ面が微増


旅行中のスマートフォン利用で「不満だったこと」という質問に対する回答結果を、昨年と今年の調査で比較してみると、「特に不満はない」と回答した人の割合が 11.9%から 21.4%に増加しました。また、「バッテリーがすぐなくなる」「電波がつながらない場所がある」「Wi-Fi がつながる場所が少ない」など、インフラやハード面に関する不満についてはいずれも割合が減少し、改善の様子がうかがえます。一方、「現地の情報が少ない」や「情報を見つけても更新時期が古いものが多い」など、コンテンツの面ではやや不満が増加傾向となりました。

7. 旅行の情報発信は画像が主流。コメントのみの投稿は少ない
Facebook や Twitter は「その場」や「旅行中少し時間ができた時」、ブログは「家に帰ってからゆっくり」発信


旅行の体験を発信した経験があるかどうかを聞いた質問では、「発信したことがある」割合が 41%で、昨年の調査時の 42%とほぼ同じ結果となり、この1年で旅行の発信経験に大きな変化は見られませんでした。
次に、発信の内容について具体的に質問してみたところ、旅行の体験を発信した経験のある人のうち、「画像の発信をした」と回答した割合は 92.1%と最も高くなりました。性別にみると、動画の発信やチェックインは男性で、比較的割合が高くなっています。
また、いつ発信するのか、発信のタイミングについては「自宅に戻ってからゆっくり(45.3%)」「旅行中、少し時間ができたとき(ホテルや旅館に戻ってから)(44.9%)」「体験したその場で(33.0%)」がトップ3となりました。特に、男性では「体験したその場で」が 42.9%と、全体より 10 ポイント近く割合が高くなっています。
発信先別にみると、Facebook や Twitter は旅の途中や体験したその場での発信が多く、ブログは家に帰ってからゆっくりという人が多くなりました。2章で触れた通り、男性は Facebook や Twitter の利用率が女性より高いため、より「体験したその場で」発信する割合が高いのだと考えられます。
また、Facebook や Twitter などの SNS からの発信は即時性が高く、体験をしてから情報が発信されるまでの時間差が少ない、ある意味で「鮮度の高い」情報と言えるのではないでしょうか。

8. フルタイム就業者は旅行中も仕事とプライベートの境界線があいまい。30 代~60 代の 30%以上はプライベートでの旅行先でも仕事のメールチェック、29 才以下の 8.5%は資料作りなど実際の作業経験あり

プライベートで出かけた旅行先で、仕事をした経験があるかどうかについての質問では、フルタイムで仕事をしている 30 代~60 代の 30%以上が「仕事のメールのチェックをした」、30 代と 60 代の 20%以上が「電話連絡をした」、29 才以下の 8.5%は「資料づくりなどの作業をした」、と回答しました。インフラが向上し、常にインターネットにつながれる状態であることは、オンとオフの境目をあいまいにしているとも言えそうです。第3章で触れた「SNS を利用していて経験したこと」の中で、「旅行などで、あえてSNS がつながらない場所へ出かけた」と回答した 45 名の内訳をみると、フルタイム就業者の割合が 55.6%と全体より 10 ポイント高くなりました。仕事は気にはなるけれど、たまには完全に「オフ」の状態を作りたいという意識もありそうです。


【調査概要】
○調査方法:インターネットアンケート調査
○調査対象者:
 (スクリーニング調査)首都圏、名古屋圏、大阪圏に住む18歳から69歳までの男女 30,000名
 (本調査)スクリーニング調査回答者の中で、以下に該当する 2,060名
 ・スマートフォンを利用している
 ・過去1年以内に1回以上の旅行(日帰りも含める)をしたことがある
○期間:2014年9月6日~9月11日

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