タワーズワトソン昇給率調査 

2015年10月13日
タワーズワトソンが実施した昇給率調査によると、アジア太平洋地域のほとんどの市場で、平均昇給予算が2015年に比べ上昇するにもかかわらず、来年の従業員の昇給率はインフレ圧力の高まりにより実質ベースで低下する見込みであることが分かった。

2016年のアジア太平洋地域の給与予算は6.8%上昇する見込みで、2015年の6.6%と比べると若干高い。しかしインフレを考慮すると、今年の平均上昇率は4.1%であるのに対し来年のそれは3.4%となり、同地域の22の調査対象市場のうち17の市場で、来年の従業員の給与は低下することになる。2016年の平均インフレ率は、2015年の2.5%(※)から3.4%に上昇すると予測されている。

本調査は、工場などの現場労働者から役員レベルまで様々な階層を対象に実施したもので、企業が幅広い産業と市場での給与動向を理解し、自社従業員の年間給与を予測するための指針を提供している。調査対象となる産業には、自動車、化学、金融サービス、エネルギー・天然資源、メディア、プロフェッショナルサービス、小売、製薬・ヘルスサイエンス、日用消費財といった数々の主要産業を網羅している。

■インフレと連動しない昇給
東アジアと東南アジアで2016年の平均昇給率が特に高いのは、インドネシア(9.4%)、ベトナム(10.4%)、中国本土(8%)で、いずれも昨年より高い数値を示している。しかしインフレを考慮に入れた実質ベースでは、昇給率は、それぞれ3.9%、5.6%、5.8%に低下する。平均昇給率が最も低いのは日本で、名目ベースで2.4%、実質ベースで0.9%と予測されている。

著しい対照を見せているのは香港とシンガポールだ。香港における長引くインフレ圧力が影響しているためで、来年のシンガポールのインフレ率(1.5%)は香港のそれ(2.7%)と比較すると非常に低く、それが実質ベースの給与に反映されている。平均給与予算で比較すると、シンガポールが4.4%、香港が4.5%とほとんど変わらないと見込まれている。

■景気の見通しについて楽観視していない雇用者
アジア太平洋地域の各市場の昇給率は上昇するという予想だが、実は第3四半期の雇用者による同地域の景気見通しは、第1四半期の頃と比べると著しく悪化している。見通しは明るいと答えた雇用者は、57%から33%に縮小した。

また、本調査では、業績の高い従業員の昇給率が特に高いという点では、第3四半期も第1四半期も共通していることが明らかになった。各層の従業員を比較してみると、業績の高い従業員の平均昇給率は7.7%で、「標準上」「標準」の従業員の6.9%、6.1%より高い。同様の傾向は、調査対象産業の中の3つの中核産業-金融サービス、ハイテク、ヘルスケア・製薬のいずれにおいても見られた。

■ハイテク業界の昇給率が最も高い
ハイテク業界の昇給率は、本調査の対象となった産業の中で最も高くなる見込みだ。この業界の2016年の平均昇給率は、2015年と同じ6.5%。特に昇給率が高い市場は、インフレ考慮前ではあるが、パキスタン(12%)、インド(10.7%)、ベトナム(10.6%)となっている。

アジア太平洋地域の2大国際ビジネス拠点、香港とシンガポールでは、ハイテク業界の昇給率はそれぞれ4.5%、4.3%と、2015年の4.4%、4%を上回るものと予想されている。中国本土のハイテク業界の昇給率は、2015年の7.7%に対し、来年は8%上昇するものと見込まれている。

アジア太平洋地域における2016年の製薬業界の昇給率は、今年の5.5%より高い5.8%と予想されている。しかし金融サービスでは、2016年の昇給率は6%と製薬業界より高いものの、2015年の6.1%と比べると若干数字を落としている。

(※) マクロ経済データの出所:エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)-2015年8月時点の数字


本調査について:
2015年昇給率調査結果レポート アジア太平洋地域版(2015 Asia Pacific Salary Budget Planning Report)は、タワーズワトソンのデータ・サービス部門(TWDS)が年2回実施している調査です。今回の調査は、各企業が2016年の報酬計画を策定する時期に合わせて実施したもので、幅広い産業と、工場などの現場労働者から役員レベルまで様々な階層の従業員の給与配分や動向と給与審査について調査しました。

今回の調査は2015年7月に実施され、アジア太平洋地域の22ヵ国・地域の企業から約2,000件の回答が寄せられました。本調査および他の地域の最新の昇給率調査結果レポート アジア太平洋地域版はオンラインでご購入いただけます。アジア太平洋地域版の他、グローバル版、EMEA版もございます。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[タワーズワトソン]
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