第3回上場企業の課長に関する実態調査(課長対象) 

2016年03月08日
産業能率大学は、従業員数100人以上の上場企業に勤務し部下を1人以上持つ課長を対象に、職場の状況や課長自身の意識などに関するアンケートを実施し「上場企業の課長に関する実態調査」としてまとめました。

このテーマに関する調査は、第1回(2010年9月実施)、第2回(2012年12月実施)に続き3回目。調査は2015年11月13日から17日までの5日間、インターネット会社を通じてインターネットリサーチで実施し651人(男性633人、女性18人)から回答を得ました。

【調査結果概要】

プレーヤーとしての仕事の割合 「半分以下」増加

職場のマネジメントを担う課長に、プレーヤーとしての仕事の割合を尋ねた。「半分以下」とする回答は54.8%で、前回調査に比べ3.8ポイント増加した。
プレーヤーとしての仕事割合は減少傾向にあるものの、「プレーヤーとしての仕事はない」は前回調査同様に1%を下回り、99.1%がプレーヤー業務を兼任している。

マネジメント環境が変化

3年前と比較した職場の変化について、「外国人社員が増加」(前回比4.3㌽増)、「非正規社員が増加」(前回比3.8㌽増)などが前回調査から増加。職場の部下についても、「介護が必要な家族を持つ部下がいる」(前回比2.7ポイント増)、「外国人の部下がいる」(前回比2.3ポイント増)などが増加した。介護や育児への配慮が必要な社員(部下)や、外国人社員(部下)が増加しており管理する職場の変化が読みとれる。

課長の悩み「部下がなかなか育たない」

現在の悩みについて、選択肢の中から当てはまるものを複数回答で尋ねた。最も多かった回答が、「部下がなかなか育たない」(42.7%/前回比0.9ポイント増)。次いで、「業務量が多すぎる」(35.8%)、「部下の人事評価が難しい」(27.3%)となった。課長の悩みの上位5項目のうち、3項目が部下に関することであった。

「プレーヤーの立場に戻りたい」過去最高

最終的になりたい立場を尋ねたところ、「部長クラスのポジションに就く」が最も多く35.5%、次いで「現在のポジション(課長)を維持する」35.2%となった。「プレーヤーの立場に戻る」とする回答は、年々増加しており、14.9%(前回比1.4㌽増)で過去最高になった。

【調査結果】

1.課長を取り巻く状況

・変化するマネジメント環境 (外国人、非正規、家庭の事情で制約がある…などが増加)
・課長の悩み「部下がなかなか育たない」


1-1.管理する職場の状況
3 年前と比較した職場の状況を複数回答で尋ねたところ(P.12/問 1)、「業務量が増加」(56.4%)が最も多く、次いで「成果に対するプレッシャーが強まっている」(34.3%)、「コンプライアンスのための制約が厳しくなっている」(33.5%)となった。業種別クロス集計で見ると、製造業、卸売・小売業で「業務量の増加」が 6 割を超えており、他の業種に比べ特に高くなっている。前回調査と比較すると「業務量」や「成果に対するプレッシャーの強まり」など全体的に緩和傾向にあるが、「外国人社員が増加」(前回比 4.3 ㌽増)、「非正規社員が増加」(前回比 3.8 ㌽増)、「家庭の事情で、労働時間・場所に制約のある社員が増加」(前回比 2.1 ㌽増)、「メンタル不調を訴える社員が増加」(前回比 1.4 ㌽増)など、職場のダイバーシティやワーク・ライフ・バランスに関連する項目が上昇した。

1-2.プレーヤーとしての仕事の割合
職場のマネジメントを担う課長に対し、現在の仕事におけるプレーヤーとしての仕事の割合を、0 から100%までの 10%刻みで尋ねた(P.13/問 2)。「0%」(プレーヤーとしての仕事はない)と回答したのは全体の0.9%にとどまり、99.1%の課長がプレーヤー業務を兼務している。「プレーヤーとしての仕事が半分以下」(プレーヤーとしての仕事の割合 1~50%)とする回答は 54.8%で、前回調査より 3.8 ㌽増加した。

1-3.マネジメント業務への支障
課長の 99.1%がプレーヤーとしての仕事を担っているが、プレーヤーとしての業務がマネジメント業務に何らかの支障があるかを尋ねた(P.14/問 3)。“支障がある”(58.3%)が(「とても支障がある」(13.2%)+「どちらかと言えば支障がある」(45.1%)) 、“支障はない”(41.7%)を(「まったく支障はない」(12.4%)+「どちらかと言えば支障はない」(29.3%)) を上回った。

1-4.課長の悩み
 課長としての悩みについて複数回答で尋ねた(P.15/問 4)ところ、「部下がなかなか育たない」(42.7%)が、昨年に続きトップであった。次いで「業務量が多すぎる」(35.8%)、「部下の人事評価が難しい」(27.3%)となった。前回調査と比較すると「部下の人事評価が難しい」(前回比 5.6 ㌽増)、「部下が自分の指示通りに動かない」(前回比 2.6 ㌽増)、「部下がなかなか育たない」(前回比 0.9 ㌽増)など、上司と部下のコミュニケーションや関係性についての項目が上昇している。

2.部下について

・介護や育児への配慮が必要な部下、外国人部下が増加
・部下とのコミュニケーションに有効な施策 「飲み会」


2-1.職場の部下について
 管理する職場の部下について尋ねた(P.16/問 5)。半数近くが「自分よりも年上の部下がいる」(48.8%)と回答し、前回調査比 0.8 ㌽増加。これに「自分よりも職場の在籍経験が長い部下がいる」(33.3%)、「自分よりも仕事に関する専門性が高い部下がいる」(29.6%)が続いた。前回調査と比較すると「介護が必要な家族を持つ部下がいる」(前回比 2.7 ㌽増)、「外国人の部下がいる」(前回比 2.3 ㌽増)、「育児休業中の部下がいる」(前回比 0.6 ㌽増)など、ワーク・ライフ・バランスへの配慮が必要な社員や、外国人社員が増加しており、管理する職場の変化が読み取れる。
また、部下に不足していると感じる知識・能力・態度について尋ねたところ(P.17/問 6)、「新しいアイデアを生み出す力」(30.4%)、「課題を明確にする力」(29.5%)、「自分の考えを論理的に伝える力」(24.1%)となった。

2-2.部下育成における役割認識について
 部下育成に関して(「部下が担当する業務の指導」「部下の成長を考えた仕事の割り振り」「部下のキャリア形成支援」「部下の能力開発の機会提供」「部下のジョブローテーション」)、誰が[部長(上司)、課長(自分)、人材開発部門、その他]主な役割を担うべきかの認識を尋ねた(P.18/問 7)。全ての項目において「課長(自分)が担うべき」が最も高い結果であったが、「部下の能力開発の機会提供」については「人材開発部門が担うべき」(35.2%)、「部下のジョブローテーション」については「部長(上司)が担うべき」(31.0%)がそれぞれ3 割を超えた。

2-3.部下とのコミュニケーションに有効だと思う施策について
部下とのコミュニケーションに有効だと思う施策について尋ねたところ(P.19/問 8)、「飲み会」(52.7%)が最も多く、次いで「朝礼」(30.1%)となった。一方「有効だと思う施策はない」とする回答も 22.6%となった。

3.海外志向

・語学力(英語) 「限られた場面での短いフレーズの会話ができる」4割
・海外勤務経験者の85.9%が“機会があれば海外で働きたい”


3-1.語学力(英語)、赴任経験・期間
語学力(英語)について(P.20/問 9)、ビジネスで不自由なく会話できるレベルは 1 割に満たず(「交渉・折衝も含めてビジネスで不自由しない程度の会話ができる」(6.8%)+「ネイティブと変わらないレベルの会話ができる」(1.4%))、「限られた場面での短いフレーズの会話ができる」が 40.4%で最多。海外勤務経験は(P.21/問 10)、「ある」が 22.9%、「ない」が 77.1%であった。海外勤務経験者に海外勤務の期間を尋ねたところ(P.22/問 11)、「1 年未満」(26.2%)、「1 年以上 2 年未満」(23.5%)、「2 年以上 3 年未満」(18.1%)、「3 年以上 4 年未満」(10.1%)、「4 年 以上 5 年未満」(6.0%)、「5 年以上」(16.1%)であった。

3-2.海外志向
「海外で働きたいと思うか」という設問では(P.23/問 12)、“働きたいとは思わない”が 50.2%、“働きたい”が 49.8%(「どんな国・地域でも働きたい」(10.3%)+「国・地域によっては働きたい」(39.5%))となり、意見が割れた。
ただ語学レベル・海外勤務経験の有無で海外志向に違いが見られ、語学力別で見てみると、「まったく会話ができない」層は「海外で働きたくない」がおよそ 8 割を占めたが、語学力のレベルが上がるにつれ「海外で働きたい」とする回答が増加する傾向にあった。また、海外勤務経験の有無では、「海外勤務経験あり」は、85.9%が海外勤務を希望したのに対し、「海外勤務経験なし」では 39.1%にとどまっている。

・海外で働きたい理由 「日本ではできない経験を積みたい」
 海外で働きたくない理由 「自分の語学力に自身がないから」


3-3.海外で働きたい層 (地域・理由・不安)
「どんな国・地域でも働きたい」、「国・地域によっては働きたい」とした回答者に働いてみたい地域を複数回答で尋ねたところ(P.24/問 13)、上位 3 項目は「北米」(61.1%)、「欧米」(58.8%)、「アジア」(51.0%)。“海外で働きたい”理由は (P.25/問 14)、「日本ではできない経験を積みたいから」(67.0%)、「自分自身の視野を広げたいから」(61.1%)がそれぞれ 6 割を超えた。海外勤務で不安に思うことは(P.26/問 15)、「現地の治安」(72.8%)が最も多く、「言語の不自由さ」(53.1%)が続いた。

3-4.海外で働きたくない層(理由)
海外で働きたいとは思わない理由は(P.27/問 16)、「自分の語学力に自信がないから」(63.0%)、「生活面が不安だから」(47.7%)、「海外に魅力を感じないから」(34.3%)となった。

3-5.外国人への抵抗感外国人[経営トップ・上司・部下・同僚・取引先]への抵抗感について(P.28/問 17)、ポジションによる差異が顕著に現れた。経営トップ・上司については“抵抗を感じる”が過半数となったが(「抵抗を感じる」+「どちらかと言えば抵抗を感じる」)、部下・同僚・取引先では“抵抗を感じない”(「抵抗を感じない」+「どちらかと言えば抵抗を感じない」)が半数を上回った。

4.課長のこれから

・不足を感じる能力=「語学力」/今後強化したい能力=「戦略的にものごとを考える力」
・最終的になりたい立場 「プレーヤーの立場に戻る」過去最高


4-1.不足を感じる能力 /今後強化したい能力
不足を感じる能力は(P.29/問 18)、「語学力」(51.8%)、「戦略的にものごとを考える力」(35.8%)、「部下を育成する力」(25.2%)で続いた。一方、今後強化したいと考えている能力は(P.31/問 19)、「戦略的にものごとを考える力」(37.2%)、「語学力」(35.3%)、「職場の構想を描く力」(24.4%)であった。不足を感じる能力と今後強化したい能力を比較してみると(P.33)、語学力や異文化対応力といったグローバルスキルに関して不足を感じているものの、強化したいとする割合とは大きな開きがあり、「戦略的にものごとを考える力」や「部下を育成する力」といった“直近の”課題に対処したいとする意向が伺える。

4-2.最終的になりたい立場
 第1回の調査から継続して尋ねている「最終的になりたい立場」について(P.34/問 20)、「部長クラスのポジションに就く」(35.5%)、「現在のポジション(課長)を維持する」(35.2%)、「プレーヤーの立場に戻る」(14.9%)、「役員クラスのポジションに就く」(11.2%)、「経営者(社長)になる」(3.2%)となった。過去の結果と比較すると、「プレーヤーの立場に戻る」とする回答が増加しており、(第 1 回調査=9.6%/第 2 回調査=13.5%/今回調査=14.9%)で過去最高となった。

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