『終末期』についてアンケート調査(透析患者対象)
2017年01月05日
ペイシェントフッドは、透析患者を対象に『終末期』についてアンケート調査を行いました。
「終末期」という言葉に実は公的で明確な定義はなく、一般的には「病気が治る可能性がなく、数週間~6ヶ月程度のうちに死を迎えるだろうと予期される状態になった時期」をいいます。
透析患者の場合、移植をしない限り腎臓機能が回復することはなく、週3回、1回4~5時間程度の人工透析は生命維持のために必要不可欠なことから、ここでは、認知症や合併症などで判断能力が欠かれ、治療に対する意思表示が出来なくなった状態のことを「終末期」と捉えます。
【調査結果】
(1)自分が将来、認知症や合併症によって治療に対する意思表示が出来なくなることを考えたことはありますか(n=93)
よく考える 18.3%
時々考えることがある 62.4%
あまり考えない 16.1%
まったく考えない 3.2%
「よく考える」「時々考えることがある」が80.7%、考える頻度は低いものの「あまり考えない」を含めると、
実に96.8%もの患者が、将来自分が意思表示出来なくなる可能性を考えている結果となりました。
2015年1月の厚労省の発表では、日本の認知症高齢者数は2012年の時点で約462万人。10年後の2025年には推計約700万人となり、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症を発症する見込みです。
日本透析医学会の「わが国の慢性透析療法の現況 (2014年12月末)」によると、国内の透析患者数は約32万人、うち65歳以上の患者数は63.7%。30年前の1984年の平均年齢は49歳でしたが、2014年には67歳と年々高齢化が進んでおり、透析患者にとって、透析歴が長くなると発症リスクが高まる合併症や、加齢が最大の危険因子である認知症は、決して他人事ではないという結果の現れではないでしょうか。
また「意思表示が出来なくなることを想像した後に考えることは何か」との問いに、「判断能力のある今のうちに自分でしっかり考えておこう」や「家族や主治医に相談してみよう」など、73.1%が積極的に向き合おうとする回答でした。
(2)終末期について考え、何か行動を起こしたことはありますか 【複数選択可】 (n=93)
事前指示書(※1)へ記入した 6.5%
セミナーや講演会に参加した 4.3%
主治医に相談した 5.4%
医療スタッフ(主治医以外)に相談した 8.6%
患者仲間や友人に相談した 7.5%
家族と話し合った 38.7%
その他 3.2%
何もしていない 44.1%
漠然とでも「終末期」について考えることがあっても、その後何かしらの行動に移すことはほとんどなく、「何もしない」が最多で44.1%、次いで「家族と話し合った」が38.7%でしたが、常日頃から接している医療従事者へ相談したと回答したのは、わずか14.0%でした。
(3)どんな環境や状態であれば、終末期について考えてみようと思いますか
病状や年齢、そして認知症への危機感などの自身の状態が、終末期について考える大きなキッカケとなるようです。「どんな環境や状態でも考えたくない」と回答した方は0%。また、このアンケートを機に終末期について「考えようと思った」「やや思った」と回答した方は93.5%にもおよび、タイミングは違えど、透析患者はどこかで自分の終末期に向き合うことの必要性を感じていることが分かります。
日本は様々な医療問題を抱えており、その課題解決を目指し、平成15年に開催された第26回日本医学会総会にて、これまでの『おまかせ医療』から患者が選択できる医療 =『患者中心の医療(※2)』実現のための宣言が発表されました。10年以上経過した今「インフォームドコンセント」が浸透し、「セカンドオピニオン」などは普及してきたものの、患者が選択できる医療の究極ともいえる『終末期医療』に関してはどうでしょうか。
本アンケート内で「あなたの周りには終末期について考える環境はありますか」との問いに、7割以上の方が「考える環境は特にない」との回答でした。
終末期医療において重要な役割を担う「事前指示書」は法的効力がないことに加え、終末期患者に対する透析治療の見合わせ行為など、その措置によっては医療機関側の責任を追及される可能性があるため、及び腰になっているのではないでしょうか。
しかし、そんな状況下でも15年も前から「尊厳生(そんげんい)」という考え方を提唱している医療者がいます。「じんぞう病治療研究会」の代表世話人で日大板橋病院准教授の岡田一義さんは、死の迎え方の選択の尊厳死と違い、「尊厳生」は最期の生き方の選択であり、終末期医療の中でも最期まで尊厳を持って「生きる」ことの大切さを唱えています。
「死に方」を決めておくのではなく、「その時までいかに自分らしい生き方をするか」を患者に考えさせると共に、医療者も「死」をみてその責任に怯えることなく、「生」をみて患者をサポートする仕組みが確立できた時、本当の意味での患者中心の医療が成立するのではないでしょうか。
※1 『事前指示書』とは、将来、自らが判断能力を失い、意思表示が出来なくなった時のために、 自分に行われる医療行為に対する要望を予め明記しておく書面
※2 『患者中心の医療』とは、「患者さんの治療方法を最終的に決めるのは患者さん自身である」という考え方に基づいて行われる医療
【調査概要】
調査方法:WEBアンケート
調査エリア:全国
調査対象:透析患者、男女年齢不問
調査期間:2016年12月2日~12月9日
有効回答数:93名
詳しいリサーチ内容はネタ元へ
「終末期」という言葉に実は公的で明確な定義はなく、一般的には「病気が治る可能性がなく、数週間~6ヶ月程度のうちに死を迎えるだろうと予期される状態になった時期」をいいます。
透析患者の場合、移植をしない限り腎臓機能が回復することはなく、週3回、1回4~5時間程度の人工透析は生命維持のために必要不可欠なことから、ここでは、認知症や合併症などで判断能力が欠かれ、治療に対する意思表示が出来なくなった状態のことを「終末期」と捉えます。
【調査結果】
(1)自分が将来、認知症や合併症によって治療に対する意思表示が出来なくなることを考えたことはありますか(n=93)
よく考える 18.3%
時々考えることがある 62.4%
あまり考えない 16.1%
まったく考えない 3.2%
「よく考える」「時々考えることがある」が80.7%、考える頻度は低いものの「あまり考えない」を含めると、
実に96.8%もの患者が、将来自分が意思表示出来なくなる可能性を考えている結果となりました。
2015年1月の厚労省の発表では、日本の認知症高齢者数は2012年の時点で約462万人。10年後の2025年には推計約700万人となり、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症を発症する見込みです。
日本透析医学会の「わが国の慢性透析療法の現況 (2014年12月末)」によると、国内の透析患者数は約32万人、うち65歳以上の患者数は63.7%。30年前の1984年の平均年齢は49歳でしたが、2014年には67歳と年々高齢化が進んでおり、透析患者にとって、透析歴が長くなると発症リスクが高まる合併症や、加齢が最大の危険因子である認知症は、決して他人事ではないという結果の現れではないでしょうか。
また「意思表示が出来なくなることを想像した後に考えることは何か」との問いに、「判断能力のある今のうちに自分でしっかり考えておこう」や「家族や主治医に相談してみよう」など、73.1%が積極的に向き合おうとする回答でした。
(2)終末期について考え、何か行動を起こしたことはありますか 【複数選択可】 (n=93)
事前指示書(※1)へ記入した 6.5%
セミナーや講演会に参加した 4.3%
主治医に相談した 5.4%
医療スタッフ(主治医以外)に相談した 8.6%
患者仲間や友人に相談した 7.5%
家族と話し合った 38.7%
その他 3.2%
何もしていない 44.1%
漠然とでも「終末期」について考えることがあっても、その後何かしらの行動に移すことはほとんどなく、「何もしない」が最多で44.1%、次いで「家族と話し合った」が38.7%でしたが、常日頃から接している医療従事者へ相談したと回答したのは、わずか14.0%でした。
(3)どんな環境や状態であれば、終末期について考えてみようと思いますか
病状や年齢、そして認知症への危機感などの自身の状態が、終末期について考える大きなキッカケとなるようです。「どんな環境や状態でも考えたくない」と回答した方は0%。また、このアンケートを機に終末期について「考えようと思った」「やや思った」と回答した方は93.5%にもおよび、タイミングは違えど、透析患者はどこかで自分の終末期に向き合うことの必要性を感じていることが分かります。
日本は様々な医療問題を抱えており、その課題解決を目指し、平成15年に開催された第26回日本医学会総会にて、これまでの『おまかせ医療』から患者が選択できる医療 =『患者中心の医療(※2)』実現のための宣言が発表されました。10年以上経過した今「インフォームドコンセント」が浸透し、「セカンドオピニオン」などは普及してきたものの、患者が選択できる医療の究極ともいえる『終末期医療』に関してはどうでしょうか。
本アンケート内で「あなたの周りには終末期について考える環境はありますか」との問いに、7割以上の方が「考える環境は特にない」との回答でした。
終末期医療において重要な役割を担う「事前指示書」は法的効力がないことに加え、終末期患者に対する透析治療の見合わせ行為など、その措置によっては医療機関側の責任を追及される可能性があるため、及び腰になっているのではないでしょうか。
しかし、そんな状況下でも15年も前から「尊厳生(そんげんい)」という考え方を提唱している医療者がいます。「じんぞう病治療研究会」の代表世話人で日大板橋病院准教授の岡田一義さんは、死の迎え方の選択の尊厳死と違い、「尊厳生」は最期の生き方の選択であり、終末期医療の中でも最期まで尊厳を持って「生きる」ことの大切さを唱えています。
「死に方」を決めておくのではなく、「その時までいかに自分らしい生き方をするか」を患者に考えさせると共に、医療者も「死」をみてその責任に怯えることなく、「生」をみて患者をサポートする仕組みが確立できた時、本当の意味での患者中心の医療が成立するのではないでしょうか。
※1 『事前指示書』とは、将来、自らが判断能力を失い、意思表示が出来なくなった時のために、 自分に行われる医療行為に対する要望を予め明記しておく書面
※2 『患者中心の医療』とは、「患者さんの治療方法を最終的に決めるのは患者さん自身である」という考え方に基づいて行われる医療
【調査概要】
調査方法:WEBアンケート
調査エリア:全国
調査対象:透析患者、男女年齢不問
調査期間:2016年12月2日~12月9日
有効回答数:93名
詳しいリサーチ内容はネタ元へ