注意欠如・多動症 (ADHD)の子どもを持つ母親と小学校教師に対する意識・実態調査 

2017年02月14日
塩野義製薬とシャイアー・ジャパンは、ADHD の子どもを持つ母親(283 人)と小学校教師(103 人)に対して意識・実態に関する調査を実施致しました。

注意欠如・多動症(ADHD)は、「不注意」「多動性」「衝動性」の 3 種の主症状から特徴づけら れている発達障害の一つです。海外の学術論文では、18 歳以下でのADHD 有病率は約5%*1と報告 されています。また、ADHD の子どもへの支援は、個々の育った環境、親子関係のみならず、学校 をはじめとする保育・教育の段階からの家庭外環境を含めた全体像を考慮しながら実施することが 重要とされています。特に子どもの特性を十分に理解した上で、それぞれに適した家庭や教室環境作りを行うことが支援につながるといわれています。

本調査はADHDの子どもを持つ母親の受診行動の現状や課題、学校内・外における支援の課題を明らかにする目的で実施致しました。主な調査結果は下記の通りです。

【調査結果のポイント】

1. ADHD 児の母親の受診行動
医療機関受診後、子どもがADHDと診断されることで、4割の母親が「子どもの将来が心配で落ち込んだ」と回答する一方、 6割の母親は「症状の原因がはっきりしてほっとした」と回答。 母親の半数以上は医療機関受診前に、保健・福祉の相談機関に相談していることが明らかになった。

・子どもの行動の原因が病気かもしれないと感じたきっかけが「周りからの指摘だった」と回答した母親は51.2%であった。(図1参照)

・「周りからの指摘だった」と回答した母親の中で、「保育園・幼稚園の担任」による指摘と回答したのは33.8%、「小学校の担任」による指摘と回答したのは27.6%であった。(図2参照)

・子どもが抱えている困難や行動の原因について母親が最初に思ったことは、「何らかの発達障害」 (34.3%)、「子どもの性格」(31.8%)、「しつけや育て方」(23.0%)などであった。(図 3参照)

・医療機関受診前の母親の気持ちは、「子どもの将来に影響の大きい病気だったらどうしようと不安」(37.8%)、「どこに相談すればよいか分からなかった」(32.2%)などであった。(図4参照)

・医療機関受診後、子どもがADHDと診断された際の気持ちについて、母親の 59.7%は「症状の原因がはっきりしてほっとした」と回答。一方で 41.7%は「子どもの将来が心配で落ち込んだ」 と回答。(図5参照) ・ 医療機関受診後、子どもがADHDであることが分かった際の気持ちについて、母親の68.5%は「医療機関に行って良かった」と回答。(図6参照)

・医療機関受診前に保健・福祉の相談機関(市役所福祉課、家庭児童相談所、発達支援センターなど)に相談していた母親は 75.6%。(図 7参照)


2. 小学校でのADHD が疑われる児童への対応における課題
多くの小学校教師はADHDが疑われる児童を担当した経験があり、学校内での連携した対応は実施していたが、地域の保健・福祉・医療機関などの外部との連携はあまり行われていなかった。またADHDが疑われる児童への指導や対応に自信があると回答した小学校教師は 4割であった。

・96.1%の小学校教師は、現在担当中も含めADHDが疑われる児童を担当した経験を持っていた。 (図8参照)

・ADHDが疑われる児童に対して、「校内委員会*2への報告・相談」、「特別支援教育コーディネー ター*3への報告・相談」はそれぞれ74.7%、70.7%で実施されており、学校内での連携した対応は実施されていた。一方、「地域の保健・福祉・医療関係者への相談」は15.2%と外部との連携はあまり行われていなかった。(図 9参照)

・「ADHDが疑われる児童」やその「保護者」に対し十分な取り組みを行えたと回答した割合は、それぞれ64.7%、60.6%であった。学校内の連携において十分な取り組みを行えたと回答した割合は、「教員同士の連携」(81.8%)、「校長・教頭との連携」(74.7%)、「養護教諭との連携」( 73.8%)、「特別支援学級担任との連携」( 70.7%)、「特別支援教育コーディネーター*3との連携」(68.6%)、 「スクールカウンセラーとの連携」( 47.5%)、であった。(図 10参照) ※数値は「十分な取り組みが行えた」と「どちらかといえば十分な取り組みが行えた」の合計値

・「ADHDが疑われる児童への指導や対応」、「ADHDが疑われる児童の保護者への対応」に対し自信があると回答した割合は、いずれも42.7%であった。(図11 参照)※数値は「自信がある」と「どちらかといえば自信がある」の合計値


3. 保護者と小学校教師間のコミュニケーションの重要性
直近に担当したADHDが疑われる児童に対し、小学校教師の約3人に2人は、その保護者に保健・福祉・医療機関への相談・受診を勧めており、相談・受診を勧められた多くの人は実際に相談・受診を行っていたことが明らかとなった。一方、相談・受診を勧めなかった理由として最も多かったのは「当事者の保護者の理解が得られないと思ったから」であり、教師と保護者とのコミュニケーションの難しさが浮き彫りになった。

・直近に担当したADHDが疑われる児童に対し、小学校教師の67.3%はその保護者に、保健・福祉・医療機関の受診・相談を薦め、そのうち81.8%人は「相談」又は「受診」、ないしその両方を行なったと回答。(図12,13 参照)

・相談・受診を薦めなかった理由としては、「当事者の保護者の理解が得られないと思ったから」 (25.0%)、「治療の必要性はないと思ったから」(12.5%)、「どこを薦めれば良いか分からなかったから」(12.5%)、「当事者の保護者がコミュニケーションを望まなかったから」(12.5%)などが挙げられた。(図 14参照)

・ADHD が疑われる児童への十分な対応・指導のために重要だと思うことは、「病気の事をよく知る」(73.8%)、「学校全体のサポート」(69.9%)、「どのような学習上の配慮を行うべきかを知る」(68.9%)などであった。(図 15 参照)

・ADHDが疑われる児童を指導していく上での重要な連携先として、98.1%の小学校教師が「保護者」と回答した。(図16 参照)


4. 早期支援・受診の重要性
ADHD 児の母親のほとんどは、子どもの小学校入学前までにADHDの情報について知ることが望ましいと思っている。また ADHD児の母親は、子どもの教育のために、専門の医療機関を早く受診することが重要と思っている。

・ADHD児の母親の96.8%は、小学校に入学する前までにADHDの情報について知ることが望ましいと回答。(図17 参照)

・ADHD児の教育のために必要な取り組みとして母親が重要と思う項目は、「医療機関を早く受診すること」(99.6%)、「担任(副担任)のサポート」(98.2%)、「家庭での配偶者や親族のサポート」(97.9%)であった。(図18参照) ※数値は「重要だと思う」と「やや重要だと思う」の合計値



【調査概要】
調査期間:母親 2016年12月1日~5 日 教師 2016年11 月25 日~26日
調査対象:母親 サンプル数  283 名 小学校教師 サンプル数 103名
調査手法:インターネットリサーチ (実施機関:株式会社マクロミル)
調査監修:齊藤万比古先生(愛育クリニック/愛育相談所所長)

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