ジャパン プロパティ ダイジェスト 2017 年第4四半期 

2018年02月13日
総合不動産サービス大手のJLLは日本のオフィス、リテール(店舗)、ロジスティクス(物流)、ホテル市場の空室・賃料・価格動向、需要・供給動向及び12ヵ月予測をまとめた調査レポート「ジャパン プロパティ ダイジェスト(JPPD)2017年第4四半期」を発表しました。セクター別の概要は、以下の通りです。

東京のAグレードオフィス市場

空室率:
2%台へ低下

空室率は2.5%、前期比0.5ポイント低下、前年比0.5ポイント上昇となった。空室率は中心業務地区全体で減少した。

賃料:
23四半期連続の上昇

月額坪当たり36,733円(共益費込)、前期比0.3%上昇となった。2017年通年の上昇率は1.4%となり、前年の2.3%から減速した。

価格・投資利回り:
価格は23四半期連続で上昇

価格は前期比0.4%上昇、前年比2.9%上昇となり、23四半期連続で上昇した。上昇ペースは3四半期ぶりに加速した。売主と買主の価格目線の格差も徐々に埋まってきていることから、成約事例が増加している。

12ヵ月見通し:
賃料と価格の上昇ペース緩やかに上昇

2018年の賃貸市場をみると、供給予定は過去10年平均比220%程度の597千㎡となっている。過去3番目の大量供給であるものの予約契約率は好調であることから、空室率の上昇は限定的となり、賃料は緩やかな上昇基調が継続する見通し。投資市場では、投資利回りの低下余地は限定的であることから、価格は主に賃料上昇を反映して緩やかに上昇する見通し。

大阪のAグレードオフィス市場

空室率:
2008年第1四半期以来初めて1%台に低下

空室率は1.9%、前期比0.7ポイント低下、前年比2.0ポイント低下となり、4四半期連続で低下した。1%台への低下は2008年第1四半期以来初めてとなった。中之島や御堂筋を含むサブマーケットで大規模な空室消化がみられた。

賃料:
14四半期連続で上昇

月額坪当たり18,799円(共益費込)。前期比3.0%上昇し、上昇ペースは2四半期ぶりに加速した。2017年通年の上昇率は7.6%、前年の6.8%から加速し、4年連続の上昇となった。

価格・投資利回り:
価格は17四半期連続上昇

価格は前期比6.9%上昇、前年比20.0%上昇となり、17四半期連続で上昇した。限定的な供給が続く東京から地方へと視線を転じる投資家もいることから、投資意欲は旺盛であるものの、当四半期にAグレードオフィスの取引は確認されなかった。

12ヵ月見通し:
賃料と価格は上昇する見通し

2018年における賃貸市場では、需要が堅調となるなか、新規供給は過去10年平均比47%程度にとどまることから、空室率は引続き2%を下回る水準で推移し、賃料上昇の基調を下支えする見通し。投資市場では、旺盛な投資意欲を背景に、投資利回りの低下と賃料上昇が相俟って、価格は上昇する見通し。

東京のリテール(店舗)市場

賃料:
前期比横ばい

月額坪当たり79,490円(共益費込)、前期比横ばいとなり、1階・空中階とも変動はみられなかった。2017年通年の変動率は前年比0.9%上昇となり、前年の同2.1%の上昇から減速した。

価格・投資利回り:
価格は上昇加速

価格は前期比2.9%上昇、前年比3.0%上昇となり、投資利回りの低下を反映した。

12ヵ月見通し:
賃料と価格はピークに近付く

賃貸市場では、需給の逼迫は続くとみられるものの賃料は既に前回ピークに近い高値圏にあり、大幅な上昇を見込むことは難しい。価格は、投資利回りの低下余地が限定的となっていることから、主に賃料の変動を反映して安定的に推移する見通し。

東京のロジスティクス(物流)市場

空室率:
再び低下、ベイエリアは1%台

東京圏の空室率は4.1%となり、前期比0.1ポイント低下、前年比1.2ポイント低下となった。東京ベイエリアの空室率は1.0%、前期比0.6ポイント低下、前年比2.0ポイント低下となった一方、内陸エリアは6.1%となり、前期比0.2ポイント上昇、前年比0.7ポイント低下となった。

賃料:
緩やかに上昇

東京圏の賃料は月額坪当たり4,202円、前期比0.1%上昇、前年比1.6%上昇となった。東京ベイエリアにおける新規供給が上昇を牽引した。内陸エリアの賃料は同横ばいとなった。

価格・投資利回り:
価格は4四半期連続で上昇

東京圏の価格は前期比0.1%上昇、前年比5.9%上昇となった。4四半期連続で上昇した一方、上昇ペースは3四半期連続で減速した。引き続き様々な投資家の取得意欲は旺盛となったが、投資機会は限定的となった。

12ヵ月見通し:
大規模な新規供給を背景に賃料は緩やかに下落

賃貸市場では今後も堅調な需要が見込まれるものの、今後2年間にかけて記録的な水準の供給が予定されていることから、賃料はエリアによっては下押し圧力が加えられる見通し。
投資市場では、安定的なコア資産を供する当該セクターに対する投資家の関心は続くとみられることから、投資利回りは一層低下する可能性がある。

東京のホテル市場

需要:
インバウンド客の貢献により宿泊需要の基盤は引き続き堅固

東京都の延べ宿泊者数は、2017年初来10月の累計で44,976万人であった。都内延べ宿泊者数の35%を占める外国人宿泊者数は、対前年比16%増の15,623万人、日本人宿泊者数は対前年比2%増の29,352万人であった。
2017年1月-10月の訪日外国人客数は対前年比18.3%増の2,379万人を記録したが、都内の外国人宿泊者数は同ペースでは増加していない。都心のホテルの客室単価が上がり過ぎた結果、より安価な宿泊先を求めて周辺都市に需要が流れたことや、民泊の利用が増加していることが背景にある。

供給:
4ツ星及び5ツ星ホテルの新規供給は無し

2017年第4四半期はラグジュアリーホテルの新規供給は無かった。中価格帯のライフスタイル型ホテルとして11月に開業した「モクシー東京錦糸町」が注目を集めた。東京オリンピックが開催される2020年に向けて、複数のラグジュアリーホテルの新規供給が予定されている。代表的な新規供給計画としては2019年に再開発完成予定の「ホテルオークラ」や2020年開業予定の「フォーシーズンズ大手町」が挙げられる。

運営パフォーマンス:
ADR・客室稼働率の改善がRevPAR成長に貢献

東京の5ツ星ホテルの運営パフォーマンスは、1日当り販売可能客室数当り宿泊売上(RevPAR)が2017年初来11月までの累計で前年比5.8%の増加となった。客室稼働率が前年比2.8%、平均客室単価(ADR)が前年比2.9%上昇したことによる。

売買
2017年第4四半期は、東京ディズニーリゾートに所在する「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」ならびに「ヒルトン東京お台場」が取引された。

12ヵ月見通し:
好調なパフォーマンスが続く見込み

違法民泊を取り締まる住宅宿泊事業法(民泊新法)が2018年6月に施行される。東京の5ツ星ホテルマーケットに対する大きな影響は見込まれず、パフォーマンスは引き続きADRが牽引し、RevPARの成長が期待される。今後12ヵ月間のホテル投資マーケットに関しては、オーナーおよび投資家における価格の期待値のギャップが狭まることで、売買件数が増加するものと予想される。


【補足】
 本レポートの日本での調査対象地区は次の通りです。
 東京CBD(中心業務地区):千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区
 大阪CBD(中心業務地区):中央区、北区
 東京リテール:銀座と表参道のプライムリテールマーケット
 東京ロジスティクス:東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県の一部)の新型物流施設
 東京ホテル:特段の説明がない限り東京所在の5ツ星ホテルマーケット

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