海外留学生のキャリア意識と就職活動状況調査 

2019年04月25日

ディスコは、海外の大学で学ぶ正規留学生や交換・派遣留学生を対象に職業観や就職活動の方法、留学経験への感想など海外留学生のキャリア意識を調査しました。国内の学生(キャリタス就活・学生モニター)調査データと比較も交え分析しています。(調査期間:2019年2月20日~3月18日、回答数474人)

調査結果


1.現在の英語力

まず、現在の英語力について尋ねた。「ネイティブレベル」が 15.4%、「ビジネスレベル」が 52.7%で、ビジネスで英語を使うことができる留学生は 7 割近くに上る(計 68.1%)。国内の大学・大学院で学ぶ学生(以下、国内学生)ではビジネスレベル以上は 1 割程度(計 10.1%)にとどまり、留学生の英語力が国内学生と比べて圧倒的に高いことがわかる。
これを留学形態別に比較すると、ビジネスレベル以上は正規留学生で 77.8%、交換・派遣留学生で 63.9%であり、海外生活が長い分、正規留学生の方が英語力が高い。

2.就職したい理由

就職したい理由を尋ね、国内学生と比較した。留学生は「経済的に自立したい」、「安定した収入を確保したい」、「自分のスキルアップやキャリア形成のため」の順。国内学生も上位 3 位は同じ項目だが、「安定した収入を確保したい」は留学生より 15.8 ポイント高く、「自分のスキルアップやキャリア形成のため」は 15.4 ポイント低かった。
4 位以下を見ると、留学生では「社会貢献がしたい」や「大学での勉強を活かしたい」が国内学生を上回り、国内学生は「世間体が気になる」「社会的地位を確保したい」が留学生より高い。
留学生・国内学生とも、就職に経済的な自立や収入を求める点は同じだが、スキルアップや社会貢献を重視する留学生と、世間体や安定に重きを置く国内学生の間で、意識の差が出た格好だ。

3.海外での勤務希望と海外で働きたい理由

日本国外(海外)での勤務について、留学生は「ぜひ働きたい」が 7 割近くに上る(69.0%)。「どちらかといえば働きたい」(24.3%)も含めると 9 割を超え(93.3%)、海外勤務への意欲は極めて高い。一方、国内学生はそれぞれ 15.7%、27.2%で、海外勤務希望者は 4 割程度にとどまる。
留学生が海外で働きたい理由を見ると、「よりスキルアップできるから」が最も高く、半数を超える(51.1%)。前ページで見たように、留学生は就職をスキル獲得の場と捉える傾向が強い様子がここにも表れている。
働いてみたい国や地域としては「ヨーロッパ」が最も多く(62.0%)、「北米」(56.6%)が続く
など欧米の人気が高いが、一方で「東南アジア」も 4 割を超え(40.5%)、経済成長国でキャリア
を積みたいと考える留学生も少なくない。

4.志望業界

志望する業界について、40 業界から 5 つまで選んでもらった。
まず文系を見ると、留学生は「商社(総合)」(41.7%)と「調査・コンサルタント」(34.5%)の2 業界が突出している。一方、国内学生は「銀行」(19.3%)が最多だが、全体的に分散している。
理系を見ると、留学生は「商社(総合)」(33.3%)、「医薬品・医療関連・化粧品」(29.2%)、「調査・コンサルタント」(27.8%)の順に多い。国内学生ではメーカーへの集中が見られるのに対して、留学生ではメーカー以外の人気も高い。

5.志望職種

志望する職種について、11 職種から 3 つまで選んでもらった。
文系を見ると、留学生は「企画・マーケティング職」が 7 割近くに上り(69.0%)、これと 2 位の「営業職」(49.2%)の 2 職種に集中した。国内学生では、この 2 職種に加えて「事務・管理系職種」までが 5 割台だが、留学生では 26.5%にとどまる。
理系では、国内学生が「研究・開発・設計」「生産・製造・品質管理」「IT 系職種」といった技術系職種に集中した一方で、留学生では「企画・マーケティング職」「営業職」なども比較的高く、全体に分散。前ページで見た志望業界の違いが、志望職種の違いにも影響しているようだ。

6.就職先企業を選ぶ際に重視する点

就職先企業を選ぶ際に重視する点は、留学生・国内学生とも「将来性がある」、「給与・待遇が良い」が上位 2 位だが、下位の項目に差が出ている。
「仕事内容が魅力的」「日本以外の国で働ける」「高いスキルが身に付く」「優秀な人材が多い」といった項目は、留学生の方がポイントが高く、仕事内容やスキルアップを重視する姿勢が表れている。一方、「福利厚生が充実している」「業績・財務状況が良い」「休日・休暇が多い」などの会社の安定性・制度に関する項目については国内学生の方が注目している。
全体的に国内学生は会社軸で見ており、「就社」の側面が強いのに対し、留学生はスキルの獲得など仕事軸で企業を見ている点が特徴的だ。

7.ベンチャー企業への関心

留学生と国内学生の双方にベンチャー企業への就職意向を尋ねた。留学生は「とても関心がある」(12.7%)、「ある程度関心がある」(32.5%)を合わせて 4 割強(計 45.2%)がベンチャー企業への就職に関心があると回答した。これに対し、国内学生の回答はそれぞれ 5.1%、23.2%と低く、関心のある層は 3 割未満に限られる。
留学生がベンチャー企業に関心を持っている理由としては、「企画力・オリジナリティに優れている」「仕事の裁量が大きい」が最も多く(ともに 43.5%)、「若いうちに実力をつけたい」(41.6%)が続く。就職をスキルアップや経験を積む場と考える留学生にとって、早くから裁量を持って仕事に取り組めそうなベンチャー企業の環境は魅力的に映るようだ。

8.就職活動の開始時期

就職活動の開始時期について尋ねた。最も多いのは、正規留学生で「卒業の 2 年前から」(23.8%)、交換・派遣留学生では「卒業の 1 年半前から」(30.7%)。卒業時期の違いを考慮すると、いずれも国内学生の 3 年生の夏頃に相当し、早期から就職を意識する留学生は少なくない。ただし、正規留学生では「卒業半年前」が 2 割を超えるなど、卒業に近い時期に開始する学生も見られる。

9.就職活動の情報源

就職活動の情報源を尋ね、正規留学生と交換・派遣留学生とを比較した。正規留学生の情報収集は「企業ホームページ」と「留学生向け就職サイト」に集中している(ともに 64.2%)。一方、交換・派遣留学生は、「日本国内学生向け就職サイト」(50.5%)、「日本国内学生向け就職イベント」(21.9%)などの国内学生向け就職サービスも併用していることが見て取れる。

10.企業研究をする上で知りたい情報

企業研究をする上で知りたい(知りたかった)情報について尋ねた。「社内の雰囲気」(57.2%)が最も高く、次いで「求める人材像」(55.3%)、「実際の仕事内容」(55.1%)、「採用スケジュール」(51.5%)「採用方法やプロセス」(50.6%)など、多くの項目が半数を超えた。
地理的・時間的制約が大きく、企業説明会や OB・OG 訪問などの情報獲得の機会が限られる留学生にとって、社内の雰囲気や実際の仕事内容など、インターネットでは掴みにくい生の情報を得ることが就職活動の課題となっている様子がうかがえる。

11.インターンシップの経験

インターンシップの経験を、日本国内と海外とに分けて尋ねた。日本でのインターンシップ経験者は、交換・派遣留学生では 6 割超に上る(62.2%)。正規留学生でも 4 割を超えており(43.8%)、夏季長期休暇などに帰国して参加する人も少なくない。一方、海外での経験は、正規留学生で約2 割(21.6%)、交換・派遣留学生では約 1 割(11.2%)にとどまる。
インターンシップの参加社数についても、日本国内での参加が平均 3.5 社を超え、それぞれ海外での参加社数の 2 倍以上に上る。日本国内でのインターンシップは、近年、短期開催のものを中心に急増していることが、留学生のインターンシップ参加も後押ししているのだろう。

12.企業に評価してもらいたいこと

選考にあたって企業に評価してもらいたいことを尋ねたところ、留学生と国内学生で大きな差が見られた。留学生が評価してもらいたいこととして最も多いのは「コミュニケーション能力」(52.5%)で、「異文化対応力」(38.2%)が続く。また、「語学力」「社交性」「リーダーシップ」「バイタリティー」なども国内学生に比べてポイントが高く、海外留学経験を通じて向上させた能力や資質を評価してもらいたいと考える学生が多いことがうかがえる。
一方、国内学生が評価してもらいたいこととしては「協調性」「信頼性」「熱意」などが留学生よりも上位に来ており、組織のなかで円滑に業務を遂行できる能力をアピールしたいようだ。

13.留学前に不安だったこと/実際に困ったこと

留学前に不安だったことを尋ね、実際に留学をして困ったことと比較した。留学前は、「留学・生活費用」(55.1%)、「語学力不足」(52.4%)、「授業レベル」(46.2%)を不安と感じている学生が多かったが、留学後はポイントを大きく下げている。これに対し、「就職活動の進め方」については、留学前は 43.4%だったのが、留学後も約 4 割(39.8%)とポイントはあまり下がっていない。多くの留学生が就職活動に頭を悩ませているようだ。なお、就職活動で困った例としては、日本での就職に関する情報不足、学業との両立の難しさ、相談相手の不在を挙げる声が多かった。

14.留学費用

留学する上で大きな不安要素である費用について、実際にかかった額と、そのうち家族が負担した額について尋ねた。正規留学生の費用の平均総額は 1,196.7 万円で、留学期間が比較的短い交換・派遣留学生(229.3 万円)の 5 倍以上に上る。また、留学形態に関わらず費用の多くを家族に頼っており、正規留学生で 9 割近く、交換留学生で 7 割近くを家族が負担している。

15.留学をした感想

留学全般についての感想を尋ねた。「大変良かった」が 8 割近くに上り(77.8%)、「良かった」(16.5%)を合わせると 94.3%で、満足度は極めて高い。留学したことの成果としては、「語学力の向上」(79.1%)、「異文化対応力の向上」(74.5%)、「国際理解を深め価値観が変わった」(61.4%)、「日本のよさを再認識できた」(61.4%)など、異なる言語・文化・生活への理解や対応力が上位に挙げられた。これらの能力は、将来グローバル人材としての活躍を期待されるであろう留学生にとって、大きなアドバンテージになるだろう。

調査概要


■調査対象:CFNに登録している【日本人留学生】のうち、卒業時期が2018年5月以降の者 11,247人
■回答者数:474人(正規留学生185人、交換・派遣留学241人、語学留学27人、その他21人)
■調査方法: インターネット調査法
■調査期間: 2019年2月20日~3月18日

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