2013年度「在欧州・ロシア進出日系企業実態調査」 

2013年12月24日
ジェトロは2013年10~11月、欧州およびロシアに進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施。なお、在ロシア日系企業を対象とする調査は、今年度が初めてとなります。

【調査結果】

(1)今後1~2年の事業展開について、在欧州日系企業は回復の兆し、在ロシア日系企業は拡大基調

・在欧州日系製造業で今後1~2年の事業展開を「拡大」と回答した企業は49.9%と2012年の47.3%より2.6ポイント増となったが、リーマンショックや欧州債務危機が発生する以前の水準(2007年は52.7%)までは戻っていない。

・非製造業を含めると、在欧州日系企業で今後1~2年の事業展開を「拡大」と回答した企業が52.9%、「現状維持」が42.8%、「縮小」が3.5%であった。在ロシア日系企業は「拡大」が77.8%、「現状維持」が20.6%、「縮小」が1.6%。ロシアでのビジネス拡大基調がより強いことから、在欧州日系企業は、欧州外の将来有望な販売先として、前回調査(2012年)に引き続き、ロシアを第一に挙げている(334社)。トルコがこれに続く(319社)。

・在欧州日系企業、在ロシア日系企業とも拡大の理由は、「売上の増加」が最多であった(欧州83.2%、ロシア85.7%)。次に多かった「成長性、潜在力の高さ」については欧州が37.3%だったのに対しロシアは79.6%と高く、市場の潜在的な成長力が評価されている。他方、欧州第3位の「高付加価値製品への高い受容性」(25.0%)はロシアでは低い割合にとどまり、市場の成熟度の差を表す結果となった。


(2)在欧州進出日系企業実態調査の3つのポイント

1)2013年は67.5%の企業が営業黒字、2014年は約9割が業績改善または横ばいの見通し

・2013年の営業利益見通しは、「黒字」が67.5%、「均衡」は15.9%、「赤字」は16.6%だった。2014年の営業利益見通し(前年比)は、「改善」が51.8%、「横ばい」が41.5%、「悪化」が6.7%となった。

・2013年の売上高見通しは、「売上高増」が66.8%、「売上高減」が33.2%だった。特に、中・東欧、トルコの製造業の「売上高増」が74.7%と目立つ。

・欧州経済の先行きに対して、「すでに景気後退から抜け出した」は7.3%とごく僅かで、「景気後退から抜け出すのにまだ時間がかかる」が68.5%だった。業績回復の兆しがみられるなか、景気先行きについては慎重な見方も多い。

2)「景気低迷、市場縮小」、「労働コストの高さ」が経営上の課題、引き続き中国企業が競合相手

・経営上の課題点は「景気低迷、市場縮小」が45.7%、次いで「労働コストの高さ」(39.9%)、「人材の確保」(37.8%)が挙がった。

・「新たな競合企業の出現」(32.6%)についてその国籍を聞いたところ、中国企業が55.9%で最も多かった。欧州では中国企業による欧州企業買収も相次いでいる。韓国企業(37.2%)、欧州企業(32.2%)が続く。

・経営の現地化に向けた取り組みとして、「現地人材の登用(部長・課長級)」(53.2%)や「現地化を意識した現地人材の研修・育成の強化」(50.8%)が多かった。

3)日・EU経済連携協定(EPA)締結に高い期待

・自由貿易協定(FTA)が事業に与える影響については、日・EU EPAの「メリット大」が44.1%(2012年、42.6%)とEUが交渉を進める他のFTAに比して期待が高い。地域別では、中・東欧・トルコ(55.6%)が西欧(42.3%)を上回り、日本の部品メーカーの生産拠点が集積する同地域における期待が高い。

・EU・ASEANの巨大市場間のFTAは「メリット大」が20.7%であった。EU・タイの「メリット大」が19.7%、EU・米国は18.9%。


(3)在ロシア進出日系企業実態調査の3つのポイント

1)2013年は55.6%の企業が営業黒字、2014年は全回答企業が業績改善または維持の見通し

・2013年の営業利益見込みは、「黒字」(55.6%)が最も多く、「赤字」(30.2%)、「均衡」(14.3%)が続いた。前年実績と比べ、「改善」が39.7%、「横ばい」「悪化」ともに30.2%となった。

・営業利益改善の要因として、「現地市場での売上増加」(84.0%)が最も多かった。悪化の要因は、「現地市場での売上減少」(78.9%)、「為替変動」(47.4%)のほか、「人件費の上昇」(36.8%)、「販売価格への不十分な転嫁」(36.8%)が挙がった。

・2014年の営業利益は2013年と比べて「改善」(55.6%)と回答する企業が最も多く、「悪化」の回答はゼロで、「改善」の要因として、「現地市場での売上増加」に対する期待が大きい。

2)ロシア市場の成長に高い期待、行政手続きの煩雑さやテロ発生がリスク

・投資のメリットとして、「市場規模/成長性」の回答(91.9%)が最も多かった。

・投資のリスクとして、投資環境面で、「行政手続きの煩雑さ(許認可など)」「税制・税務手続きの煩雑さ」(ともに79.0%)、「人件費の高騰」(67.7%)が多く挙がった。安全面では、「治安、テロ」(88.7%)、「紛争、民族/宗教対立」(61.3%)が多く挙がった。

・現地生産の課題として最も多く挙がったのは、「品質管理の難しさ」(46.2%)であった。このほか、「調達コストの上昇」、「原材料・部品の現地調達の難しさ」(いずれも38.5%)といった調達面での課題が多かった。

3)世界貿易機関(WTO)加盟によるメリットを「実感」するのは2割

・ロシアのWTO加盟(2012年8月)のメリットが「ある」と回答した企業は22.6%にとどまり、8割近くの企業が加盟のメリットを実感できていない。この要因は、関税引き下げが加盟から4~8年かけて行われること、その他市場開放も加盟から一定の年数を経て実施されるためとみられる。

・WTO加盟のメリットとして、「関税の引き下げ」(71.4%)をメリットとする回答が最も多く、「通関手続きの簡素化」、「外国投資に関する規制緩和」がいずれも14.3%であった。


【調査概要】
・調査方法・実施時期:アンケート調査・2013年10月8日~11月12日(欧州)、2013年10月23日~11月13日(ロシア)
・アンケート送付先:
 在欧州日系企業1,498社(回答企業数1,000社、有効回答率66.8%。トルコは製造業のみ。)
 在ロシア日系企業117社(回答企業数63社、有効回答率53.8%)
・質問項目:(1)経営状況、今後の事業展開、(2)経営上の課題、(3)WTO/FTAのメリットなど

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[ジェトロ]
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