第14回中南米日系進出企業経営実態調査 

2013年12月16日
ジェトロは、2013年9月6日から10月25日まで、中南米7カ国(メキシコ,ベネズエラ,コロンビア,ペルー,チリ,アルゼンチン,ブラジル)に進出している日系企業を対象に、経営実態に関するアンケート調査を実施。

【調査結果概要】

(1)業況感は底を打ち、持ち直しを見せる
2013年の営業利益見込みが前年比で「改善」、「横ばい」、「悪化」すると回答した割合を基に計算した、業況感を表すDI値(「改善」と回答した割合から、「悪化」と回答した割合を引いた数値)は21.1ポイントとなった。昨年度調査の10.6ポイントより10.5ポイント高く、企業の業況感は2年連続の下落から持ち直しを見せている。国別にみると、業況感が高いのはブラジル(32.5)、メキシコ(24.8)、ペルー(21.5)、一方で低いのはチリ(2.8)、アルゼンチン(8.8)となっている。

(2)2014年の営業利益はさらに改善すると期待
2014年の業況感を表すDI値(見込み)は、中南米全体で45.4ポイントとなった。2013年の21.1ポイントに比べて大幅に高い数値となっており、2014年の営業利益改善に対する高い期待がうかがえる。国別に見るとベネズエラを除く全ての国で2014年のDI値は2013年のそれを上回っている。ベネズエラでは2013年の営業利益見込みを「黒字」と回答した企業の割合は高かったものの、政治、経済の不安定さから先行きが見通せず、業況感が低くなっていると考えられる。

(3)国によって事業展開の方向性に大きな差
今後1~2年の事業展開の方向性として、「拡大」と回答した割合が67.7%(295社)で、「現状維持」の27.3% (119社)、「縮小」の4.1%(18社)を大きく上回った。国別に見ると、ブラジル、メキシコで76.2%が「拡大」と回答しており、次いでペルーでも71.4%が「拡大」と回答している。
それらの国と対照的なのがベネズエラとアルゼンチンで、「現状維持」と回答した割合が最も多く、それぞれ68.4%、55.9%となっている。ベネズエラとアルゼンチンについては、輸入規制や為替管理、高インフレに伴う販売価格統制、政府の不安定性など、今後の政治・経済の展開を見通せない要因が多いためと考えられる。

(4)従業員の賃金上昇が顕著
経営上の問題点のうち、雇用・労働面では「従業員の賃金上昇」が73.4%(320社)高い比率を示した。この比率は前々回調査(58.9%)、前回調査(60.2%)と毎回増加しており、経営上の問題点の中で最も高い比率となっている。次いで「従業員の質」が44.3%(193社)、「人材(中間管理職)の採用難」34.9%(152社)となっている。社員の質や数の確保に苦慮する日系企業の姿が浮かび上がっている。

(5)賃金、税制、行政手続きの煩雑さで差がつくブラジルとメキシコ
日系進出企業が多いブラジルとメキシコを比較すると、ブラジルでは「行政手続きの煩雑さ(許認可など)」、「(投資環境面)人件費の高騰」、「税制・税務手続きの煩雑さ」などが大きな課題となっている。特に、「人件費の高騰」は同国労働市場での恒常的な賃金上昇圧力が働いていることが要因の一つだろう。
一方、「治安、テロ」「従業員の質」「人材(中間管理職)の採用難」「従業員の定着率」「原材料・部品の現地調達の難しさ」はメキシコで大きな課題と指摘されている。「治安」については、メキシコは昨年度同様高い比率を占めた一方、ブラジルでは昨年度の回答比率は14.9%だったが、今年度は66.5%に急上昇した。これは、2013年6月のサンパウロでのバス・地下鉄料金値上げをきっかけに、教育や医療等の充実、インフレ防止や汚職撲滅など求める大規模なデモが行われたことが影響したものと推測される。

(6)現地調達の難しさに直面
生産面の問題点としては、「原材料・部品の現地調達の難しさ」55.2%(100社)、「調達コストの上昇」48.1%(87社)が高い比率を示した。特に、現地調達の難しさについては日系製造業の生産拠点が少ないペルーやチリを除く各国で60~90%に達しており、在中南米日系製造業の共通した問題点といえよう。ただ、ブラジルだけは49.4%にとどまった。ブラジルは以前からメキシコなどと比べると関税障壁などを高く設定し、国内産業の育成に努めてきたため、ある程度の裾野産業が存在することが背景にあるものと思われる。メキシコの現地調達率は低いが、原材料・部品の輸入にFTAや産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)などの優遇関税を利用できることが背景にある。しかし、近年は自動車産業を中心に日系のサプライヤーチェーンがTier2、Tier3のレベルまで構築されつつあるため、中期的には現地調達の拡大が進むものと思われる。

(7)活用が進むFTA/EPA
日本とメキシコ、チリ、ペルーとの間で発効している経済連携協定(EPA)に加え、中南米各国が発効させている自由貿易協定(FTA)を活用した輸出入ビジネスを展開しているケースが多い。中南米でのビジネスにはFTA/EPAが重要な役割を果たしていると考えられる。特に、中南米のFTA先進国といわれるメキシコでは、FTA/EPAの利用割合が高く、同国の幅広いFTAネットワークを利用してビジネスを展開している日系企業の姿が浮かび上がっている。また、現在、日本はコロンビアとEPA交渉中だが、同EPAが同国の日系企業によるさらなるビジネス展開や同国への日本企業の進出を後押しすることが期待される。


【調査概要】
調査方法・実施時期:アンケート調査、2013年9月6日~10月25日
アンケート送付先:在中南米進出日系企業742社(回答企業数436社、有効回答率58.8%)
質問項目:(1)企業業績、(2)今後の事業展開の方向性、(3)変化するビジネス環境への対応等

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[ジェトロ]
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