2013年米国・カナダ進出日系企業実態調査 

2013年11月21日
ジェトロは、2013年9月6日から10月18日まで、米国およびカナダに進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施しました。
※米国は、製造業のみ、カナダは、製造業および非製造業を対象としています。

【調査結果】

米国進出日系企業実態調査の結果

(1)2013年の営業利益:「黒字」見込みはリーマン・ショック以前の水準までに回復、今後も6割が事業展開の「拡大」見込む

13年の企業の景況感を示すDI値(調査年の営業利益が前年比で「改善」した割合から「悪化」した割合を引いた数値)は、31.7となり、前年(29.9)よりさらに改善した。米経済の回復基調に合わせ、輸送用機器(自動車・二輪車)(69.6%)、電気・電子部品(66.0%)などを中心に全業種を通して業績が好調となった。「現地市場での売上増加」(78.9%)が大きな要因。営業利益が「黒字」と回答した割合は79.7%を記録、リーマン・ショック以前の水準(2007年:78.3%)までに回復したことを裏付けた。14年の見通しについても「改善」(53.3%)が過半を占める(「悪化」は(6.8%))。

今後1~2年の事業展開の方向性については、60.1%の企業が「拡大」を見込む。これは前年(12年、57.1%)を上回る水準。拡大の主因として(回答数が多い順に)、「売上の増加」(88.9%)や「成長性、潜在力の高さ」(41.6%)が挙がった。

(2)経営上の課題:コスト上昇要因(「人件費の上昇」「医療保険の負担増」)が懸念材料に

経営上の課題に関しては、コスト上昇の主因として(回答数が多い順に)、「人件費(給与・賞与)の上昇」(63.8%)や「医療保険(ヘルスケア)の負担増」(55.4%)など従業員に関わる経費負担増が挙がった。両項目とも前年調査を上回る回答(55.1%、52.4%)。(注:医療保険制度改革法により、50人以上を雇用する企業は、従業員に対し保険を提供しない場合は1人につき2,000ドルの罰金を課されることに。2015年1月1日以降適用予定)

(3)米国での生産増強:他国に移管した経験のある企業のうち2割弱が増強

米国での生産を他国に移管した経験のある企業は157社(23.8%)となった。うち、米国に再び生産拠点を移す動きについて、「あてはまる」が26社(16.6%)、「今後はありうる」が36社(22.9%)、「当てはまらない」が95社(60.5%)となった。「当てはまる」の理由として、「中国に生産移管したが、その後、米国での受注が増えたため、米国での生産を復活させた」(輸送用機器部品(自動車・二輪車))など、米国国内での旺盛な需要への対応を理由に挙げる声があった。一方、「当てはまらない」の理由として、「米国での生産はコスト高」(電気機械・電子機器)、「メキシコで生産拠点を立ち上げたばかりで、縮小は考えていない」(輸送用機器(自動車・二輪車))との声も挙がった。

(4)今後市場が拡大する分野:「エネルギー」「環境」「医療」「健康」が上位に

今後2~3年で市場が拡大すると思われる分野については「エネルギー」(58.1%)、「環境」(49.8%)、「医療」(42.7%)、「健康」(29.2%)などが上位に挙がった(資料1.-図表21)。シェール革命や環境意識の高まり、高齢化・肥満化、医療保険制度改革による商機拡大などが背景に挙げられる。

(5)シェール革命の影響:「プラス」が3割を占め、「マイナス」を大きく上回る

シェール革命の影響については、「プラス」(30.7%)が「マイナス」(2.9%)を大きく上回った(資料1.-図表23)。「プラス」とした企業からは、「石油、石油化学、ガス会社の設備投資が進むことから、機器の発注が増える」(一般機械)や「製造工程で使用される化学製品市場の拡大を期待」(化学品・石油製品)といった声が挙がった。

(6)中南米ビジネス:8割近い企業が「拠点・取引」「ビジネス関心」あり

中南米地域でのビジネスについては、8割近い企業が既に「取引・拠点がある(何れかも含む)」(52.2%)、「取引・拠点の何れもないが、ビジネスに関心はある」(26.5%)と回答(資料1.-図表24)。ビジネスに関心のある国としては「ブラジル」や「メキシコ」(ともに79.4%)が上位に並んだ。

カナダ進出日系企業実態調査の結果

(1)景況感:前年と比較して一歩後退。今後の事業展開も6割近くが「現状維持」

2013年の企業の景況感を示すDI値は、14.3となり、前年(17.8)より低下した。2012年と比較した2013年の設備投資も、「横ばい」とした企業は66.7%となった。今後1~2年後の事業展開の方向性も、「現状維持」が55.6%となった。

(2)経営上の課題:コスト上昇要因(「人件費の上昇」「カナダ・ドル高(対米ドル)」)が懸念材料に

経営の課題に関しては、コスト上昇の主因として(回答数が多い順に)、「人件費(給与・賞与)の上昇」(60.3%)、「カナダ・ドル高(対米ドル)」(31.0%)、「原材料・資源・コモディティ価格の上昇」(30.2%)、が挙がった。一方、売上抑制要因としては、「価格競争の激化」(79.4%)、「差別化の図りにくさ」(43.7%)、「有力な競合製品の存在」(39.7%)が主因として挙がった。

(3)カナダでの生産増強:他国に移管した経験のある企業のうち2割が増強

カナダでの生産(一部を含む)を他国に移管した経験のある企業は25社(19.8%)となった。うち、カナダに再び生産拠点を移す動きについて、「当てはまる」は5社(20.0%)、「今後はありうる」は6社(24.0%)、「当てはまらない」は14社(56.0%)となった。「当てはまる」の理由は主に、「輸送費の上昇のため、現地生産に切り替えた」(輸送用機器部品(自動車・二輪車))などが挙がった。一方「当てはまらない」の理由として、「カナダ市場の拡大が見込めない」(輸送用機器(自動車・二輪車))や「カナダ・ドル高によりカナダ製造業の競争力は厳しい」(輸送用機器部品(自動車・二輪車))といった意見が挙がった。

(4)今後市場が拡大する分野:「エネルギー」「環境」「医療」「健康」が上位に

カナダ市場において、今後2~3年で市場が拡大すると思われる産業分野については(最大3分野まで選択可)、「エネルギー」(65.1%)、「環境」(38.1%)、「医療」(32.5%)、「健康」(25.4%)に回答が集まった。資源国としての強み、人口の高齢化や健康意識の高まりなどが背景に挙げられた。

(5)シェール革命の影響:「プラス」は3割を占め、「マイナス」を大きく上回る

北米のシェール革命がもたらす影響について、「プラス」(32.5%)が「マイナス」(4.0%)を大きく上回った。プラスの理由としては、「新しいビジネス機会が生まれるから」(輸送用機器部品(自動車・二輪車))、「機器の発注が増える」(一般機械)、「輸送費が下がるから」(運輸・倉庫)、「カナダの景気にプラスの影響」(その他)などが挙げられた。


【調査概要】
調査方法・実施時期 :アンケート調査、2013年9月6日~10月18日
アンケート送付先 :
 -在米国進出日系企業(製造業のみ)1,005社(回答企業数661社、有効回答率65.8%)
 -在カナダ進出日系企業(製造業および非製造業)189社(回答企業数126社、有効回答率66.7%)
質問項目 :1.企業業績、2.今後の事業展開の方向性、3.変化するビジネス環境への対応等

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[ジェトロ]
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