在ドバイ及び北部首長国・進出日系企業実態調査 

2014年03月27日
中東・北アフリカ(MENA)地域への日本企業の関心が高まる中、ジェトロは、2014年1月21日から2月18日まで、MENA諸国で日系企業の拠点数が最多であるアラブ首長国連邦(UAE)の、ドバイ首長国及び北部首長国に進出している日系企業に対し、経営実態等に関するアンケート調査を、初めて実施しました。

【調査概要】
・調査方法・実施時期:アンケート調査 2014年1月21日~2月18日
・アンケート送付先:在ドバイ及び北部首長国の進出日系企業144社
(ドバイ日本商工会議所の会員企業及びジェトロが同地域で活動を把握している企業。回答企業数90社、有効回答率62.5%)
・質問項目:業績・事業展開の方向性、ドバイ及び北部首長国での経営における問題点、ビジネス上の課題等

【調査結果概要】

(1)UAE及び周辺地域市場の拡大を背景に、6割以上の企業が2014年の営業利益「改善」の見通し。

・2013年の営業利益見込みについては、6割以上の企業が「黒字」と回答。前年比でも「為替変動」「現地市場での売上増」などを理由に、45.2%の企業が「改善」と回答した。一方で、「投資費用の増加」「価格競争の激化」などを理由に22.6%の企業が「悪化」と回答した。

・2014年の営業利益見通しは、「ドバイの景気回復」「政情不安を抱える国でのビジネス拡大」「周辺地域(中東、アフリカ、中央アジア等)の需要拡大」「インフラビジネスへの期待」などを理由に64.7%の企業が前年比で「改善」と回答した。「悪化」と回答した企業は8.2%で、「人件費の増大」「競争激化による利益率の低下」などを理由に挙げた。


(2)8割以上の企業が事業を「拡大」。政情不安国も含めた域内外の需要の拡大、国際イベントに期待。

・今後1~2年の事業展開の方向性として、「拡大」と回答した企業が52.2%、「第3国(地域)への拡大」と回答した企業が30.0%だった。2つの回答をあわせると、8割以上の企業が「拡大」の見通し。「中東、アフリカ、中央アジアの需要拡大」「湾岸諸国のポテンシャルの高さ」「イラン、イラクへの展開」「万国博覧会(ドバイ、2020年)に向けた新規需要への期待」「FIFAワールドカップ(カタール、2022年)に向けた建設市場の活性化」などを、事業拡大の理由として挙げた。

・他方で16.7%の企業が「現状維持」と回答。「生産性や業務の効率化」「原資の不足」「不安定要素に備えた慎重な計画を作成」などを理由に挙げた。


(3)現地人材の研修・育成の強化などで、経営の現地化を強化。給与水準の高騰が課題の一つに。

・経営の現地化については、5割以上の企業が「現地人材の研修・育成の強化」「即戦力となる現地人材の中途採用」に取り組んでいると回答した。一方で「現地化の取り組みはしていない」と回答した企業は14.4%だった。また、「現地人ではなく、現地に長期滞在する外国人を幹部として育成する」というコメントもあった。

・経営の現地化の課題については、「現地人材の能力・意識」と回答した企業が41.7%で最多だった。「その他の問題」と回答した企業(8.3%)からは、「幹部候補人材の給与が高い。給与に見合った期待通りのパフォーマンスではない」「社内の使用言語の統一が難しい」などのコメントがあった。


(4)経営における最大の課題は「政治リスク」。「規制・法令の整備、運用」も4割以上が課題と指摘。

・現地側の経営における課題については、52.2%の企業が「政治的・社会的安定性(政治リスク)」、次いで45.6%の企業が「政治的・社会的安定性(治安)」と回答した。具体的にはシリア、イラン、イラクなどの国名が挙げられた。「規制・法令の整備、運用」と回答した企業(44.4%)からは、「独資での販売ができない」「外資規制」「省エネ規制」などのコメントがあった。

・自社・日本側の経営における課題については、「現地市場に適した製品開発・投入ができていない」「本社の理解の少なさ、意思疎通の難しさ」「人材不足(日本人駐在員)」と回答した企業が3割を超えた。具体的には、「客先の求める製品の原産国の指定」「ビジネス慣習の違いに起因する、ビジネス拡大時の、本社側の理解を得ることの難しさ」などのコメントがあった。


(5)欧州系企業が最大の競合相手。

・最も競合関係のある企業として、「欧州系企業」(35.6%)と回答した企業が最多だった。次いで、「日系企業」(26.7%)、「韓国系企業」(11.1%)が続いた(図表13)。業種別では、「素材・建材・化学・産業機械・その他製造」「建設・重電・設備機器・エネルギー」「運輸・金融・情報・サービス」では「欧州系企業」、「商社」「輸送用機械・建機・同部品」では「日系企業」と回答した企業が最多だった。


<参考>
今年度同様の調査を実施した、エジプト、トルコ、アフリカ(南アフリカ、エジプト、ケニア、ナイジェリア、コートジボワール)と、「営業利益見込み」「事業展開の方向性」「経営の現地化」の項目について比較を行った。

・「2014年の営業利益見通し(13年比)」で「改善」の割合が最大だったのは、ドバイ等の日系企業。また「事業展開の方向性」で、「現状維持」「縮小」の割合が最小だったのもドバイ等の日系企業だった。UAE及び周辺国での景況感の上昇への期待が、積極的な事業展開につながっている。

・「経営の現地化」では、「現地人材の登用(部長・課長級)」「現地人材の研修・育成の強化」と回答した企業の割合は、トルコが最大だった一方、ドバイ等では「現地における企画・マーケティング力の強化」と回答した企業の割合(40.0%)が他国・地域を大きく上回った。「経営の現地化の課題」では、全ての国・地域で、「現地人材の能力・意識」が課題と指摘された。


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[ジェトロ]
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