「2014年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ海外ビジネス調査) 

2015年03月11日
ジェトロでは2014年12月~2015年1月にかけて、ジェトロのサービス利用者(=海外ビジネスに関心の高い日本企業)を対象に実施したアンケート調査を実施、約3,000社から回答を得た。(有効回答数2995社、うち中小企業は2334社、有効回答率32.6%)。アンケートでは、貿易への取り組み、海外・国内の事業展開方針、新興国のビジネス環境、経営のグローバル化等について尋ねた。

【調査結果概要】

1.グローバルに事業展開する企業ほど円安の恩恵大
近年の円安の影響について、「特に影響はない」が42.4%と最大で、業績が改善した企業は22.0%であった。海外売上高比率が高く、グローバルに事業展開する企業程、円安の恩恵を受けている。海外売上高比率が75~100%の企業では円安により業績が改善した企業が57.0%、同50~75%未満では56.8%、同25~50%未満では47.7%に及ぶ。企業規模別では、大企業では4割近い企業で業績改善効果が認識されている一方、中小企業では2割弱と、円安の恩恵を受けている企業が大企業と比較して低い。今後(3年程度)の輸出方針については、「輸出の拡大をさらに図る」企業が66.2%、「今後、新たに取り組みたい」(12.4%)を含めると、輸出拡大を志向する企業は78.6%と、前年に続き高水準。

2.輸出が伸び悩む主因は海外需要伸び悩み、ライバル企業との競争、海外への生産拠点移転
現在の円安では過去の円安時程、輸出が伸びていないとされる理由について、「輸出を拡大する意思はあるが、海外の需要が伸びていないから」(21.3%)が最も多く、「他国のライバル企業の競争力が高いから」(14.5%)、「円高になった際、海外に生産拠点を移してしまったから」(11.7%)が続く。大企業では、「海外に生産拠点を移してしまったから」(22.4%)が最も多い。業種別では、輸送機器(47.2%)、情報通信機械・電子部品(31.1%)などで同回答が目立っていることが特徴。

3.中小企業の国内外への事業拡大意欲が増加
今後(3年程度)の国内外事業方針では、中小企業が海外・国内双方とも事業の拡大を図るとの回答が前年を上回った(海外50.2%→54.3%、国内48.0%→54.8%)のに対し、大企業の事業拡大の回答は海外が低下(70.1%→65.2%)、国内が横ばい(47.6%→47.0%)であった。中小企業の国内外事業の拡大意欲が目立つ結果となった。特に、中小企業の海外事業の拡大を図るとの回答は、比較可能な2011年以降で初めて過半数を超えた。

海外進出拡大方針を有する企業の61.5%は国内事業も拡大すると回答し、海外進出を拡大する企業は国内事業も拡大する傾向がみられた。この比率は、大企業では54.3%であったの対し、中小企業では63.9%。国内外事業を同時に拡大する意欲のある企業の比率でも、中小企業が大企業を上回る結果となった。

4.米国での拡大意欲が増加、メキシコも上昇、ASEANが3年連続で中国を上回る

海外進出の拡大を図る国・地域では、拡大方針を有する企業のうち、米国を選択する企業が31.3%と、前年(25.4%)から増加した。また、メキシコで事業拡大方針を有する企業も10.1%と前年(7.6%)から増加し、2011年(3.1%)から毎年、増加を続けている。トルコでの事業拡大方針を持つ企業も前年の2.5%から3.1%へと増加傾向がみられる。

アジア地域で拡大を図る国・地域では、ASEAN(73.5%)、中国(56.5%)とASEANが2012年以降、3年連続で中国を上回っている。ASEANの国別では、タイ(44.0%)、インドネシア(34.4%)、ベトナム(28.7%)で拡大意欲が高い。

5.拠点・機能再編では中国からベトナムなどへの機能移管が目立つ
国内外拠点・機能の再編について、移管元では日本(49.1%)、中国(27.8%)が高く、中国を移管元とする比率は増加傾向にある。拠点・機能の移管先では、ASEANへの移管が移管件数全体の47.9%を占め、前年(46.2%)に引き続き最も多い。移管元・先の組み合わせでは、「日本からASEANへ移管」(22.7%)、「中国からASEANへ移管」(16.2%)が多い。「中国からASEANへ移管」では、半数近い企業(129件中57件)がベトナムを移管先に選択。また、移管先を日本とする件数も、移管件数全体の7.5%に上り、その多くは中国から日本への移管である。中国から移管する理由では、「生産コスト・人件費の上昇」が66.7%と最も多く、前年(58.5%)からも増加。

6.中国、タイで人件費、労働力不足が課題と認識する企業が多数
新興国のビジネス環境上の課題について、「人件費が高い、上昇している」は、中国(48.8%)、タイ(29.1%)、インドネシア(21.2%)で高く、「労働力の不足・人材採用難」と回答する企業もタイ(18.6%)と中国(14.4%)で相対的に多いなど、中国、タイで労務関係の課題を認識する企業が多い。また、「インフラが未整備」は、ミャンマー(53.9%)、カンボジア(44.9%)、インド(44.8%)などで課題として認識する企業が多い他、ロシアでは、「為替リスクが高い」と回答する企業の比率が増加。

7.留学生の採用は大企業が6割を超える一方、中小企業は4割強に留まる
海外ビジネス拡大に向けた人材戦略について、「現在の日本人社員のグローバル人材育成」(45.1%)が最も多く、「外国人の採用、登用」(23.1%)、「海外ビジネスに精通した日本人の中途採用」(22.3%)が続いている。

「外国人を採用している」と回答した企業は42.2%で、特に大企業では70.3%と7割に及ぶ。一方、中小企業の同比率は34.2%に留まるが、「今後外国人の採用を検討したい」と回答した中小企業は23.8%に上り、外国人採用への関心は高い。「外国人を採用している」もしくは「今後採用を検討したい」と回答した企業のうち、日本国内の外国人留学生を採用している(もしくは検討している)企業の比率は大企業では60.4%に及ぶ一方、中小企業は43.2%にとどまり、留学生の獲得の面で差がみられる。


【調査概要】
・調査対象企業:海外ビジネスに関心が高い日本企業(本社) : 9,183社
(内訳)
 ジェトロ会員企業(ジェトロ・メンバーズ) : 3,415社
 ジェトロのサービスの利用企業 : 5,768社
 ※本調査はジェトロ・メンバーズを対象に2002年度に開始、今回で13回目。2011年度より、調査対象企業を拡充。
・調査期間:2014年12月5日 ~ 2015年1月13日
・回収状況:
 有効回収数 : 2,995社 (うちジェトロ・メンバーズ : 1,334社)
 有効回答率 : 32.6%

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[ジェトロ]
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