日本における役員報酬に関する市場調査 

2016年05月12日
マーサージャパンは、日本における役員報酬に関する市場調査「Mercer Executive Remuneration Guides(以下MERG)」の2015年版レポートをリリースした。

【調査結果サマリー】

・サーベイ参加企業数は過去最多の182社(前年比60社増)

・社長の総直接報酬水準(基本報酬+短期インセンティブ+中長期インセンティブ)の中央値は6,600万円

・日系企業では「役位」基準の報酬決定が一般的、外資系企業の多くは「ジョブ」や「ジョブサイズ」を基準に報酬を決定

・日系企業の中長期インセンティブ(LTI)導入率が約50%にまで到達。ストックオプションや株式報酬型ストックオプションの採用率が高いが、自社株信託スキームを採用する企業も増加傾向

・任意設置の諮問委員会の設置比率は報酬委員会が51%、指名委員会は38%となっており、本報酬サーベイ実施後の2015年12月の東京証券取引所(東証)の調査もあわせて踏まえると、任意設置の諮問委員会は一般的になりつつあるといえる


【調査結果】

報酬水準と報酬決定基準

日本企業の役員の総直接報酬(基本報酬+短期インセン ティブ+中長期インセンティブ)は、近年一貫して上昇傾向にあり、2015年MERGの全参加企業における社長の総直接報酬の中央値は6,600万円であった。しかし、海外に目を転じると、依然諸外国より低い水準にあることが分かる。今後、グローバル経営を志向する多くの日本企業にとっては、グローバルでの優秀な経営人材の獲得・リテインを妨げないよう、グローバルで一定の競争力を有する報酬水準を実現していくことが求められる。
また、報酬決定の基準として、多くの日系企業では役位を重視している一方で、外資系企業では、役員の担当している職務の内容や役割の大きさを考慮している。役位を報酬決定基準とした場合、社外人材の登用やグローバルでの報酬ガバナンスにおいて支障を来たすおそれがあるため、日本企業においても、今後、ジョブやジョブサイズを軸とした報酬水準設定が一般的になっていくものと想定される。

LTIとビークルの導入状況

LTI(中長期インセンティブ:Long-Term Incentives)を導入する企業の比率は、全参加企業で57%、日系企業で49%、外資系企業では68%に上った。今後、株主との利害共有や中長期 的な企業価値向上をねらいとした、役員へのインセンティブ付与の観点から、LTIの導入・拡大に対する社会的な要請はますます強まり、導入率はさらに高まっていくことが予想される。
また、中長期インセンティブのビークルについては、通常型ストックオプションや、株式報酬型ストックオプションの採用率がそれぞれ全参加企業の 43%、47%と他より高く、近年の傾向を裏付ける形となった。一方、「自社株信託スキーム」の導入率が昨年度の8%から15%まで伸びていることも分かった。「自社株信託スキーム」は、LTIに業績達成条件を付加し、パフォーマンスシェアと同等の効果を狙ったスキームであるが、平成28年の税制改正の議論における譲渡制限付株式の導入促進の流れを受け、今後、株式報酬型ストックオプションや自社株信託スキーム等、日本企業独自のLTIビークルの活用にも一定の変化が起こる可能性がある。

任意設置の諮問委員会設置状況

参加企業のうち、任意設置の諮問委員会として報酬委員会、指名委員会を設置する企業はそれぞれ51%、38%に上った。コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-10 (1) :指名・報酬等の検討における独立社外取締役の関与・助言(例: 独立社外取締役を主な構成員とする任意の諮問委員会の設置)に対応し、諮問委員会の設置は一般的になりつつあるといえる。


【マーサー役員報酬サーベイ(MERG)について】
マーサー役員報酬サーベイ(MERG)は、ヨーロッパで 500社以上の参加企業を持つ20年以上の実績のある調査で、日本でも2013年に開始している。役員報酬に関するデータを網羅的に提供し、グローバル統一で設定されている項目に加え、日本独自の質問項目(任意の諮問委員会の設置状況、役員退職慰労金の廃止・維持状況等)も設けているだけでなく、「役位」 ベースでの比較に加えて、「役割の大きさ」を反映したグローバル共通のジョブサイズ(PC: Position Class)を用いた比較も可能であり、日本を拠点としたグローバル経営における報酬マネジメントに対応している。2015年は過去最多の182社の参加があり、参加企業は前年から60社増加した。

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