第4回全国イノベーション調査 速報(常用雇用者が10人以上の民間企業対象) 

2016年04月25日
文部科学省科学技術・学術政策研究所は、我が国の民間企業におけるイノベーション活動の状況や動向を調査するため、2002年度より民間企業を対象とした「全国イノベーション調査」を実施してきております。このたび、第4回調査(参照期間:2012年度から2014年度まで)を行いましたので、結果の速報をお知らせします。

調査の結果、我が国全体のイノベーション実現企業の割合は、前回調査(参照期間:2009年度から2011年度まで)の結果と比べて、大きな変化が見られないことを明らかにしました。しかしながら、プロダクト・イノベーションは、他の類型(プロセス、組織、マーケティング)のイノベーションに比べて実現企業の割合が低く、さらに、その割合は減少傾向にあります。我が国の産業競争力を維持するためには、今後、より多くの企業による新しい製品・サービスの導入が期待されます。

「全国イノベーション調査」は,OECD(経済協力開発機構)と Eurostat(欧州委員会統計庁)が合同で策定した国際標準(『オスロ・マニュアル』)に準拠した我が国の公式の統計調査(一般統計調査)である。質問項目は,欧州各国で実施されているイノベーション調査 (CIS: Community Innovation Survey) に対応しており,我が国を含む各国のデータに基づき,OECD が刊行している“OECD Science, Technology and Industry Scoreboard” 等において,調査結果の国際比較も公表されている。

「第 4 回全国イノベーション調査」では,常用雇用者が 10 人以上の民間企業(一部の産業を除く)を調査対象とした。企業産業分類と企業規模に基づく層化抽出法により,母集団 380,224 社から24,825 社を抽出して調査票を配布し,12,526 社からの回答が実現している(回答率 51%)。
 なお,本調査の報告書は,平成 28 年夏頃に公表予定である。

【調査結果】

1)イノベーション実現割合(2012 年度- 2014 年度)
 第 3 回調査と比べて,プロセス・イノベーション実現 1 企業の割合がわずかに増加している(製造業において 20% から 25% に増加している)ものの,全体として,イノベーション実現の割合に大きな変化は見られない。しかし,プロダクト・イノベーション実現 2 企業の割合は,プロセス・イノベーション実現,組織イノベーション実現 3 及びマーケティング・イノベーション実現 4 企業の割合よりも低い。さらに,プロダクト・イノベーション実現企業の割合は,第 3 回調査と比べて,14% から 12% へ減少している。

2)プロダクト・イノベーション実現:企業規模別・産業別
 プロダクト・イノベーション実現の種類として,全体では,「新しい又は大幅に改善した製品の導入」企業の割合は 10% であり,「新しい又は大幅に改善したサービスの導入」企業の割合は 6%であった。「新しい又は大幅に改善した製品の導入」企業の割合は,産業別では,製造業 (17%) 及び情報通信業 (17%) において高く,情報通信業では「新しい又は大幅に改善したサービスの導入」企業の割合 (17%) も高い。

3)プロセス・イノベーション実現:企業規模別・産業別
 プロセス・イノベーション実現の種類として,全体では,「新しい又は大幅に改善した生産工程の導入」企業の割合 (9%) が最も高く,産業別では,製造業 (19%) における割合が高い。次に,全体の 8% の企業が「生産工程・配送方法等を支援する新しい又は大幅に改善した活動の導入」を行っており,産業別では,製造業 (11%) 及び卸売業 (11%) のほか,情報通信業 (10%) における割合が高かった。

4)組織イノベーション実現:企業規模別・産業別
組織イノベーション実現の種類として,全体では,「職場組織に関する新しい方法の導入」企業の割合 (19%) が最も高く,産業別では,金融業・保険業 (32%) 及び情報通信業 (29%) における割合が高かった。また,「新しい業務慣行の導入」についても,金融業・保険業 (24%) 及び情報通信業 (21%) における割合が高かった。さらに,「対外関係に関する新しい方法の導入」は,情報通信業 (18%) に次いで,金融業・保険業 (15%) における割合が高かった。

5)マーケティング・イノベーション実現:企業規模別・産業別
マーケティング・イノベーション実現の種類として,全体では,「新しい販売経路の導入」を行った企業の割合 (12%) が最も高く,産業別では,農業・林業 (20%) 及び卸売業 (20%) のほか,情報通信業 (19%) における割合が高かった。また,全体のうち 11% の企業が「新しい販売促進のための媒体・手法の導入」を行っており,産業別では,金融業・保険業 (20%) 及び情報通信業 (17%)のほか,小売業 (16%) における割合が高かった。

6)イノベーション実現を阻害する重大な要因又はイノベーション活動非実施の理由:企業規模別・産業別 
イノベーション実現企業においてそのイノベーション実現を阻害する重大な要因(決定的に阻害する要因)として,「能力のある従業者の不足」であるとする企業の割合 (14%) が最も高く,産業別では,農業・林業,情報通信業及び運輸業・郵便業(いずれも 17%)のほか,漁業 (15%) 及びその他サービス業 (15%) において割合が高かった。「内部資金の不足」は,特に,小規模企業における割合が高く (11%),産業別では,農業・林業 (15%) における割合が最も高かった。
また,「目先の売上・利益の追求」(11%) 及び「良いアイデアの不足」(9%) であるとする企業の割合も高く,これらを重大な阻害要因とする企業の割合は,企業規模間に差がほとんどなかった。
産業別では,この 2 つの要因のどちらも,情報通信業において,該当する企業の割合 (19%, 14%)が最も高かった。

7)プロダクト及びプロセス・イノベーションのための活動:企業規模別・産業別
 プロダクト及びプロセス・イノベーションのための活動(以下,「イノベーション活動」という。)として,「研究開発の実施」を行った企業の割合 (10%) が高く,産業別では,製造業における割合(21%) が最も高い。他方,「先進的な IT サービスの新たな利用」を行った企業の割合は,他の活動に比べて相対的に高くはない。しかし,情報通信業及び金融・保険業では,それぞれ 11%,9% の企業が「先進的な IT サービスの新たな利用」を行っており,これらの産業では,主要なイノベーション活動の一つとなっている。

8)プロダクト及びプロセス・イノベーション実現のための協力相手:企業規模別・産業別
 「サプライヤー」が協力相手であったとする企業の割合は,いずれの企業規模階級及び産業においても最も高い。また,「大学等の高等教育機関」は,「クライアント・顧客」や「コンサルタント等」と同じく,主要な協力相手とされており,9% の大規模企業が「大学等の高等教育機関」を協力相
手としている。

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[科学技術・学術政策研究所]
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