日本企業の統合報告書に関する調査2015(「自己表明型統合レポート」を発行している国内の企業205社) 

2016年04月13日
KPMGジャパン 統合報告アドバイザリーグループでは、「日本企業の統合報告書に関する調査2015」の結果をとりまとめました。

統合報告書を作成する企業はここ数年増加の一途をたどっています。これは、複雑化するビジネス環境において、中長期的な価値向上のためには、1)財務的なコミットメント 2)外部に対する説明と積極的な対話、が企業の財務的価値と社会的な価値の両方の実現に影響を与えるという認識を示していると考えられます。

本調査については、統合報告書の定義については未だ広く合意されたものがないため、昨年に引き続き「自己表明型統合レポート」を発行している国内の企業計205社の報告書を対象に調査・分析し、まとめています。今回の調査では、2014年に行った第1回目の調査と比較するとすべての要素に結合した戦略的な統合報告の本質の実現に向けた変化が見られました。

【調査結果】

■グローバルに向けて増加する報告書発行企業

2015年の統合報告書発行数は前年から比べて65社増の205社となり、特に東証一部上場企業が61社増となっています。業種では電気機器が6社増の23社と最も多くなっています。売上高一兆円を超える企業の43%、また、日経225構成銘柄の38%が統合報告書を発行している点からも、全体的に事業規模が大きく、株主構成等も含めてグローバル化が進む企業において報告書発行の動きが特に活発であるといえます。

ページ数については半数以上の企業が簡潔性を意識して60ページ以内で報告書を発行しています。また、205社中182社が日本語版に加えて英語版も発行するなど、利用者への訴求を意識したコミュニケーションツールとして活用していることが伺えます。

■価値創造や戦略説明の鍵となるビジネスモデルの開示企業は44%に留まる


ビジネスモデルについて開示している企業は91社(44%)にとどまっています。そのうち、多様な資本との関係性の説明があるものに絞ると52社であり、昨年の24社と比較して増加はしていますが、これは統合報告書が求める短期、中期、長期の価値創造の説明のための根幹となる要素であるため、今後、さらなる検討と開示への取組が進むと予想されます。

■社外取締役に比べ、社内取締役の選任理由について開示している企業はまだ少ない

ガバナンスの実効性を評価する一つの要素として、取締役会の構成員の選任理由は重要とされていますが、社外取締役のスキルや選任理由を開示している企業が55%なのに比べ、社内取締役のスキルや選任理由を開示している企業は、経歴のみの開示を含めても31%にとどまっています。多様化する経営課題に適切に対処できる取締役会の構成が求められており、今後、より投資家等の意思決定に資する情報の開示を拡充していく点からも課題と考えられます。

■マテリアリティの結果の開示はわずか15%にとどまる

価値実現に大きな影響を及ぼす要因を示すことは、統合報告書に期待される大きなポイントの一つです。マテリアリティに関する検討は、統合報告の根幹をなすものであり、組織内における様々な意思決定や、投資家との対話の深化に資するものです。しかしながら、マテリアリティに関する開示がなされている報告書は、サステナビリティ課題に関するマテリアリティを含めても、全体のわずか15%となっています。議論の成熟と、検討に向けた努力の必要性が高いと考えられます。

■リスクに関する独立したセクションを設けて開示を行っている企業は52%に留まる

監査法人3社を除く対象企業202社のうち、独立のセクションを設けてリスク情報を開示している企業は全体の52%である105社と、約半数の企業に留まりました。統合報告書に期待されている開示は、リスクと機会の開示であることを考えると、開示内容の充実がより期待されるセクションだといえます。

■開示されている重要な指標(Key Performance Indicators。以下、KPI)のうち、非財務に関するものはわずか27%

97%もの開示企業が、KPIをハイライト情報として、まとめて記載していますが、これを6つの資本(財務、製造、知的、人的、社会関係および自然資本)と関連づけた結果、財務におけるKPIが73%を占めた一方で、それ以外の非財務の開示はわずか27%という結果となっています。人的資本や知的資本等の非財務的な要素がこれまで以上に重要視されている中、開示されるKPIの質・量ともに改善の余地が大きいことがわかりました。


【調査概要】
調査期間:2015年10月~2016年2月
対象企業:「自己表明型統合レポート」を発行している国内の企業205社
調査協力:
企業価値レポーティングラボ
青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 北川哲雄教授主宰「ヘルスケア産業研究」履修生(医薬品関連企業調査に関して)

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