「健康経営」への取り組み状況調査(経団連会員企業対象) 

2015年11月09日
経団連は、健康経営への取り組みは、従業員個人の生活の質の向上のみならず、企業活力を高めるうえでも極めて重要との考えから、本年度の事業方針において、健康経営の普及・啓発に取り組む旨を掲げたところ。この一環として、今般、経団連会員企業の健康経営に関する取り組み状況を調査するとともに、各社の具体的な取り組み内容を事例集として取りまとめた。

※ 本アンケートでは、「健康経営」を「従業員の健康増進を経営課題として捉え、従業員の健康維持・増進に積極的に取り組むこと」とし、法定された職場の健康管理(従業員の定期健康診断等)以外の積極的な活動について調査

【調査概要】
回答企業数:209 社(事例提供 94 社)
実施時期:2015 年 7 月~9 月

【調査結果概要】

1.健康経営の取り組み状況および目的
健康経営に取り組んでいると回答した企業 206 社(調査回答企業の 98.5%)に、その目的を質問したところ「業務効率化・労働生産性の向上」(169 社・82.0%)「経営上のリスク管理」(153 社・74.3%)「従業員満足度の向上」(116 社・56.3%)が上位であった。
「企業イメージ向上」のような外部からの評価よりも、健康な状態で仕事にあたることで業務効率化や生産性向上を期待していること、また安全配慮義務の履行など経営上のリスク管理を重視する傾向がみられた。

2.健康経営施策の取組内容
具体的な取組内容について、「専門職(産業医・産業保健スタッフなど)との連携体制を整備」(186 社・90.3%)「健保組合等の保健事業への協力」(166 社・80.6%)など、産業保健の実務に携わる専門職や健康保険組合との連携が上位となった。続いて、「健康保持・増進に資する情報を従業員へ提供」(157 社・76.2%)、相談窓口の充実や社員食堂の刷新等の「就労環境の改善」(155 社・75.2%)などの取り組みが多くみられた。
さらに、「従業員の健康保持・増進に向けた課題把握・分析」(142 社・68.9%)「従業員の健康保持・増進にかかわる施策の評価指標の設定・効果検証」(127社・61.7%)など、課題把握やデータ分析にかかわる取り組みが 6 割を超えた。

3.健康経営の評価指標
健康経営への評価指標について、「従業員の健康保持・増進にかかわる施策の評価指標の設定・効果検証」を行っていると回答した企業に質問したところ、「定期健康診断の受診率」(116 社・91.3%)、「総労働時間数・残業時間数」(92社・72.4%)「定期健康診断の有所見率」(87 社・68.5%)といった評価指標が上位となった。
定期健康診断や労働時間数など、健康管理・労務管理の基礎データをベースに取り組む企業が多数を占めるが、「従業員の健康状態の改善率」(70 社・55.1%)など、効果検証を行っている企業の半数以上で、BMI、血圧、脂質代謝等の数値を抽出して従業員の傾向や改善度のデータ分析を行っていることがわかった。
なお、「その他」の自由記述では、「有所見者への受診勧奨に基づく病院受診率」など定期健診後や受診勧奨後の対応に関する指標や、「メンタルヘルス不調による長期欠勤者および休職者人数」など、メンタルヘルスに特化した指標を挙げる企業が複数あった。

4.保険者との連携
健康保険組合との連携状況について、「従業員の健康保持・増進に向けた協働体制を確立し課題を共有」(128 社・62.1%)する企業が 6 割を超えたほか、全体の半数を超える企業で、「従業員の健康保持・増進に向けた計画作成と定期的な進捗確認」など、保険者と連携した取り組み(コラボヘルス)が進みつつあるとみられる。

5.今後の課題
健康経営に取り組むうえでの課題として、約 9 割の企業が「従業員の関心・取り組み意欲の向上」(185 社・89.8%)を挙げている。一方、健康経営施策の取組内容(p3)を見ると、「従業員の健康意識を高めるインセンティブ施策の実施」は 66 社(32.0%)と相対的に低位であり、各企業で従業員個々人の取り組み意欲を向上させる工夫が求められる。また、現在、政府は、個々人が健康増進に取り組むことを企図したインセンティブ措置(ヘルスケアポイントの付与や保険料軽減等)を検討しつつあるが、「健康増進活動へのインセンティブ措置にかかわるガイドラインの早期策定」は 43 社(20.9%)と政府の施策に関する認知度も低い。政府においても推進策の検討・周知が期待される。
この他、健康経営に取り組む上での課題として、「取り組み推進にかかわる連携体制の整備や役割分担」が 112 社(54.4%)と全体の半数超が課題として挙げている。専門職や保険者との連携は進む一方で、社内全体の体制づくりや部署間連携、職場・ラインの協力等が課題となっていると考えられる。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[日本経済団体連合会]
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