第3回 生活者1万人アンケート調査(金融編) 

2016年12月15日
野村総合研究所(NRI)は、2016年の8~9月に、全国の18歳~79歳の男女約1万人(有効回答10,070名)を対象として、訪問留置法で金融意識や金融行動を尋ねる「NRI生活者1万人アンケート調査(金融編)」(以下「本調査」)を実施しました。本調査は、2010年、2013年に続き、今回で3回目の調査となります。

【主な調査結果】

● ポイントでの支払い、電子マネー、ネットバンキングの利用率が高まる

● FinTechサービスの多くは、関心度が1割未満

● FinTechサービス普及の鍵は、生活者の不安や操作の煩わしさの払拭

● 金融リテラシーの向上が新しい金融サービスやFinTechサービスの普及・促進の鍵に


■ ポイントでの支払い、電子マネー、ネットバンキングの利用率が高まる
本調査では、概ね2000年以降に普及が始まった「新しい金融サービス」について、その利用率の変化を捉えています。
2013年から2016年にかけての変化を見ると、「ポイント(での支払い)」が21%から40%へと大幅に増加したほか、「電子マネー」が18%から29%、「ネットバンキング」が18%から21%に増加しています(図1)。貯まったポイントを、コンビニやスーパーマーケットなどでの買い物の支払いに使う「ポイント(での支払い)」や、ICカードなどに搭載された「電子マネー」のように、生活に身近な新しい決済サービスの普及が急速に進んでいます。
それに対して、「コンビニATM」は、利用率が4割近くと普及が進んでいますが、その上昇率は頭打ちになっています。また、「ダイレクト自動車保険」、「オンライントレード」、「デビットカード」、「ネット生保」は、利用率が1割未満にとどまり、変化も微増もしくは横ばいです。新しい金融サービスの普及に関しては、サービスによって明暗が分かれました。

■ FinTechサービスの多くは、関心度が1割未満
「FinTech(フィンテック)」とは「Finance(ファイナンス)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語であり、情報技術を活用した今後の新しい金融サービスを表すものとして、近年注目を集めています。
本調査で主なFinTechサービスへの関心度を確認したところ、上位2項目の関心度は、「家計簿アプリ」が29%、「車載機器で取得される運転情報に応じた保険料設定の自動車保険(以下、テレマティクス保険)」が12%でした(図2)。それ以外のFinTechサービスについては、関心度が10%未満にとどまっています。

■ FinTechサービス普及の鍵は、生活者の不安や操作の煩わしさの払拭
本調査で対象としたFinTechサービスのうち、最も関心度の高かった家計簿アプリについて、図3に示す7つのイメージの有無を聞いたところ、「あてはまるものはない」と回答した割合は37%でした。また、ロボ・アドバイザー・サービスについて、図4に示す10のイメージのいずれにも「あてはまるものはない」と回答した割合は58%でした。すなわち、主なFinTechサービスに関しては、まだ何の印象も持っていない人が多く、サービス内容等についての認知度向上が、最優先の課題であることがわかります。
次に、家計簿アプリに対して何らかのイメージを持っている人を対象に集計すると、肯定的な印象だけでなく、否定的な印象も一定割合を占めています。具体的には、「アプリやソフトの使用は面倒だ」(36%)、「データの消失や流出が心配だ」(31%)となっており、操作の煩わしさや、利用にまつわる不安という心理的なハードルが存在していると見られます(図3)。
同様に、ロボ・アドバイザー・サービスに対しても、否定的な印象として「自分の意向を十分に反映してくれるか不安」(34%)、「温かみがなさそう」(28%)、「営業・窓口担当者からのアドバイスの方が信頼できそう」(25%)を挙げる人がいます(図4)。
FinTechサービスの普及に向けては、認知度向上だけでなく、新しいサービスに対する生活者の心理的な障害を取り除くことが鍵になると考えられます。

■ 金融リテラシーの向上が新しい金融サービスやFinTechサービスの普及・促進の鍵に
本調査では、「複利」、「インフレ」、「リスク・リターン」、「分散投資」など、金融に関する知識や情報を正しく理解し、自らが主体的に判断することのできる能力(金融リテラシー)についても尋ねています。
それらの設問への正答率(金融リテラシーの高さ)と、新しい金融サービスの利用率およびFinTechサービスへの関心度には、強い関係が見られます。例えば、金融リテラシーが高くなるほど、ネットバンキングや電子マネーなど新しい金融サービスの利用率が高まります(図5)。この傾向が見られなかったのは、コンビニATMとネット生保だけでした。
同様に、金融リテラシーが高くなるほど、家計簿アプリやロボ・アドバイザー・サービスなどFinTechサービスへの関心度が高まります(図6)。この傾向は、質問の対象とした全てのFinTechサービスで見られました。
金融リテラシーを高めることは、時間のかかる取り組みですが、それによって、新しい金融サービスの利用率やFinTechサービスへの関心度が高まることが期待されます。


【ご参考】
■ 「NRI生活者1万人調査(金融編)」の実施概要
【対象および回収サンプル数】
全国の18歳から79歳の男女(2010年調査:10,511人、2013年調査:10,073人、2016年調査:10,070人)(2010年調査は、2009年3月の住民基本台帳を基に層化二段無作為法で調査地点を抽出。2013年調査および2016年調査は、2010年の国勢調査を基に層化二段無作為法で調査地点を抽出。)
【調査方法】
訪問留置調査(調査員の訪問による調査票の配布・回収)
【実施時期】
・2010年調査:2010年11月~12月
・2013年調査:2013年8月~9月
・2016年調査:2016年8月~9月

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