中小企業の経営課題に関するアンケート調査 

2017年03月07日
東京商工会議所は、中小企業委員会において、中小企業の経営課題に関するアンケート調査結果を取りまとめましたのでお知らせします。
本調査は、中小企業が抱える経営課題を、「売上」「事業コスト」「経営資源」の視点から検証したものです。また、中小企業経営者の高齢化に伴い「事業承継」が喫緊の課題となっていることから、事業承継の現状と課題について併せて調査しました。

【調査結果概要】

○収益状況について
・回答企業の 57.9%が「黒字」であり、「収支トントン」(28.2%)、「赤字」(13.9%)となっているものの、規模や業種によって大きな差がみられる。
・「輸入を行っている」(67.0%)や、「輸出を行っている」(66.1%)など海外との取引を行っている企業では黒字の割合が高く、海外需要の取り込みや海外での生産などが企業収益に好影響をもたらしていると思われる。
・来期の見通しについては、直近と比較して、「赤字」(▲8.0 ポイント)が減少し、「収支トントン」(+9.4 ポイント)の割合が増加している。

○海外との取引状況について
・「海外との取引を行っている」企業が 35.2%、「海外との取引は行っていない」企業が 64.8%となっている。特に[卸売業]では、64.4%が海外との取引を行っており、輸入(47.3%)や輸出(36.1%)を行っている企業の割合が他の業種に比べて高くなっている。

○今後(3~5年後)の事業の見通しについて
・今後の業界の中期展望については、「横ばい」(50.9%)が最も多く、「拡大見込」(21.4%)、「縮小見込」(21.0%)となっている。業種別にみると、「拡大見込」については、[建設業](29.4%)、[サービス業](24.6%)で高くなっている。
・今後の業界の競争環境については、約半数の企業が「激化する」(47.1%)と回答し、先行きの競争環境は厳しい見通しとなっている。
・会社毎の事業方針については、「現状維持」が 49.1%と最も多くなっている。一方、41.8%は「拡大」と回答しており、新たな事業展開への高い意欲がうかがえる。

○1年前と比べた売上の状況について
・売上高を1年前と比較すると、37.3%の企業が「増加」と回答している。ただし売上高を「量」と「単価」に分解すると、「量」の「増加」が 36.5%に対し、「単価」の「上昇」は 17.8%にとどまり、売上高の増加は、「量」の増加によるものと思われる。

○売上拡大に向けた取り組み
・「顧客ニーズに対するきめ細やかな対応」(55.3%)が最も高く、次いで、「営業・販売体制の見直し・強化」(53.3%) 「既存製品・サービスの高付加価値化」(51.3%)となっている。「価格競争力の強化」は 25.3%にとどまり、価格よりも製品やサービス内容を主体とした売上拡大策を検討している企業が多いことがうかがえる。
・売上拡大に取組む上での課題については、73.8%の企業が「人材の不足」を挙げており、特に[建設業]では 87.7%が回答するなど、大きな足枷になっている。

○売上拡大を阻害している外部環境について
・「価格競争の激化」(52.9%)が最も高く、次いで「市場ニーズの変化・多様化」(41.9%)、「消費者の低価格志向」(27.7%)となっている。
・[建設業]では「採用環境の悪化」(34.0%)が、[卸売業]では「取引先の業績悪化、廃業」(30.1%)が、[小売業]では「消費者の低価格志向」(48.8%)や「消費マインドの低下」(37.8%)が他の業種に比べて高くなっている。

○事業コスト(人件費、商品仕入単価・原材料費、燃料・水道光熱費等)について
・事業コストについて、「人件費」は「上昇」が 64.4%、「商品仕入単価・原材料費」は「上昇」が50.9%、「燃料・水道光熱費」は「不変」が 58.0%となった。事業コストの上昇は人手不足に起因する防衛的賃上げによる人件費の上昇や為替の変動などが主な要因と思われる。
※一年前の為替(1 ドル=118 円:2016 年 1 月)と今回の調査時点の為替(1 ドル=112~117 円:2017 年1 月 5~25 日)の差異は小さいが、昨年は世界経済の動向を背景とする為替の乱高下が見られた。
・事業コストが上昇した分の商品・サービス価格への転嫁については、「全く転嫁できていない」「一部しか転嫁できていない」を合わせると約9割が上昇した事業コストを十分に転嫁できていない。

○経営資源について~人員の過不足状況~
・人員の過不足状況については、57.4%が「不足」と回答している。
・前述の「売上の拡大に取り組む上での課題」と同様、[21~300 人]の方が[0~20 人]より不足感が強く、業種別では[建設業]での不足感が特に強い。

○経営資源について~今後1年間の借入意向~
・今後一年間の借入意向については、「ある」が 51.8%、「ない」が 48.2%となっている。
・借入の資金使途については、「通常の運転資金」(66.4%)が最も高く、次いで「売上(受注)増に伴う増加運転資金」(30.4%)、「新規設備投資に係わる資金」(23.3%)となっている。
・借入意向のない理由については、「十分な手元資金がある」(47.6%)、「資金需要がない」(31.0%)、「直近で資金調達を行った」(24.2%)となっている。

○経営資源について~設備投資~
・2016 年に設備投資を「実施した」企業は 50.1%に対し、2017 年は 53.4%が「実施予定」となっており、設備投資は横ばいで推移する見込み。
・2016 年の設備投資に際し利用した補助金・税制については、「設備投資減税」の件数が最も多く、次いで「ものづくり補助金」が続いた。
・2017 年の設備投資予定については「機械設備(製造設備)」が最も多く、「パソコン・レジスター」などが続いている。

○支援策について
・「人材確保への支援」(52.8%)が最も高く、次いで「資金繰り支援」(42.9%)、「人材育成への支援」(39.2%)となっている。
・施策情報の入手方法については、商工会議所からの入手が 6 割となっているほか、新聞・インターネット、顧問税理士など身近な先から入手している事業者が多い。

○事業承継について
・事業承継ガイドラインの認知度は名称の認知度に限っても 5 割に留まっており、周知促進が必要である。
・次世代への事業方針については全体の 9 割が継続する意向であるが、会社形態別に見ると個人事業主の 5 割弱は廃業を検討している。
・事業を継続する意向の企業では、今後 10 年以内に事業承継を考えている企業が 6 割を超えている。しかしながら、後継者の検討状況として 3 割の企業が「日々の経営を優先し、具体的な検討には至っていない」と回答しており、事業承継の早期着手が必要である。
・想定している後継者候補としては「息子・娘」が 45.1%と最も高く、次いで親族外承継となる「従業員」が 30.2%と続き、事業承継スタイルの変化がうかがえる。
・事業承継の準備・対策を行う上での課題としては、「後継者の教育」「事業の磨き上げ」「社内体制の見直し」が上位となっているが、後継者候補別にみると、親族内(息子・娘)では、「後継者への株式・事業用資産の譲渡(相続)・税制」が 3 番目となるなど、後継者候補によって一部課題の違いも見られる。
・自分の代での廃業を検討している理由としては「後継者がいないため」が 41.4%と最も高く、次いで「当初から自分一代でやめる考え」(35.0%)となっている。


【調査概要】
・調査目的:東京商工会議所 中小企業委員会は、会員企業の経営実態に即した支援策の実現を目指し、例年、「中小企業施策に関する要望」を国、東京都をはじめ、関係各方面に提出している。
本調査は、中小企業が抱える経営課題等を広く聴取し、要望事項の取りまとめに供するため会員中小企業・小規模事業者を対象に行ったもの。
・調査対象:
 中小企業・小規模事業者 8,865社
 回答数 1,458社(うち、従業員数20人以下806社、55.2%)
 回収率 16.4%
・調査期間:2017年1月5日(木)~1月25日(水)
・調査方法:
 郵送による調査票の送付、FAX・メール・WEBによる回答
 メール・WEBによる調査の配信、WEBによる回答

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[東京商工会議所]
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