2017年の旅行動向見通し 

2016年12月20日
JTB は、2017 年の旅行市場についての見通し調査の結果をまとめました。この調査は、1 泊以上の日本人の旅行(ビジネス・帰省を含む)と訪日外国人について、各種経済動向予測、旅行消費者購買行動調査、観光関連動向、および 11 月 2 日~14 日に実施した 1,200 人へのアンケート等から推計したもので、1981 年の調査開始以来 37 回目となります。
推計した 2017 年の旅行市場規模は次の通りです。

<2017年見通し数値>

総旅行人数(延べ人数) 3 億 1,500 万人 +0.4%
 国内旅行人数 2 億 9,800 万人 +0.4%
 海外旅行人数 1,700 万人 ±0.0%

平均消費額
 国内旅行平均消費額 34,920 円 +0.3%
 海外旅行平均消費額 247,200 円 +3.8%

旅行総消費額 14 兆 6,100 億円 +1.6%
 国内旅行消費額 10 兆 4,100 億円 +0.8%
 海外旅行消費額 4 兆 2,000 億円 +3.7%

平均旅行回数 2.52 回 +0.01

訪日外国人旅行者数 2,700 万人 +12.0%

*国内旅行消費額は、自宅を出発してから帰宅するまでの総費用。現地での買物代、食事代等現地消費分を含む。旅行前後の消費(衣類など携行品の購入費用など)は含まない。
*海外旅行消費額は、旅行費用(燃油サーチャージ含む)のほか現地での買物代、食事代等現地消費分を含む。旅行前後の消費(衣類など携行品の購入費用など)は含まない。
*訪日旅行は、人数予測のみで消費額は算出していない。
*海外旅行人数実績推計は、法務省発表の出入国者数実績をもとに昨年末推計値を修正したもの。

<2017年の環境>

1.景気は緩やかに回復するも、先行きは不透明。

最近の景気動向を見てみると、12 月の日銀短観では、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業で+10 となり、前回の9月調査(+6)から6四半期ぶりに改善しています。株価は米大統領選以降、現在まで上昇傾向にあり、為替は、昨年末よりは円高ではあるものの、9 月に一時対ドル 101 円と円高になった後は円安に転じています(図 1、表 1)。今後、株価上昇や米国の金利引き上げにより円安が続くとすれば、輸出企業の業績も堅調に推移すると思われますが、2017 年 1 月以降の米国大統領就任後の米国経済の行方や、フランスやドイツといった欧州の国々で予定されている選挙の影響を考慮すると、引き続き海外情勢への注視が必要です。
一方、生活者の消費心理を考えると、円安や原油値上げによる物価上昇への懸念や、高齢化による医療や介護費用の負担増、将来の年金に対する不安などから、足元の企業業績の良化がすぐ消費に結びつくとは考えにくい一面があります。JTB が 11 月上旬に実施した消費者アンケートにおける、「現在の生活についてあてはまるもの」をみると、全体では「普段の生活費も趣味費用等も節約」の割合が 29.1%と多くなりました。一方、「特に節約しない」は 2 番目に多く 15.7%ありました(図 2)。

2.旅行意欲は堅調も、支出については節約傾向。

前述のアンケートで、今後一年間の旅行についての項目を見てみると、前年に比べ、「旅行の支出を増やしたい」が増加、「減らしたい」が減少となりました(表 2)。国内旅行と海外旅行の回数については、「現状維持」が最多ですが、国内旅行が「増える」は、13.5%で前年より 0.8 ポイント減少、海外旅行が「増える」は5.7%で前年より0.4ポイント増加しています(表3)。全般に、節約志向ではあるものの、旅行への意欲はある程度維持されていると考えられます。

3.ゴールデンウィークの日並びがよく、3 連休は昨年より 1 回増加。
2 月から導入予定のプレミアムフライデーにも注目。


2017 年の連休の日並びに関しては、GW・正月を除く週末の 3 連休が 7 回と 2016 年より 1 回多くなります。GW は 5 月 1 日(月)、2 日(火)を休めば 9 連休となり、8 月は昨年制定された 8 月 11 日の山の日が金曜日となることで 3 連休になります。もともと会社が夏休みである人も少なくありませんが、3 連休の前後と合わせて夏季休暇を取る人も多いと予想されます。一方、9 月は 18 日の敬老の日を含む 3 連休が 1回で 23 日の秋分の日が土曜日に重なり、9 月に長期休暇を取る動きは少なくなりそうです。また、政府や経団連が 2 月からの導入を進めている消費喚起策「プレミアムフライデー※」にも注目です。
※月末の金曜日の午後 3 時をめどに退庁、退社することを促し買い物や旅行などに充てる構想

アンケートで「旅行についての考え方」を聞いたところ、「食が一番の目的になる旅をしたい」が 39.1%、「訪れた地域でしか体験できないことを目的に旅行したい」が 32.7%となりました。また、「世界や日本の絶景などの露出が増え以前より旅行に行きたくなった」は 18.8%、「国内旅行で行く地域は決まっている」は18.2%、「海外情勢が不安定でも地域を選んで海外旅行はしたい」も 12.8%あり、目的をもって自分の好きな地域でその土地ならではの体験を楽しむ旅行をしたいと考えている人が多いと思われます(図 3)。

<2017年の見通し>

(国内旅行) *訪日外国人旅行者は除く、日本居住者の国内旅行
国内旅行人数は 2 億 9,800 万人(前年比+0.4%)、平均消費額は 34,920 円(前年比+0.3%)、国内旅行消費額は 10 兆 4,100 億円(前年比+0.8%)と推計

・名古屋に「レゴランド」オープン、レゴホテルも併設予定
 近年テーマパークは東西の 2 大パークを中心に売り上げを伸ばしていますが、名古屋の港地区に世界的に有名な玩具メーカー、レゴ社のレゴブロックをテーマにした「レゴランド」がオープン(4 月)します。レゴホテルも併設の予定です。同時期に大型商業施設「メーカーズピア」が近隣にオープンする予定で、物販、飲食の他に、ものづくり体験を楽しむことができます。名古屋市港地区には既に人気の「リニア・鉄道館」もあり、このエリアは新しい観光地として、県内外からの来訪とともに中部空港を利用するアジアを中心とした外国人旅行者の来訪も期待されます。

・2つの新たな寝台列車の登場で鉄道の旅が引き続き話題に
2017 年には新しいクルーズトレインが東西に登場します。5 月に JR 東日本の「トランスイート四季島」が、6 月に JR 西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」が運航を開始します。「四季島」は、年間を通じて運航するコースのほか、横須賀や鹿島神宮などをめぐる年末年始にかけてのツアー(2017 年末運行予定)など、季節の旬を楽しむツアーを予定し、「瑞風(みずかぜ)」は、1 日 1 回途中駅に立ち寄り、沿線の歴史・文化を楽しみ、非公開箇所の見学や隠れた名品の鑑賞等、特別な体験を提供する(予定)ようです。JR 九州の「ななつ星 in 九州」に始まった観光列車の人気ですが、日帰りで楽しめる豪華列車やテーマのある列車が揃い、乗ることが目的の鉄道の旅にさらなる話題が集まりそうです。

・新しいホテルの開業や古民家利用、グランピングなどの新しい宿泊形態にも注目
昨年相次いだ東京・丸の内の「星のや東京」や「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」など話題の高級ホテルの開業に続き、2017 年も都市部やリゾート地で新しいホテルの開業が予定されています(2017 年の年間予定参照)。また最近は、古民家で都会では味わえない田舎のぬくもりに触れたり、氷のホテルやツリーハウスなどユニークな体験を楽しむなど、様々な宿泊形態が登場しています。その一例が「グランピング」です。「グランピング」とは、グラマラス(glamorous)とキャンピング(camping)を掛け合わせた造語で、ホテルや宿泊施設が提供してくれるキャンプです。自らテントを張る必要もなく、気軽に贅沢なキャンプを楽しむことができ、キャンプに不慣れでも魅力を味わいながら贅沢なホテルで過ごす様な気分を味わえる新しい宿泊の形態として注目です。

(海外旅行)
海外旅行人数は 1,700 万人(前年比±0%)、平均消費額は 247,200 円(前年比+3.8%)、
海外旅行消費額は 4 兆 2,000 億円(前年比+3.7%)と推計


2016 年に入ってから円高が進み日本人の海外旅行者数は回復傾向にありましたが、最近、やや円安に転じていることから、海外旅行人数は、1,700 万人(前年比±0.0%)の前年並みと予測します。平均消費額は、原油の減産により昨年 0 円であった燃油サーチャージが 2 月から復活すること、前年比で円安となる可能性が大きいことから旅行の単価が上昇し、海外旅行総消費額予測は、前年比+3.7%、4 兆 2,000 億円と予測します。

・燃油サーチャージの復活
全日空と日本航空が 2017 年 2 月から燃油サーチャージを 10 カ月ぶりに復活させる方針です。2 月以降の金額の増減は不明ですが、2016 年 4 月以降、燃油サーチャージは 0 円であったことから、燃油サーチャージの復活は海外旅行者にとって、長距離の旅行を控えるといった心理的な影響もあると思われます。

・LCC は海外旅行においても旅行費用の節約を後押しする存在へ。新規就航も活発に。
LCC は、アジアを中心に国際線の路線も増え、安価な交通手段として定着しています。2017 年も、新規路線への就航が予定されています。ジェットスター・ジャパンが1月23日に東京(成田)~上海(浦東)に就航、ピーチ・アビエーションが 2 月 19 日に沖縄(那覇)~バンコクに就航予定です。
また、2 月 15 日から全日空が成田からメキシコシティへの直行便を就航します。

(訪日旅行)
訪日外国人旅行者数は 2,700 万人(前年比+12.0%)と推計


2017 年は、円安が続けば日本へ旅行をしやすい環境となりますが、中国やアジアの経済状況の変化により、旅行の動向にも影響します。そのため、伸び率は昨年より鈍化し、訪日外国人数は 2,700 万人(前年比+12.0%)と予測します。 2016 年 10 月までの日本へのクルーズ船寄港回数は 1,801 回で、前年同期比 1.38 倍となっています。クルーズ船は寄港地への経済効果が大きく、政府も受け入れ体制などの整備を進める考えであることから、中国を中心に 2017 年もクルーズ船による訪日は増加の見込みです。

・訪日外国人旅行者数の割合が高い中国人も、旅行経験の増加により旅行内容に変化が
訪日外国人旅行者の 28%を占める中国人の旅行者数は、伸率こそ減少しているものの、依然 2 ケタ増で推移し、日本人気は底堅いと言えます。一方、今年 4 月以降、中国政府による海外購入品に課す関税引き上げの影響で、訪日中国人の買い物代が大きく減少しました。越境ECの利用による中国国内で海外製品を買う動きも進んでいます。
JTB 総合研究所が、10 月に中国の内陸部と沿岸部で実施した調査で「日本でしてみたいこと」について聞いたところ、訪日経験や居住地によって、してみたいことも違うことがわかりました(図 5)。これから日本に旅行しようと考えている中国人は、単なる買い物目的ではなく、日本をより知りたいと関心を持っている人たちです。単に日本で人気の日用品を単品購入するだけであれば、越境 EC になり変わる可能性が十分あります。百貨店の化粧品売り場で日本式のメークをしてもらい日本の化粧品を買うことを演出したり、果物や工芸品の産地を訪れモノ作りの現場も見てもらったり、モノと地域をつなげ買うだけの価値から訪れる価値への転換ができれば、これからも日本を訪れる中国人は増加するでしょう。
このことは、今後、リピーターが増加する訪日外国人旅行者全体にも言うことができます。また、日本人の国内旅行の魅力再発見にもつながります。

<2016年の推計>


(国内旅行)
国内旅行人数は 2 億 9,680 万人(前年比+1.8%)
平均消費額は 34,810 円(前年比▲1.2%)と推計

観光庁の宿泊旅行統計調査では、日本人の延べ宿泊者数は、1 月~10 月の累計で前年比 96.9%となっています。一方で、航空旅客数や鉄道旅客数はプラス基調にあります。こうした状況から、2016 年の国内旅行人数は、前年比+1.8%の 2 億 9,680 万人程度、平均消費額は前年比▲1.2%の 34,810 円程度になると推計します。

(海外旅行)
海外旅行人数は 1,700 万人(前年比+4.8%)
平均消費額は 238,200 円(前年比▲4.6%)と推計

2016 年は、2015 年より円高傾向であったこと、4 月に燃油サーチャージが 0 円となり、LCC の路線の増加など海外旅行を後押しする要因が多かったことから、海外旅行人数は増加し、1,700 万人程度になる見込みです。一方、平均消費額は、238,200 円程度(前年比▲4.6%)になると推計します。

(訪日旅行)
訪日外国人旅行者数は、2,410 万人(前年比+22.1%)と推計

2016 年は、訪日外国人旅行者数の年間累計が、10 月時点で 2,000 万人を突破しました。中国や
アジア各国の経済成長の鈍化や、2015 年より円高傾向となったことから、伸び率は前年より鈍化しました。一方、リピーターの増加による地域への訪問の増加や、中国での越境 EC の発達で買い物目的だけではない訪日が増えるなど、訪日外国人旅行者の状況は日々変化しています。2016 年の訪日外国人旅行者数は、2,410 万人程度(前年比+22.1%)になると推計します。


【調査概要】
<生活者アンケート調査方法>
調査地点: 全国 200 地点、各層に比例配分
調査実施期間: 2016 年 11 月 2 日~11 月 14 日
調査対象: 全国 15 歳以上 79 歳までの男女個人
サンプル数: 1,200 名(1 地点 6 名×200 地点)
調査方法: 専属調査員による個別訪問調査(100%回収)

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[JTB]
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