人手不足等への対応に関する調査(中小企業対象) 

2017年07月03日
日本商工会議所は、「人手不足等への対応に関する調査」を取りまとめました。
調査対象:中小企業 4,072社。

調査結果では、人員の過不足状況について、全体の6割以上の企業で「不足している」と回答しており、昨年度調査と比較して5ポイント不足の割合が上昇しました。業種別に見ると「宿泊・飲食業」「運輸業」「建設業」で人手不足感が強い結果となりました。

また、今年度は「同一労働同一賃金制度導入の影響」についても調査をしており、昨年示された同一労働同一賃金ガイドライン案について「ガイドライン案について知らなかった(知っていたが、内容は未確認を含む)」が最も多く4割を超え、より一層の周知や今後の相談窓口の整備が必要と考えられる結果となりました。

【調査結果】

Ⅰ人手不足への対応について

1.人員の過不足状況について(前年調査比較)

不足している 1,682社(1,336) 60.6%(55.6)
過不足はない 995社(955) 35.8%(39.7)
過剰である 63社(91) 2.3%(3.8)
無回答 36社(23) 1.3%(1.0)

・全体では、6割以上の企業が「不足している」と回答。
・昨年度調査よりも「不足している」と回答した割合が上昇(5ポイント)。調査を開始してから3ヵ年連続で人手不足感が強まっている。

<業種別集計>
・業種別では、宿泊・飲食業の不足感が昨年度調査同様最も高く、8割以上の企業が「不足している」と回答。
・他の業種においても昨年度調査を超える人手不足となっており、人手不足は深刻化している。
・一方、「介護・看護」については、昨年度調査と比較し人手不足感が若干和らいだ。

<従業員規模別集計>
・従業員規模101人以上の企業では「不足している」と回答した割合が7割を超える。
・一方、従業員規模5人以下の企業では、「過不足はない」と回答した割合の方が高く、従業員規模によって、過不足感に差が大きく出ている。

2.求める人材について【複数回答】

・求める人材は「即戦力となる中堅層、専門家」が最も多く、次いで「一定の経験を有した若手社員(第二新卒等)」となり、社内教育を必要とする新卒社員よりも経験を有する者を求める傾向となった。
・新規学卒者については、大学卒、院卒よりも高卒を求める割合が高い。
・管理職経験者を求める割合は2割に満たず、即戦力となる者および将来を担う新卒社員を求める結果となった。

<従業員規模別集計>
・求める人材を従業員規模別にみると全ての規模において「即戦力となる中堅層、専門家」「一定の経験を有した若手社員(第二新卒等)」が上位を占める。
・51人以上の企業では、「新規学卒者(大学卒、院卒)」の割合が50%を超え、一定の従業員規模の企業では、即戦力となる社員の他、新規学卒者へのニーズも高い結果となった。

3.人員が充足できない理由について【複数回答】

・人手が不足している企業において、人員が充足できない理由を聞いたところ「募集をしても応募が無かった」が6割を超え、最も多い結果となった。
・次いで「自社が求めていた人材ではなかった」、「内定を出し、入社したものの、定着しなかった」が続き、募集段階の課題もさることながら、入社後の定着に関する課題も明らかになった。

4.人員不足が企業経営に与える影響について
(1.で「不足している」と回答した企業のみ集計)

影響が出ている※1 404社  24.0%
影響が懸念される※2 752社  44.7%
影響は出ていない※3 489社  29.1%
無回答 37社 2.2%

※1 既に現実に受注を逃したり営業時間を短縮したりといった状況
※2 今後、受注を逃す懸念や営業時間の短縮などの影響が出る可能性有り
※3 不足しているが、事業活動への影響は今のところ無し

・人員不足が企業経営に与える影響については、「影響が懸念される(今後、受注を逃したり営業時間の短縮などの影響が出る可能性有り)」が最も多く、次いで「影響が出ている(既に現実に受注を逃したり営業時間を短縮したりといった状況)」となった。
4社に1社が「既に影響が出ている」状況で、今後の懸念も含めると約7割となり、引き続き注視が必要と考えられる。

5.数年後(3年程度)の人員の充足感の見通しについて
(1.で「不足している」と回答した企業のみ集計)

不足感が増す 670社 39.8%
現在と同程度の不足感が続く 874社 52.0%
不足感が和らぐ 111社 6.6%
無回答 27社 1.6%

・人手が不足している企業において、数年後(3年程度)の人員の充足感の見通しについて調査した結果、「現在と同程度の不足感が続く」が最も多くなった。
・一方、「不足感が増す」と回答した企業も約4割あることから、人手不足は今後、更に深刻化する可能性を示唆している。

(1.で「過不足はない」と回答した企業のみ集計)
不足感が増す 343社 34.5%
現在と同程度の状況 576社 57.9%
過剰感が増す 36社 3.6%
無回答 40社 4.0%

・人手の「過不足はない」企業において、数年後(3年程度)の人員の充足感の見通しについて調査した結果、「現在と同程度の状況」が最も多く、人手が不足している企業の回答結果と同様、しばらくは現状が続くと予想する企業が多い。
・しかし、人員の過不足はない(人手不足ではない)と感じている企業においても、今後は「不足感が増す」と回答した企業が3割以上存在しており、現状は人手不足ではないものの、今後については、人手不足になると予測している企業が一定数存在する。

6.介護との両立支援について

退職または休職した社員がいる 325社 11.7%
時短勤務を取得した社員がいる 180社 6.5%
該当なし 2,213社 79.7%
無回答 58社 2.1%

・介護を理由とした休職、時短勤務等に関しては「該当なし」が約8割と最も多かった。
・また、「時短勤務を取得した社員がいる」と回答した割合(6.5%)よりも「退職または休職した社員がいる」と回答した割合(11.7%)の方が高い。

7.外国人材の受け入れについて
①外国人材受け入れのニーズについて
ある(既に雇用している) 466社 16.8%
ある(今後雇用する予定) 176社 6.3%
ない 1,576社 56.8%
検討中 516社 18.6%
無回答 42社 1.5%

・外国人材の受け入れのニーズに関しては、「ない」と回答した割合が半数を超え、最も多かった。
・「ある(既に雇用している、今後雇用する予定)」と回答した割合は合計で約2割(23.1%)であり、中小企業における外国人材のニーズは高いとは言えないが、一方で、「検討中」(18.6%)と回答した割合を合計すると4割以上となることから、今後、人手不足がより深刻化する場合、外国人材のニーズが高まると予測できる。
・外国人材のニーズを人手不足との関係で検証すると、人手が不足している企業ほど、外国人材へのニーズが高く、相関関係があると判断できる。

②外国人材を受け入れる、受け入れたい理由について【複数回答】
(①で「ある(既に雇用している)」「ある(今後雇用する予定)」と回答した企業のみ集計)
・外国人材を受け入れる、受け入れたい理由については、「人手不足により、日本人の求人が充足できないため」と回答した割合が最も高く、翻ってみると、可能であれば日本人を雇用したいといったことが明らかになった。

③外国人材を受け入れたい分野・層について【複数回答】
(①で「ある(既に雇用している)」「ある(今後雇用する予定)」「検討中」と回答した企業のみ集計)
・外国人材を受け入れたい分野・層については、「非技術的分野(いわゆる単純労働)」が最も多く、次いで「一定の技術を有した専門職層」、「即戦力となるようなミドル層」と続いた。
・一方、「新規学卒者(外国人留学生)」については、他と比べてニーズは低く、非技術的分野(いわゆる単純労働)を除いた場合、本調査「2.求める人材」の結果と同じく、一定の経験を有する者を求める傾向となった。

④外国人材へのニーズがない理由について【複数回答】
(①で「ない」と回答した企業のみ集計)
・外国人材のニーズがない理由については、「日本人を求人したいため」、「言語等コミュニケーションに懸念があるため」が上位の項目となった。
・「ビザの取得等、雇用に係る事務負担が増えるため」、「処遇や人事管理の方法が分からないため」といった事務手続き等に関する理由は1割程度であり、外国人材へのニーズがない理由の多くは、そもそも必要性を感じていないことに起因するものと分析できる。

Ⅱ長時間労働是正に向けた取り組みについて

1.時間外労働の上限規制が与える影響について

影響が極めて大きい(事業継続が難しいレベル) 188社 6.8%
影響が有る(課題はあるが対応可能) 1,005社 36.2%
影響は無い(現行のまま、特に何も対応しなくてもよい) 1,373社 49.5%
わからない 151社 5.4%
無回答 59社 2.1%

・時間外労働の上限規制が企業経営に与える影響については、「影響はない(現行のまま、特に何も対応しなくてもよい)」と回答した割合が約半数(49.5%)と最も多かった。
・反面、「影響が極めて大きい(事業継続が難しいレベル)」、「影響が有る(課題はあるが対応可能)」と回答した割合の合計も約4割(43.0%)であり、2~3社に1社は影響があると推測される。

<従業員規模別集計>
・従業員規模別に時間外労働の上限規制が与える影響をみると、51人以上の企業では、「影響はない」と回答した割合よりも、「影響がある」と回答した割合の方が高くなる。

<業種別集計>
・業種別に時間外労働の上限規制が与える影響をみると、「運輸業」、「宿泊・飲食業」、「建設業」で「影響がある」と回答した割合が4割を超える。

2.長時間労働是正に向けて、国が取り組むべき、国に支援してほしいことについて

・長時間労働是正に向けて、国が取り組むべき、国に支援してほしいことについては、「人手不足の解消」が最も多く、次いで「長時間労働を生みかねない民間の商慣習・取引条件の是正」となった。
・「労働法・制度の規制強化(勤務間インターバル規制の一律導入などの厳格な規制導入、罰則・監督指導の強化等)」については、約7%と少なく、長時間労働是正に向けて、一律に法規制等を導入することについて、希望する社は少ない。

Ⅲ同一労働同一賃金制度導入の影響について

1.同一労働同一賃金ガイドライン案について

・同一労働同一賃金のガイドライン案については、「ガイドライン案について知らなかった(知っていたが、内容は未確認を含む)」が最も多く、より一層の周知が必要であると考えられる。
・また、内容に関しては、「分かりやすく実務の参考となった(現在の自社の労務管理が適切かどうか、判断できる)」と「分かりにくく実務の参考とならなかった(現在の自社の労務管理が適切かどうか、判断できない)」がほぼ同割合であり、ガイドライン案の内容を把握していても、参考になったか否かについて判断が分かれた。

(従業員規模別集計)
・同一労働同一賃金のガイドライン案について、従業員規模別に見ると、従業員100人以下の企業では「ガイドライン案について知らない」と回答した割合が最も高いが、従業員101人以上の企業では、「今後どのような影響が出るか不安」と回答した割合が最も高くなる。

2.ガイドライン案が参考にならなかった、今後不安に感じる理由について【複数回答】
(1で「分かりにくく実務の参考とならなかった」「今後どのような影響が出るか不安」と回答した企業のみ集計)

・ガイドライン案が参考にならなかった、今後不安に感じる理由について、「自社の賃金制度や就業規則をいつまでに、どのように変えていけばよいか分からない」、「グレーゾーン(裁判でしか判断できない部分)が広すぎる」が上位に挙がり、ガイドライン案のみでは、判断がつかないといった理由が主であった。
・また、「人件費が極めて大きく増加し、事業継続が難しくなる(現在の利益水準では到底コスト増に耐えられないので、正社員の処遇引き下げに踏み込むなど、かなり抜本的なコスト削減策を取らなければならない)」といった項目も次いで上位に挙がり、仮にガイドライン案のまま法規制が制定された場合、事業継続に深刻な影響が生じるといった理由も多い項目であった。


【調査概要】
調査地域:全国47都道府県
調査対象:中小企業 4,072社
調査期間:平成29年3月24日~4月28日
調査方法:各地商工会議所職員による訪問調査
回収商工会議所数:392商工会議所(回収率:76.1%)
回答企業数:2,776社(回答率:68.2%)

<回答企業の属性>
(業種)
建設業 433 社(15.6%) 製造業 992 社(35.7%) 情報通信・情報サービス業 69 社(2.5%)
運輸業 147 社(5.3%) 卸売・小売業 574 社(20.7%)介護・看護 50 社(1.8%)
金融・保険・不動産業 60 社(2.2%) 宿泊・飲食業 160 社(5.8%)
その他サービス業 312 社(11.2%)その他 126 社(4.5%) 無回答 29 社(1.0%)
※重複を含むため、割合は 100 を超える。

(従業員規模)
5 人以下 71 社(2.6%) 6~ 10 人 185 社(6.7%) 11~20 人 643 社(23.2%)
21~50 人 875 社(31.5%) 51~100 人 485 社(17.5%) 101~300 人 413 社(14.9%)
301 人以上 73 社(2.6%) 無回答 31 社(1.1%)

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[日本商工会議所]
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