組織変動に伴う労働関係上の諸問題に関する調査 ―企業アンケート調査・労働組合アンケート調査編 

2017年01月31日
労働政策研究・研修機構は、組織変動に伴う労働関係上の諸問題に関する調査―企業アンケート調査・労働組合アンケート調査編―を発表。

【研究の目的】
本調査研究は、企業及び労働組合を対象に、会社分割、事業譲渡、合併といった企業組織変動の実態を把握し、組織再編に伴う労働関係上の諸課題を整理することにより、組織変動に伴う労働関係に関する政策的対応(立法措置の必要性の有無や指針策定・改正)の議論に資することを目的として実施したものである。

【研究の方法】
(1)企業アンケート調査
常用労働者100人以上の企業10,000社を対象に、質問紙を用いた郵送による通信調査を2015年12月15日~2016年1月15日に実施。回収数は1,567票(有効回収率15.7%)。

(2)労働組合アンケート調査
厚生労働省「平成27年労使関係総合調査(労働組合基礎調査)」の労働組合員数100人以上の単位組織組合及び単一組織組合の単位扱組合から無作為抽出した2,985組合を対象に、質問紙を用いた郵送による通信調査を2016年1月5日~1月25日に実施。回収数は667票(有効回収率23.1%)。

※この他、ヒアリング調査(企業、労働組合)を実施。ヒアリング調査結果は別途取りまとめる。

【主な事実発見】

1.会社分割
1.1企業調査

(1) 過去3年間に21社が会社分割を経験し、その目的は「グループ内の組織再編」「本業に経営資源を集中し、経営効率を高めるため」などが多い。分割方法は、新設分割の「事業単位の分割」、吸収分割の「事業単位の分割」が多く、承継会社等との関係は「以前から存続するグループ内の企業」「会社分割に伴い新たにグループ化された企業」が多い。

(2) 移籍の対象の労働者は「承継される事業に「主として従事」していた労働者」が多く、移籍の方法は「会社法及び労働契約承継法による移籍」と「いわゆる転籍合意方式」がほぼ同数である。

(3) 「労働組合等と事前に協議した」という回答が多く、協議の時期は「約1カ月前」「2カ月より前」、協議した事項は「会社分割をする背景及び理由」、「会社分割後の労働者の労働条件」「会社分割後の分割会社及び承継会社等の債務の履行に関する事項」がそれぞれ多い。

1.2 労働組合調査

(1) 会社分割を経験した労働組合は、分割会社で29組合、承継会社で20組合、設立会社で11組合であった(以下、承継会社、設立会社を併せて「承継会社等」と記述)。

(2) 移籍の対象は、分割会社、承継会社等とも「承継される事業に「主として従事」していた組合員(労働者)」「承継される事業に「従として従事」していた組合員(労働者)」で、移籍の方法は、「会社法及び労働契約承継法による移籍」が「いわゆる転籍合意方式」より多い。組合員との協議や通知の実施状況は、「労働組合が対象者を代理して協議した」が多く、協議した事項は「会社分割後の労働者の労働条件について」「労働者の労働契約の承継の有無」、「会社分割後に労働者が勤務することになる会社の概要」などである。

(3) 会社分割に関する協議等は、「会社と事前に協議した」「会社と協議はしなかったが、事前通知・提供があった」が多く、時期は「2カ月より前」「約1カ月前」が多い。

2.事業譲渡
2.1 企業調査

(1) 事業譲渡は、譲渡企業として44社、譲受企業として92社が経験している。譲渡の目的は、「グループ内の組織再編のため」「不採算部門を切り離し、経営効率を高めるため」などで、譲渡企業と譲受企業との関係は、「グループ外の企業」「以前から存在するグループ内の企業」がそれぞれ多い。

(2) 労働者は主に転籍で採用されており、また、転籍又は出向について同意を取ったところが多い。

2.2 労働組合調査

(1) 譲渡会社の労働組合として事業譲渡を経験したところが29組合、譲受企業として経験したところが20組合であった。譲渡の目的は、「グループ内の組織再編のため」「本業に経営資源を集中し、経営効率を高めるため」などが多い。譲渡企業、譲受企業は、「グループ外の企業」「以前から存在するグループ内の企業」「当該事業譲渡に伴い新たにグループ化された企業」が多い。

(2) 「移籍した組合員がいた」と回答した組合が6割以上で、譲渡企業、譲受企業とも「主に転籍で採用された」が多い。

(3) 会社との協議の状況は、「会社と事前に協議した」「会社と協議はしなかったが、事前通知・提供があった」「協議・通知・提供は行われなかった」が多い。

3.合併
3.1 企業調査

(1) 過去3年に合併を経験した企業は94社で、合併の目的は、「企業規模を拡大して経営効率を高めるため」「拠点や生産設備等集約し能率を高めるため」などである。合併の相手企業の属性は、「以前から存在するグループ内の企業」が多い。

(2) 「労働組合と協議した」企業が多いが、「社員組織と協議はしなかったが、通知・提供した」企業もある。協議等の時期は、「2カ月より前」が半数であった。

(3) 合併先に移籍した労働者がいた企業は55社で、合併前後で同一の賃金額を維持されたところが多く、年次有給休暇、その他の休暇、労働時間等の権利が全て承継されたところが多い。

3.2 労働組合調査

(1) 合併会社の労働組合として40組合、被合併企業の組合として7組合が合併を経験している。合併の目的は、「企業規模を拡大して経営効率を高めるため」「拠点や生産設備等集約し能率を高めるため」などで、合併相手は、「以前から存在するグループ内の企業」「グループ外の企業」などが多い。

(2) 合併前後で同一の賃金額を維持したところが多く、年次有給休暇、その他の休暇、労働時間等の権利は全て維持されたところが多かった。

(3) 会社との協議の実施状況は、「会社と事前に協議した」「会社と協議はしなかったが、事前通知・提供があった」などが多く、協議の時期は「2カ月より前」「約2カ月前」「数日前」などである。

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[労働政策研究・研修機構]
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