人事労務諸制度の実施状況調査(上場企業および上場企業に匹敵する非上場企業対象) 

2018年09月05日

労務行政研究所は、上場企業および上場企業に匹敵する非上場企業440社を対象に、人事労務諸制度の実施状況を調査した。

 本調査は、企業における人事労務関連のさまざまな制度の実施状況を明らかにするため、1981年に初めて行って以来、定期的に実施しており、今回は2013年以来5年ぶり、15回目の調査となる。今回調査では、企業で広く取り入れられている18分野・191制度の実施率と10制度の改廃状況について調べている。

調査結果のポイント


  • 1.セクハラ防止規程を定めている企業は増加傾向にあり、2018年では69.3%と7割近くに達し、2013年調査(49.5%)から約20ポイント増加[図表1、4]。同様にパワハラ(モラハラ)防止規程についても、作成している割合は2007年以降急増しており、2018年では56.4%と半数を超えている。
  • 2.61歳以上の定年制を実施している企業は12.7%で、2010年(6.3%)から倍増[図表1、3]。61歳以上の定年年齢の内訳を見ると、65歳が73.1%で最も多く、62歳が11.5%と続く。
  • 3.社員の旧姓使用を認めている企業は67.5%で、2001年の30.6%から2倍以上に増加してい[図表2]。

調査結果


1.主要18制度の実施率の推移

① 目標による管理制度 79.3%(-2.5)
② メンタルヘルス対策 74.5%(-0.3)
③ 契約社員制度 71.1%(+5.7)
④ セクハラ防止規程 69.3%(+19.8)
⑤ 旧姓使用 67.5%(+3.0)
⑥ パワハラ(モラハラ)防止規程 56.4%(+23.2)
⑦ 社内禁煙運動(分煙化を含む) 52.0%(-8.7)
⑧ eラーニング 45.7%(+14.4)
⑨ フレックスタイム制 35.5%(-6.1)
⑩ 独身寮 35.5%(-8.4)
⑪ 服装や染髪に関する社内規定 32.7%(+9.8)
⑫ メンター制度 32.0%(+0.7)
⑬ 役割等級制度 30.9%(+3.3)
⑭ 役職定年制 29.5%(-4.6)
⑮ 計画年休付与制度 21.8%(-4.8)
⑯ 社有社宅 20.7%(-8.7)
⑰ 61歳以上の定年制 12.7%(+5.2)
⑱ 在宅勤務制度 11.8%(+3.9)

2.注目3制度の実施率 ― 旧姓使用、フレックスタイム制、在宅勤務制度

ここでは、女性の活躍推進、働き方改革などで近年注目度が高まっている、①旧姓使用、②在宅勤務制度、③フレックスタイム制の3項目について取り上げる。2001年以降の推移を見ると[図表1]、「旧姓使用」を認めている割合は上昇傾向にあり、2018年調査では67.5%と過去最高となった。また、規模に見ると、1000人以上71.9%、300~999人69.6%、300人未満62.0%と、規模が大きいほど割合は高くなるものの、広く取り組みが進んでいることが分かる[図表2]。

今回の働き方改革関連法の成立に伴い、労働基準法の改正によって、清算期間の上限が現行の1カ月から3カ月に引き上げられる「フレックスタイム制」の実施率は、若干の増減はあるがほぼ横ばいで推移し、規模計で35.5%となっている。
なお、1000人以上は52.5%と過半数に達しているが、999人以下では3割を下回り、規模による格差が大きくなっている。

育児・介護と仕事の両立支援施策の一つとしても注目度の高い「在宅勤務制度」の実施率は、2004年(1.9%)以降伸びており、2018年は11.8%と初めて1割を超えた。規模別に見ると、1000人以上では22.3%と2割を超える一方、999人以下では10%未満となり、大企業を中心に導入されている実情がうかがえる。

3.61歳以上の定年制

 少子高齢化が加速する中、2013年4月施行の改正高年齢者雇用安定法で、希望者全員を対象とした65歳までの継続雇用措置(定年後再雇用、61歳以上の定年制など)が義務化された。こうした流れを受け、深刻化する若手人材の獲得難への対応や熟練技能の活用・継承などを目的として、定年年齢を60歳超に引き上げる動きが徐々に広がりを見せている。「61歳以上の定年制」の実施率は12.7%と、前回13年調査(7.5%)から5.2ポイント上昇している[図表1、3]。61歳以上の定年を定めている場合の定年年齢は、65歳が73.1%で最も多くなっている。

4.ハラスメント防止規程

 職場のハラスメントによる問題が後を絶たない中、社内の風紀を律するためにハラスメント防止規程を作成している企業は増加傾向にあり[図表1]、「セクハラ防止規程」は69.3%、「パワハラ(モラハラ)防止規程」は56.4%と半数を上回る企業で作成されており、対応が進んでいることが分かる[図表4]。セクハラ防止規程またはパワハラ(モラハラ)防止規程を作成している企業のうち、両方作成している企業は56.1%で、いずれも作成していない企業(30.5%)を大きく上回っている。また、いずれか一方のみ作成している企業は13.4%であった。

調査概要


調査対象および集計対象
全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3830社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上または従業員500人以上)3909社の合計7739社(ただし、持ち株会社の場合は主要子会社を対象としたところもある)。
このうち、回答のあった440社を集計した。

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[労務行政研究所]
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