人手不足等への対応に関する調査(中小企業対象) 

2018年06月07日

日本商工会議所は、「人手不足等への対応に関する調査」を取りまとめました。

 調査結果では、人員の過不足状況について、全体の65.0%の企業で「不足している」と回答しており、昨年度調査と比較して約5ポイント不足の割合が上昇し、4年連続で悪化しています。業種別に見ると「宿泊・飲食業」「運輸業」「建設業」で人手不足感が強く、昨年調査と同様の結果となりました。

 また、本年の調査では「企業主導型保育事業」についても調査をしており、企業主導型保育事業の認知度について「事業内容をよく知っている」と回答した企業は僅か6.1%であり、「事業の名称のみ知っている」を合計しても半数に届かないことから、企業に認知されていないことが伺える結果となりました。

調査結果


Ⅰ人手不足への対応について

1.人員の過不足状況について(前年調査比較)

  • 65.0%の企業で人手が「不足している」と回答。
  • 昨年の調査よりも「不足している」と回答した割合が約5ポイント上昇。調査を開始してから4年連続で人手不足感が強まっている。
  • 業種別では、昨年の調査と同様に「宿泊・飲食業」の人手不足感が最も高く、約8割の企業が「不足している」と回答。
  • 「宿泊・飲食業」、「介護・看護」で不足割合が若干改善したが、他の業種は全て悪化している。悪化した業種の内、「建設業」、「その他(医療、産業廃棄物業等)」では、悪化したポイントが特に上昇した(建設業:昨年に対し7.9ポイント上昇、その他:昨年に対し13.4ポイント上昇)。
  • 従業員規模10人以下および301人以上の企業では「不足している」と回答した割合が昨年の調査結果と比較して改善した。
  • 一方、従業員規模11~300人の企業では、「不足している」と回答した割合が、昨年の調査結果と比較して悪化している。
  • 「不足している」と回答した割合は、従業員規模101~300人の企業で最も高いが、301人以上の企業では、「不足している」と回答した割合が昨年の調査結果と比較して減少していることから、中堅企業が最も人手不足の影響を受けていることが窺える。
2.数年後(3年程度)の人員充足の見通しについて
  • 数年後(3年程度)の人員充足の見通しについては、全体の半数以上の企業が「不足感が増す」と回答した。
  • 「現在と同程度の状況」を選択した企業も43.1%であることから、今後、数年間は人手不足の状況が続くことが窺える。
  • 人手が「不足している」と回答した企業に限ると、数年後(3年程度)の人員充足の見通しについて6割以上の企業が「不足感が増す」と回答した。
3.求める人材について【複数回答】
(1.で「不足している」と回答した企業が対象)
  • 求める人材としては、「一定の経験を有した若手社員(第二新卒等)」が最も高く、次いで「即戦力となる中堅層、専門家」が続いた。
  • 特に、「新規学卒者(高卒)」は昨年の調査結果と比較して約10ポイント上昇しており、若年層の人手不足が顕著になっていることが伺える。
  • 一方、「一般職層・非専門的な人材(パート・アルバイト等)」は、昨年の調査結果と比較して比較して約7ポイント減少している。
4.人員が充足できない理由について【複数回答】
(1.で「不足している」と回答した企業のみ集計)
  • 人手が不足している企業に、人員が充足できない理由をカテゴリー別に聞いたところ「カテゴリー①:そもそも採用できない」では、「自社の立地する地域に求めている人材がいない(人口減少や大都市圏への流出等でそもそも人がいない)」が56.8%と最も高い結果となった。
  • 人員が充足できない理由の「カテゴリー②:自社の処遇や制度、魅力」では、「自社が属する産業・職種に魅力がない(業界の将来見通しに不安があるなど)」が最も多く、次いで「自社の働き方に魅力がない(労働時間が長い、休みが取れない、柔軟な働き方が困難など)」、「自社の賃金が低い(基本給やボーナスなど)」が共に3割強と続いた。
  • 一方、「自社の職場環境(働き方以外)に魅力がない」を選択した割合は10.4%にとどまった。
  • 人員が充足できない理由の「カテゴリー③:ミスマッチ、定着しない等」にでは、「入社した人材がミスマッチを感じて退職してしまう」が最も多く、次いで「自社が求めていた能力・知識・経験を有する人材ではなかった」が続いたことから、使用者、労働者共に入社前後の段階におけるミスマッチが生じていることが窺える。
5.人手不足下における事業活動の維持について【複数回答】
(1.で「不足している」と回答した企業のみ集計)
  • 人手不足により人員の充足が難しい中、事業活動を維持するために講じている取り組みは、「既存の業務を効率化する(ICT 化、標準化等)」が最も多い。
  • 一方、「残業、休日出勤等で対応」が39.6%、「経営者や管理職が作業を補う」が33.9%挙げられていることから、深刻な人手不足の中で、限られた人員で何とか事業活動を維持している実態が窺える。
6.多様な働き方に関する取り組みについて【複数回答】
  • 各企業が実施している多様な働き方に関する取り組みは、「長時間労働の削減」が55.8%と最も多く、次いで「再雇用制度」が50.7%と続いた。また、「年休の取得促進」、「子育て・介護休暇制度」も約3割と一定数挙げられた。
  • 一方で、「情報技術(AI、IoT等)の活用」、「短時間正社員制度」、「みなし労働時間制(裁量労働制等)」、「副業・兼業」、「在宅勤務」、「勤務地限定社員制度」、「勤務間インターバル制度」、「企業主導型保育所の整備」、「テレワーク(在宅勤務除く)」といった項目は1割以下であった。これらの取り組みは、大企業では進みつつあるが、中小企業では整備が進んでいないことが窺える。
7.多様な働き方に関する取り組みで得られた効果ついて【複数回答】
(5.で取り組みを実施していると回答した企業のみ集計)
  • 多様な働き方に関する取り組みを実施している企業に対して、取り組みにより得られた効果を聞いたところ、「高齢者の活躍推進」が最も多い。「人材の定着(退職者の減少)」、「人材の確保」が共に3割強挙げられていることから、深刻な人手不足の中で、こうした取り組みは人材の確保・定着をはじめ、多岐に渡る効果があると窺える。

Ⅱ外国人材の受け入れについて

1.外国人材の受け入れについて
①外国人材受け入れのニーズについて

  • 外国人材の受け入れニーズがある(「ある(既に雇用している)」、「ある(今後雇用する予定)」および「雇用するか検討中」と回答した割合の合計)と回答した企業は42.7%あることから、深刻な人手不足の中で外国人材に対する期待と関心が高いことが窺える。
  • 人手不足の企業に限ると、外国人材の受け入れニーズは50.4%となり、全体の数値を大きく上回る。
②外国人材を受け入れる、受け入れたい理由について【複数回答】
(①で「ある(既に雇用している)」「ある(今後雇用する予定)」「雇用するか検討中」と回答した企業のみ集計)
  • 外国人材を受け入れる、受け入れたい理由は、「人手不足により、日本人の求人が充足できないため」と回答した割合が71.7%と最も高く、次いで「海外の優秀な人材を採用したいため」が続いた。
③外国人材を受け入れたい分野・層について【複数回答】
(①で「ある(既に雇用している)」「ある(今後雇用する予定)」「雇用するか検討中」と回答した企業のみ集計)
  • 外国人材を受け入れたい分野・層については、「非技術的分野(いわゆる単純労働)」が最も多く、次いで「一定の技術を有した専門職層」、「即戦力となるようなミドル人材」が続き、昨年の調査結果とほぼ同様の結果となった。
④外国人材を受け入れる際に課題と感じていることについて【複数回答】
(①で「ある(既に雇用している)」と回答した企業のみ集計)
  • 外国人材を既に雇用している企業に、受け入れる際の課題を聞いたところ、「言語等コミュニケーションがとりにくい」が最も多く、次いで「文化や慣習の違い」が続いた。
  • また、「雇用時等における在留資格申請・更新手続きが煩雑」と回答企業が30.2%あることから、受け入れる際の手続きが課題となっていることが窺える。
⑤外国人材を受け入れる際に課題と感じていることについて【複数回答】
(①で「ある(今後雇用する予定)」「雇用するか検討中」と回答した企業のみ集計)
  • 外国人材を今後雇用する予定、雇用するか検討中の企業に、受け入れる際の課題を聞いたところ、「言語等コミュニケーションに不安を覚える」が最も多く、外国人材を既に雇用している企業と同様の結果となった。
  • 「そもそも何から取り掛かってよいかわからない」、「外国人材を雇用した後に、事件、事故等が起きないか不安」、「外国人材を雇用する際の手続きが煩雑」といった点も多く挙げられた。
⑥新設または拡充すべき支援策について【複数回答】
(①で「ある(既に雇用している)」「ある(今後雇用する予定)」「雇用するか検討中」と回答した企業のみ集計)
  • 外国人材を受け入れる際の課題に対し、新設または拡充すべき支援策を聞いたところ、「外国人材を雇用する際の手続きの簡素化」が59.3%と最も多い。
  • 次に、「在留資格の更新や労務相談等に対応してくれる公的機関(ハローワーク等)の機能拡充」、「就労が可能な在留資格(専門的・技術的分野)の拡充、制度の見直し」が共に4割強となった。

Ⅲ企業主導型保育事業について

①企業主導型保育事業の認知度について

  • 「事業内容をよく知っている」と回答した企業は僅か6.1%であり、「事業の名称のみ知っている」を合計しても半数に届かないことから、企業に認知されていないことが窺える。
②企業主導型保育事業を活用し、保育施設を設置または設置する意向について【複数回答】
  • 企業主導型保育事業を活用し保育施設を設置または設置する意向を聞いたところ、「設置の意向はない」が80.9%と圧倒的に多い結果となった。
③企業主導型保育施設を設置または設置を検討する際の課題について【複数回答】
(②で「設置済」、「設置予定」、「検討中」と回答した企業のみ集計)
  • 企業主導型保育施設を設置または設置を検討する際の課題は、「保育人材の採用・確保」が31.4%と最も多い。
  • 「無回答」の企業が47.3%あることから、何が課題なのかの認識が十分でない、理解が進んでいないことが窺える。

調査概要


■調査地域:全国47都道府県
■調査対象:中小企業 4,108社
■調査期間:2018年3月19日~4月27日
■調査方法:各地商工会議所職員による訪問調査
■回収商工会議所数:382商工会議所(回収率:74.2%)
■回答企業数:2,673社(回答率:65.1%)

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[日本商工会議所]
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