大学入学者選抜改革に関する調査(高等学校進路指導部対象) 

2018年11月06日

さんぽうは、文部科学省が進めている「高等学校教育改革」・「大学教育改革」・「大学入学者選抜改革」の3つの柱で構成される高大接続改革実行プランのうち、「大学入学者選抜改革」について、高校進路指導現場における現段階での認知度や対策の状況を明らかにするため、「大学入学者選抜改革に関するアンケート」を実施しました。

調査結果


問1.大学入学者選抜改革の内容についてどの程度知っていますか。
●「よく知っている」と「概ね知っている」を合わせると約9割。大学入学者選抜改革への関心の高さが分かる結果に。

「よく知っている」が8.5%、「概ね知っている」が79.3%という結果だった。両者を合わせると約9割が大学入学者選抜改革の内容について把握している結果となる。さらに、「全く知らない」との回答がほぼみられなかったことから、大学入学者選抜改革に関する事項について積極的に情報収集しようとする高校現場の様子がうかがえる。しかしながら、日ごろ指導している生徒の将来に直接的に関わる重大事項であるがゆえに、文部科学省をはじめとする関係各所はこれで十分という認識をもつのではなく、「概ね知っている」「あまり知らない」層を「よく知っている」層にまで持ち上げるための努力が必要である。この改革によって大きな影響を受ける世代が現1年生としてすでに高校に在籍していることを考えると、関係各所は高校現場が求める情報提供の在り方を理解したうえで早急に対応することが求められる。

問2.貴校の生徒が新たな入試に対応するための課題は何だと考えますか(複数回答可)。
●ポートフォリオの作り方・書き方を課題とする意見が多数(76.7%)。「思考力・判断力・表現力」の醸成は必要だが、改めて学力の基礎を身につけることの重要性を訴える声も。

多くの選択肢で過半数を超え、入学者選抜改革における課題は多岐に渡ることが判明した結果となった(回答率上位から、「ポートフォリオの作り方・書き方」=76.7%、「思考力・判断力・表現力を問う問題への対応」=75.8%、「英語4技能への対応」=68.9%、「総合型・学校推薦型選抜で必須化される評価方法への対応」=56.3%)。なかでも「ポートフォリオの作り方・書き方」・「思考力・判断力・表現力を問う問題への対応」が7割以上、「英語4技能への対応」が7割程度と目立っている。入学者選抜改革は様々な要素が同時に見直されるため、一つの課題を乗り越えればよいと言うものではない。そのため、複数の事柄について情報を収集して理解し、生徒を指導していかなければならない状況に高校現場での対応の難しさがあるだろう。

「多面的・総合的な評価」として様々な観点から評価される入試に変化していくなかで、主に主体性の評価を担うポートフォリオの作り方・書き方が不透明であるとする意見が多い。ポートフォリオにおいては1学年からの「学びの履歴」を蓄積していく必要があるため、今すぐにでも取り組みを開始したいという現場の状況を反映しての結果だろう。しかし、e-Portfolioに記録を残すのか、紙ベースで残すのか、またその手法について悩む高校も多いのが現状だ。

「思考力・判断力・表現力を問う問題への対応」についても課題として挙げる意見が多いことから、その必要性と重要性は認識されていることがうかがえる。しかし、高校ではこれまで主にチョーク&トークで授業が展開され、入試の内容も知識の有無を中心に問う内容だったことにより、思考力・判断力・表現力を養う授業の在り方に課題を残しているのではないだろうか。自由記述回答においては、思考力等を養う授業の展開にはそもそも基礎的な学力が必要との声もあり、いかにして学びの基礎・土台となる知識を早期に身につけさせるか、授業改善・カリキュラム改善を含めた仕組みづくりが課題との意見がみられる。他にも、教員全体で入試改革についての理解を深め、日ごろの指導を行う必要があると、現場での意識に関する意見もあった。

【その他の記述回答(抜粋)】
・これまでと同様、基本的な力をつけさせること。確かな学力をつけさせることが課題。
・そもそも基礎学力が足りない。
・調査書への主体的な記述をどうするか。
・活動記録の正確な蓄積。
・教員側の積極的な理解。対応が必要であることを教員が共通理解すること。
・カリキュラムの改善。

問3.貴校で大学入学者選抜改革への対策として取り組んでいることはありますか。ある場合は、それぞれ具体的にご記入ください。
※回答数が2以下の場合はその他として集計

①学習支援サービスの導入
②ポートフォリオに関するサービスの導入
③民間英語検定・資格試験への対策
④大学入学共通テストへの対策
⑤調査書の様式変更及び入試でのポートフォリオ活用に向けた対策

①学習支援サービスではベネッセの「Classi」とリクルートの「スタディサプリ」を導入する高校が多い結果となっています(「Classi」=59.4%、「スタディサプリ」=22.6%)。選択肢による回答方式でないにも関わらず、どの項目に置いても「検討中」が挙がっているのは高大接続改革に対して情報不足により具体的な対策を進められない高校現場の状況を表していると考えられます。

②ポートフォリオは「JAPAN e-Portfolio(=34.9%)」の利用が最も多く、次いで「Classi(=28.2%)」となりました。「マナビジョン(=16.7%)」も加えると、公的機関と民間が進めている仕組みがそれぞれ利用されていることが分かります。今後、民間の仕組みがWEB出願との連動性をもつなど、利便性の向上が気になるところです。

③民間英語検定・資格試験への対策では「英検(=68.6%)」と「GTEC(=58.1%)」が目立ちます。以前より高校現場で馴染みのあったツールが対策として選ばれているようです。

④大学入学共通テストの対策には、日頃の学びの積み重ねが必要だと考えられているようです。しかし、問われる能力が変わる以上、普段の授業や定期テストでより思考力や表現力を養う要素を盛り込んでいく必要がありそうです。

⑤調査書の様式変更とポートフォリオの活用においては、「紙ベース(=25.8%)」が最も多い回答でした。これにはJAPAN e-Portfolioのような公的なシステムが存在せず、対応は各高校まかせになっている状況です。今回の調査書変更が教員にとって大きな負担になることが懸念されているなか、有効な対策がない状況に各関係機関は一計を案じる必要があると考えます。

問4.今後の大学入学者選抜改革において詳細な情報が欲しい項目を選んでください(複数選択可)。
●ポートフォリオ・調査書に関する項目を過半数以上の教員が選択。文部科学省や各大学から具体的な情報提供を求める声が目立つ。

 最も回答率が高かったのは調査書の様式変更とその入試活用の在り方についてという結果になった(「調査書の様式変更及び入試時の活用の在り方」=78.0%)。次いで、問2でポートフォリオの作り方・書き方を課題とする意見が多かったことから、ポートフォリオに関する詳細な情報を求める意見が多いことがわかる(「志願者本人の記載する資料(ポートフォリオ)の活用の在り方」=69.0%、「平成31年度入試における「JAPAN e-Portfolio」の活用方法」=61.0%)。

 先行して平成31年度入学試験から思考力等を問う入試やJAPAN e-Portfolioを活用した入試を展開する大学があることは、該当する大学への出願を検討している生徒を抱えている高校では大きな課題となっている(JAPAN e-Portfolioを入試利用する大学は9月10日時点で11大学)。問1で「よく知っている」・「概ね知っている」と回答したのが約9割に上ることを考慮すると、JAPAN e-Portfolioを含むポートフォリオの仕組みや新たな調査書の概要のさらなる周知徹底はもちろんのこと、各大学によって定められる評価方法や選抜時の提出物など、個別にどのような対応を取るのかについて具体的な情報の早期提供が求められる。

 「大学入学共通テスト(=50.3%)」や「英語4技能など資格・検定活用型入試(=46.0%)」の回答率も決して無視することはできない。しかし、他の項目と比べて回答率が低かった理由にはプレテストの実施やサンプル問題の開示、各団体による情報提供が比較的充実していることがあると考えられる。

調査概要


調査目的:大学入学者選抜改革について、高等学校の進路指導現場における認知度や対策を明らかにする。
配付回収:FAX による配付・回収
調査対象:高等学校進路指導部 5,054 校(全国:全日制・定時制・通信制・サポート校など)
調査時期:2018 年 7 月 11 日~8 月 23 日
回答枚数:533 枚(回答率 10.5%)

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