第2回 再生医療に関する社会意識調査 

2018年09月27日

NTTデータ経営研究所はNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコムリサーチ」登録モニターを対象に、2016年度に引き続き、2017年度も同様に「再生医療への細胞提供に関する社会意識調査」を実施しました。

2015年の再生医療関連諸法の施行以降、新たに再生医療等製品が薬事承認を取得するなど産業化に向けた動きは加速しています。再生医療は、自らの細胞を治療に用いる自家細胞を用いた治療と、自分以外の方の細胞を治療に用いる他家細胞を用いた治療に大きく分類されます。患者自身の細胞を使う自家細胞製品に比較し、あらかじめ準備可能な他人の細胞を用いた他家細胞製品が産業化の観点からは有利であると言われています。海外では他家細胞製品の研究開発が進んでいる一方で、わが国では他家細胞製品の承認件数は未だ1件にとどまっており、今後の他家細胞製品の実用化が課題となります。他家細胞製品の実現には、原料となるヒト細胞の国内における安定的な供給体制が必須となり、安定的なヒト細胞供給を実現するための細胞提供者(ドナー)をいかに確保するのかについて、下記の論点についてのアンケート調査を実施しました。

✓ 再生医療や細胞の提供に関する個人の意識はどうか(細胞を提供したいと思うかどうか)
✓ 個人が細胞を提供するうえでの条件や課題は何か
✓ 細胞提供の意識が高い個人はどのような特徴をもっているのか

アンケート調査では、再生医療を用いた治療に好意的な回答が多く得られ、60%以上の回答者が自身の細胞を提供しても良いと答えるなど、良好な結果が得られ、その割合は2016年度調査より5%程度増加していました。また、関連情報の提供や献血経験やドナー登録など複数の要因が再生医療や細胞の提供に関する積極性と関連するという結果が改めて確認されました。さらに細胞提供に関しては、「わざわざ提供のために採取施設を訪問しなければならないこと」、「採取時の侵襲性」、「採取した細胞の本人利用可能性」が意思決定に影響を与える傾向が改めて確認できました。

背景と調査の視点


 再生医療においては、2013年に再生医療推進基本法や再生医療安全性確保法などが国会で成立し、また薬事法の改正によって条件付きの早期承認制度などが設けられるなど、再生医療の早期の治療応用に向けた環境整備が進められています。実際に新制度を活用した製品が2製品上市されたほか、治験や臨床研究の実施件数も増加傾向にありますが、一方で産業全体への波及効果が期待される他家細胞製品の承認数は1件に限られ、研究段階のパイプラインを見ても限定的です。このため、現状では他家細胞製品の実用化に取り組む個々の企業が海外から細胞を調達するか個別に協力者を探索している状態で、公的にアクセス可能な産業用細胞バンクや臓器や骨髄ドナーのように協力者をプールし細胞を安定的に提供する仕組みなどは実現していません。

 他家細胞製品については、特に製造段階で安定的にヒト細胞が供給されることが必要ですが、細胞の採取方法や活用方法に対する情報不足から来る不安感、倫理的な取り扱いの難しさ、個人情報保護上の課題、適切な費用構造構築の困難さといった観点において国民の理解が得られにくいと考えられていました。

 2013年度戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発センター)プロジェクト調査調査においては、細胞提供者(ドナー)へのアプローチについて詳細な調査が実施され、リビングドナーへの侵襲的組織採取、通常は廃棄される組織の有効活用、デッドドナーの献体組織の活用について実施機関とその役割の可能性が示されています。この調査結果を受け、研究・産業の両面において公的にアクセス可能な仕組み作りに着目し、実務的な課題について経済産業省や日本医療研究開発機構を中心に複数の調査・検討が実施されてきました。

 国民の受容性や協力の在り方についても同様に現状を確認しつつ、状況に応じて協力可能性を高めるための方策を検討する必要があり、本調査においては細胞提供者(ドナー)側の受容性について調査しました。

主な調査結果


1.再生医療に対しては概ね好意的な反応が得られており、その傾向が高まっている
  • 再生医療の単語としての認知度は82.1%であり、2016年度調査の80.7%よりわずかに増加していた。
  • 再生医療治療を選択する可能性は70%程度であり、2016年度調査から変化はなかった。
  • 再生医療を実施するための細胞を提供できる人は全体の60%程度であり、2016年度調査より5ポイント弱増加していた。
2.再生医療治療を受けることに対して好意的な層の特徴は、献血経験があること、重病の経験があること、身体の一部を保管していることであり、2016年度調査とその傾向に変化はなかった
  • 複数回献血した経験がある場合、献血した経験が無い回答者に比べ20%程度多くの回答者が再生医療治療を受けたいという回答が得られ、2016年度の調査と同様の傾向であった。
  • 自分や家族が重病にかかった経験がある場合、無い場合に比べて20%程度多くの回答者が再生医療治療を受けたいという回答が得られ、2016年度の調査と同様の傾向であった。
  • 身体の一部を保管している場合、ひとつも保管していない場合に比べて20%程度多くの回答者が再生医療治療を受けたいという回答が得られた。2016年度調査では保管している場合は、保管していない場合と比べて、約10%程度多く、本年度はその差が広がっている傾向があった。
3.再生医療実施のための細胞提供に対して好意的な層の特徴は、献血経験があること、重病の経験があること、身体の一部を保管していることであり、2016年度調査とその傾向に変化はなかった
  • 複数回の献血経験がある場合、献血経験が無い場合に比べて20%程度多くの回答者が細胞の提供が可能という回答が得られた。細胞が再生医療の治療目的の場合も、研究目的の場合も傾向は変わらなかった。
  • 重病にかかった経験がある場合、重病にかかった経験が無い場合に比べて20%程度多くの回答者が細胞提供が可能という回答が得られた。同様に治療目的の場合も、研究目的の場合も傾向は変わらなかった。
  • 身体の一部を保管している場合、全く保管していない場合に比べて10%程度多くの回答者が細胞提供が可能という回答が得られた。同様に治療目的の場合も、研究目的の場合も傾向は変わらなかった。
4.細胞提供の協力者は、「提供時の訪問の煩わしさ」、「侵襲性」、「提供した細胞の他人優先利用」が意思決定に影響を及ぼすと回答しており、2016年度調査とその傾向に変化はなかった
  • 細胞を提供する際の条件として、1)わざわざ医療機関などを訪問する必要があること、2)細胞を採取する際に侵襲性を伴うこと、3)採取した細胞が全て他人が使用してしまうことがどの程度細胞提供の意思決定に影響を及ぼすのか聞いたところ、採取にあたって1)わざわざ訪問をする必要があることが最も影響を及ぼすという回答が得られ、2016年度の調査と同様の傾向であった。
5.提供に係る不安を払しょくするような体制を構築することによって、協力者を増やすことができる可能性があり、2016年度調査とその傾向に変化はなかった
  • 細胞を提供しない理由として、「使われ方などが不明であり、不安を感じる」が挙げられ、2016年度の調査と同様の傾向であった。
  • 細胞の提供に際しては、病院または公的機関で責任を持って説明・採取・取扱することで、安心感が得られるという回答が得られ、2016年度の調査と同様の傾向であった。

調査概要


調査対象:20代以上の登録者
調査方法:非公開型インターネットアンケート
調査期間:2018年3月20日~3月26日
有効回答者数:1078人

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