役員報酬サーベイ(2018年度版) 

2018年11月20日

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(DTC)は、日本企業における役員報酬の水準、役員報酬制度の導入およびコーポレートガバナンスへの対応状況の実態調査『役員報酬サーベイ(2018年度版)』を実施し、結果をまとめました。

本サーベイは2002年以降実施している調査で、今年度は2018年7月~9月にかけて、三井住友信託銀行株式会社と共同で実施しました。東証一部上場企業を中心に659社から回答を得ており、役員報酬サーベイとして日本最大規模の調査となっています。

調査結果のサマリーとポイント


■ 報酬水準
東証一部上場企業における報酬総額水準は中央値で、社長が5,552万円(前年比+2.2%)、取締役が2,160万円(同+4.3%)、社外取締役が756万円(同+5.0%)となった。また売上高1兆円以上の企業における社長報酬の中央値は9,855万円(同+5.0%)となった。

■ 株式関連報酬
回答企業のうち45%の企業が株式関連報酬を既に導入していると回答し、昨年の4ポイント増加した。現時点での導入済みの制度としては、「ストックオプション」が104社と最も多い。一方で、今後導入を検討したい制度としては、「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」が最も多く165社、ついで「株式交付信託」が105社、「パフォーマンス・シェア」は58社となり、ストックオプション以外の株式関連報酬の導入検討が進んでいることがうかがえる。

■ コーポレートガバナンス
今年6月に公開された改訂版コーポレートガバナンス・コードにおいて、客観性・透明性のある手続きによる報酬制度の設計、報酬額の決定などが、より強く求められている。今回のサーベイでは、任意の報酬委員会を設置している会社は全体の40%となっており、今後も増加することが見込まれる。また、社長・CEOの選解任に関する手続きにおける客観性・透明性もより強く求められるようになったが、今回のサーベイでは社長・CEO の選任基準を整備している企業は全体の8%にとどまった。

調査結果


【『役員報酬サーベイ(2018 年度版)』】

■ 役位別報酬総額の水準

・東証一部上場企業431社における報酬総額の水準は、【図1-1】の通りである。社長の報酬総額は中央値で5,552万円となり、前年の5,435万円と比較し+2.2%となった。また、取締役は2,160万円で前年比+4.3%、社外取締役は756万円で前年比+5.0%となった。

・また、売上高1兆円以上の企業41社における報酬総額の中央値は、【図1-2】の通りとなる。社長の報酬は9,855万円で、東証一部上場企業の中央値と比較すると1.77倍となる。また、前年の9,387万円から468万円(前年比+5.0%)増加している。

■ インセンティブ報酬

・短期インセンティブ報酬を採用している企業の割合は70%(462 社*1)あり、採用している短期インセンティブ報酬の種類は、前年の業績等に応じて翌年の定期同額給与*2に反映する「変動報酬の固定報酬化」が33%、「事前確定届出給与*3」が13%、「業績連動給与*4」が20%、「損金不算入型の賞与」は54%となった。前年比で、「損金不算入型の賞与」を導入している企業の割合が3ポイント増加した。設計の柔軟性を重視した制度を採用している企業が多いことがうかがえる。【図2】

*1:短期インセンティブの有無」において「短期インセンティブあり(導入している)」を選択した企業、及び「変動報酬の固定報酬化の有無」において「あり」を選択した企業
*2:法人税法第34 条第1 項第1 号に規定
*3:法人税法第34 条第1 項第2 号に規定
*4:法人税法第34 条第1 項第3 号に規定

・株式関連報酬(長期インセンティブ報酬)を採用している企業の割合は45%(296社*5)あり、その中で採用している長期インセンティブ報酬の種類は、「ストックオプション(104社)」、「株式交付信託(83社)」、「株式報酬型ストックオプション*6(81社)」、「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)(42社)」、「パフォ-マンス・シェア(10社)」の順となった。今後導入を検討している制度*7としては、「譲渡制限付株式」「株式交付信託」「パフォーマンス・シェア」の順となっており、今後も多様な方式報酬制度の導入が進むと見込まれる。【図3】

*5:「長期インセンティブの有無」において、ストックオプション、株式報酬型ストックオプション、譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)、パフォーマンス・シェア、信託の設定による株式付与、その他現物株いずれかの株式関連報酬を採用している企業
*6:権利行使価格が極めて低い価格(1円等)に設定され、実質敵に譲渡制限付株式の付与と同様の効果が得られるストックオプション制度
*7「今後導入」の企業:「現在導入を検討中の企業」、「今後導入したいが詳細未検討」の合計

・明文化された役員評価制度を有する企業は、全参加企業659社の20%であった。また、明確な評価制度は存在しないものの、何らかの評価基準が存在する企業は32%で、合わせて52%の企業においてや役員の評価施策が実施されている。

・社長の短期インセンティブ報酬に関連付けられる経営指標は「営業利益(49%)」「売上高(43%)」「当期利益(42%)」「経常利益(31%)」と規模・収益性の指標が多く用いられている*8。【図4-1】

*8:「短期インセンティブに関連付けられる業績指標の有無」で「あり」を選択した158社の回答

・社長の長期インセンティブ報酬に関連付けられる経営指標は「売上高(33%)」「当期利益(31%)」「営業利益(26%)」「経常利益(22%)」と売上高および利益が指標として多く用いられている。加えて「ROE(22%)」といった利益関連指標や、「株価・時価総額(15%)」も一定程度採用されている*9。【図4-2】

*9:「長期インセンティブに関連付けられる業績指標の有無」で「あり」を選択した72社の回答

■ コーポレートガバナンス

・指名委員会等設置会社を除く647社のうち、任意の報酬委員会を設置している企業の割合は40%(260社)、任意の指名委員会を設置している企業の割合は34%(219社)であった。
・任意の報酬委員会・指名委員会の年間開催回数は、ともに年1~2回の企業が半数以上を占めており、形式的な議論にとどまっている可能性がある。【図5】

・役員指名基準は、整備している企業が27%であったが、今後整備検討中の企業を含めると56%(前年比+9ポイント)となった。

・今年6月に公開された改訂版コーポレートガバナンス・コードにおいて、社長・CEOの選解任に関する手続きにおける客観性・透明性が、より強く求められるようになった。しかし、今回のサーベイでは社長・CEOの選任基準を整備している企業は50社で、全体の8%(前年比+3ポイント)にとどまった。【図6-1】

・指名基準に関連して、経営幹部育成プランを整備している企業は、全体の23%だったが、今後整備する予定の企業も含めると、71%となった。【図6-2】

調査概要


■調査期間:2018年7月~2018年9月
■調査目的:日本企業における役員報酬の水準、役員報酬制度やガバナンス体制、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況等の現状に関する調査・分析
■参加企業数:659社(集計対象役員総数 11,558名)
上場企業643社(うち東証一部431社)、非上場企業16社
■参加企業属性:製造業302社(うち電気機器・精密機器70社、医薬品・化学54社、機械46社等)、非製造業357社(うち情報・通信73社、サービス68社、卸売61社 等)

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