2019年世界生活環境調査(QUALITY OF LIVING SURVEY) ‐ 都市ランキング 

2019年03月13日

マーサーは「2019年世界生活環境調査(Quality of Living Survey) ‐ 都市ランキング」 を発表した。今年で21年目になるマーサーの世界生活環境調査によると、世界の多くの都市は依然として魅力的なビジネス環境を提供しており、生活環境は都市としての魅力を語る上で重要なファクターとなっている。

全世界のランキングでは、ウィーンが10年連続でトップを維持し、チューリッヒが僅差で2位となった。オークランドとミュンヘン、そして北米で10年連続最高位のバンクーバーがともに3位という結果となった。シンガポール(25位)、モンテビデオ(78位)、ポートルイス(83位)は、それぞれアジア、南米、アフリカの各地域での最高位を維持した。バグダッドは依然ランキング最下位ではあるものの、安全性と保健医療面において大きな改善が見られた。一方で、カラカスは、政治・経済情勢が著しく不安定となり、生活水準は下落した。

マーサーの世界生活環境調査は世界でも有数の総合調査として信頼されており、多国籍企業などが海外派遣にあたり社員の報酬を公平に決定できるよう毎年実施されている。生活環境を相対的に評価した有益なデータであるとともに、世界450 都市以上のハードシップ手当について提言しており、うち231 都市を今年のランキング対象としている。

今回の調査では、各都市における国内情勢の安定性、犯罪(治安)、司法機関による職務遂行能力、個人の自由への制限、他国との関係性、報道の自由などを評価した「個人の安全度ランキング」も併せて発表した。個人の安全度はどの都市においてもビジネスや人材の成長に欠かせず、安定性の基盤となる。このランキングでは、ルクセンブルクが世界で最も安全度が高い都市としてトップとなり、ヘルシンキとスイスのバーゼル、ベルン、チューリッヒが同順位で2位と続き、西ヨーロッパが上位を独占する結果となった。世界で最も安全度の低い都市はダマスカス(231位)で、次点は中央アフリカ共和国のバンギ(230位)となった。

マーサー 2019年世界生活環境調査(Quality of Living Survey)‐都市ランキング

総合ランキング

上位10都市
1 ウィーン オーストリア
2 チューリッヒ スイス
3 バンクーバー カナダ
3 ミュンヘン ドイツ
3 オークランド ニュージーランド
6 デュッセルドルフ ドイツ
7 フランクフルト ドイツ
8 コペンハーゲン デンマーク
9 ジュネーブ スイス
10 バーゼル スイス

個人の安全度ランキング

上位10都市
1 ルクセンブルク ルクセンブルク
2 バーゼル スイス
2 ベルン スイス
2 ヘルシンキ フィンランド
2 チューリッヒ スイス
6 ウィーン オーストリア
7 ジュネーブ スイス
7 オスロ ノルウェー
9 オークランド ニュージーランド
9 ウェリントン ニュージーランド

地域別分析

ヨーロッパ

総合ランキング
ヨーロッパの各都市は高い生活環境を維持しており、ヨーロッパでトップ3となったウィーン(1位)、チューリッヒ(2位)、ミュンヘン(3位)は、全世界のランキングでもトップ3となっており、上位20位のうち、ヨーロッパの13都市がランクインする結果となった。ヨーロッパの主要都市であるベルリン(13位)、パリ(39位)、ロンドン(41位)は、昨年から順位に変動がなかった一方で、マドリッド(46位)は3つ順位が上がり、ローマ(56位)は1つ順位が上がった。サラエボ(156位)は、犯罪報告件数が減ったために3つ順位が上がった一方で、ミンスク(188位)、ティラナ(175位)、サンクトペテルブルク(174位)は、今年もヨーロッパで最も順位が低い都市となった。

個人の安全度ランキング
ヨーロッパで最も安全度の高い都市は、ルクセンブルク(1位)となった。これにバーゼル、ベルン、ヘルシンキ、チューリッヒが同順位2位で続いた。モスクワ(200位)とサンクトペテルスブルク(197位)は、ヨーロッパで最も安全度の低い都市となった。2005年から2019年の間に、西ヨーロッパにおいて最も順位が下がった都市は、近年テロ攻撃が発生しているブリュッセル(47位)と、世界的な財政危機後の政治・経済の混乱からの回復が遅れているアテネ(102位)となった。

南北アメリカ

総合ランキング
北米では、昨年に引き続きカナダ各都市が上位にランクインする結果となった。今回もバンクーバー(3位)が総合ランキングで最高位となった。米国は、犯罪率が引き続き低下していることにより1つ順位が上がったニューヨーク(44位)を除き、調査対象である全都市の順位が下がっており、最も順位が下がったのはワシントンDC(53位)となった。ニューヨーク(44位)のみが、犯罪率が引き続き低下していることにより1つ順位が上がった。デトロイトは、今回も米国の最下位となり、ハイチの首都であるポルトー・プランス(228位)は南北アメリカ地域で最下位となった。不安定な国内情勢やデモにより、ニカラグアのマナグア(180位)は今回7つ順位が下がった。メキシコでは麻薬カルテル関連の暴力事件が続いており、犯罪率も高いモンテレイ(113位)とメキシコシティ(129位)は今回も下位となった。南米ではモンテビデオ(78位)が再び最高位となった。不安定な状況が続くカラカス(202位)は9つ順位が下がった。その他南米の主要都市であるブエノスアイレス(91位)、サンチアゴ(93位)リオデジャネイロ(118位)などは、昨年から大きな変動はなかった。

個人の安全度ランキング
北米ではトロント、モントリオール、オタワ、カルガリー、バンクーバーがともに同順位17位でトップとなった。カラカスは順位を48落として、南北アメリカ地域最下位の222位となった。

中東・アフリカ

総合ランキング
ドバイ(74位)が昨年に引き続き中東のトップとなり、その後にアブダビ(78位)が僅差で続いた。一方、最下位はサヌア(229位)とバグダッド(231位)となった。サウジアラビア政府のビジョン2030の一つとして新たな娯楽施設がオープンしたリヤド(164位)は、今回順位が1つ上がり、イスタンブール(130位)は、犯罪率の低下と、過去12ヶ月間テロ事件が起こらなかったために、順位が4つ上がった。

アフリカでは、ポートルイス(83位)がトップとなり、南アフリカのダーバン(88位)、ケープタウン(95位)、ヨハネスブルグ(96位)が続いた。アフリカ地域の最下位はバンギ(230位)となった。政治体制の民主化が進み、国際関係や人権向上への改善が見られたガンビアの首都バンジュール(179位)は6つ順位が上がり、アフリカおよび全世界で最も順位が上がった都市となった。

個人の安全度ランキング
中東の最高位は、ドバイ(73位)とアブダビ(同73位)となった。ダマスカス(231位)は中東だけでなく、全世界でも最下位となった。アフリカでは総合ランキングでもトップのポートルイス(59位)が最高位となった。総合ランキングでは上位となったが、個人の安全度ランキングでは低い順位となったのがダーバン(128位)、ケープタウン(152位)、ヨハネスブルグ(152位)である。ケープタウンは水不足の問題によって今回順位が1つ下がった。総合ランキング最下位となったバンギは、個人の安全度でも最下位(230位)となった。

アジア・太平洋

総合ランキング
アジアでは、シンガポール(25位)が総合ランキングのトップとなり、これに日本の東京(49位)、神戸(49位)、横浜(55位)、大阪(58位)、名古屋(62位)が続き、さらに香港(71位)、そして昨年の大統領逮捕後の政治的安定を取り戻して2つ順位が上がったソウル(77位)が続いた。東南アジアのその他の主要都市では、クアラルンプール(85位)、バンコク(133位)、マニラ(137位)、ジャカルタ(142位)となり、中国は、上海(103位)、北京(120位)、広州(122位)、深セン(132位)となった。

南アジアでは、インドのニューデリー(162位)、ムンバイ(154位)、ベンガルール(149位)の総合ランキングの順位は昨年から変動はなく、コロンボ(138位)が最高位となった。
ニュージーランドとオーストラリアは、オークランド(3位)、シドニー(11位)、ウェリントン(15位)、メルボルン(17位)が今回も上位となり、20位以内の順位を維持した。

個人の安全度ランキング
東アジアおよび東南アジアの都市ではシンガポール(30位)がアジアで最高位となり、プノンペン(199位)が最下位となった。中央アジアのアルマトイ(181位)、タシュケント(201位)、アシガバート(206位)、ドゥシャンベ(209位)、ビシュケク(211位)では安全度は引き続き課題となっている。
南アジアでは、105位のチェンナイが南アジア地域で最も高く、カラチ(226位)が最も低い結果となった。
オーストラリアの主要都市は、全て上位50位内に入っており、オークランドとウェリントンは同順位の9位でオセアニア地域の最高位となった。

付記: 2019年世界生活環境調査(Quality of Living Survey)について

「世界生活環境ランキング(Quality of Living Survey)」は、マーサーがグローバルで実施する世界生活環境調査の最新の結果に基づき毎年作成されています。マーサーでは調査対象の都市ごとに個別レポートを作成しています。全都市を対象としたサマリーレポートは作成しておりません。複数都市比較も可能です。本データは主に2018年9月から11月にかけてマーサーが収集したもので、特に重要な政治、経済、 環境開発等の状況の変化に対応して定期的に更新されています。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
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