住宅の温熱性能と居住者の意識(熱中症に関する意識)調査 

2019年07月16日

旭化成建材 快適空間研究所は、できるだけ冷暖房設備にたよらない「あたたかい空間」での“心と体と懐があたたかくなるいきいきとした暮らし”を「あたたかい暮らし」と定め、その空間の普及のために情報発信、啓発活動を続けてきました。その活動の一環である「あたたかい暮らし研究会」では、首都大学東京 建築学域 須永研究室と共同で、「住宅の温熱性能と居住者の意識」について調査を実施しています。このたび、2018 年 8 月に行った住宅内での熱中症に関する調査結果が判明しましたのでご報告いたします。

近年、地球温暖化や都市のヒートアイランド現象の影響により、新たな「災害」とまで言われる熱中症が急増し、社会問題化しています。特に、昨年の夏は記録的な猛暑となり、夏の平均気温は東日本で+1.7℃と 1946 年の統計開始以降で最も高くなり、熱中症による全国の救急搬送者数(5 月~9 月)は過去最多の9 万人以上でした。また、熱中症の発生場所別にみると、住居が 38,836 人(40.3%)と最も多くなっているという事実があり、住宅内での熱中症対策は喫緊の課題です。

「あたたかい暮らし研究会」が行った調査では、住宅内で熱中症(疑いも含めて)になったと回答した人は 10 人に 1 人いるということ、住宅内で熱中症になった場所は、「寝室」が 1 位、次いで「居間・食堂」であること、高齢の人ほど熱中症に対する意識が低い傾向にあることなどがわかりました。

調査結果のトピックス


【住宅内での熱中症の発生とその場所について】
  • 住宅内で熱中症(疑いも含めて)になったと回答した人は 10 人に 1 人。
  • 発生場所別にみると、「寝室」「居間・食堂」の順で、それぞれ3割近くに上る。
  • 温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、「寝室」「居間・食堂」で熱中症になったと回答した人は少なく、寝室の温熱環境が快適になっている傾向にある。
【住宅内での熱中症に関する意識について】
  • 住宅内での熱中症を心配している人は半数以下、特に 60 代で心配している人が少ない。
  • 住宅内での熱中症の危険度を正しく認識している人は 2 割以下、さらに 60 代の認識は 1 割を切る。
  • 熱中症による救急搬送者数は高齢者(65 歳以上)が多い一方で、年代が高くなるほど、熱中症(疑いも含めて)になったことがあると回答している人は少なく、実態と認識に大きな乖離がある。

調査結果


1.住宅内での熱中症の発生とその場所について

(1) 住宅内で熱中症(疑いも含めて)になったと回答した人は 10 人に 1 人
現在の住まいで、最近 2~3 年以内に、疑いも含めて熱中症になったことがあると回答した人は、10.7%となっています。10 人に 1 人もの人が熱中症になったことがあると回答していることになります。

(2)発生場所別でみると、「寝室」「居間・食堂」の順で、それぞれ3割近くに上る
熱中症(疑いも含めて)になったことがあると回答した人のうち、住まいのどの場所で熱中症になったかについて聞いたところ、「寝室」「居間・食堂」が上位に上がりました。普段過ごす時間の長い場所で、熱中症になっている傾向にあることが確認できました。

(3)温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、「寝室」「居間・食堂」で熱中症(疑いも含めて)になったと回答した人の割合は少なく、寝室の温熱環境が快適になっている傾向に
熱中症の発生場所の上位 2 つの場所について、住宅の温熱性能別に見てみると、温熱性能「低」「中」の人の3割前後が「寝室」「居間・食堂」で熱中症になったと回答している一方、温熱性能が高い住まいに暮らす人は、「寝室」や「居間・食堂」で熱中症になったと回答した人は少なくなっています。
また、温熱性能別に、寝室の温熱環境についてみてみると、温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、「今の住まいは寝るときの温熱環境が快適だ」(当てはまる+やや当てはまる)と回答した割合が高くなっており、これが熱中症の発生率低下につながっていると考えられます。

2.住宅内での熱中症に関する意識について

(1)住宅内での熱中症を心配している人は半数以下、特に 60 代で心配している人が少ない
ご自宅内での熱中症について心配している(心配している+少し心配している)と回答した人は 43.1%と半数以下です。年代別にみると、年代が上がるにつれて心配する割合は低くなり、20 代で 65.1%に対して、60 代では 38.0%しか心配している人はいません。

(2)住宅内での熱中症の危険度を正しく認識している人は 2 割以下、さらに 60 代の認識は 1 割を切る
ご自宅内での熱中症の危険度*4が最高どの程度まで上がる(上がっている)と思うかを聞いたところ、「危険」「厳重警戒」になると回答した人は全体では 17.3%、年代別にみると、60 代は最も低く 7.6%です。一方、ある調査・研究によれば、一般的な住宅では、ほぼすべての物件において熱中症の危険度が「厳重警戒」以上になるとの報告もあり、熱中症に対する認識と実態に乖離が生じていることがうかがえる結果となっています。

(3)熱中症による救急搬送者数は高齢者(65 歳以上)が多い一方で、年代が高くなるほど、熱中症(疑いも含めて)になったことがあると回答している人は少なく、実態と認識に大きな乖離
消防庁による、昨年(5 月から 9 月)の熱中症による全国の救急搬送者数のデータを、年齢区分別にみると、高齢者(65 歳以上)が最も多く 48.1%となっています。
一方、今回の調査で、住宅内で熱中症(疑いも含めて)になったことがあると回答した人を年代別に見ると、年代が上がるほどその割合は低くなり、20 代で 28.1%に対して、60 代では 4.2%の人が熱中症になったことがあると回答しています。実際のデータと認識に、大きな乖離があることがわかりました。

調査概要


■調査目的:住まいの温熱環境の実態と、居住者の温熱環境に関する意識、行動、ライフスタイルや価値観を調査することで、社会への情報発信および断熱事業におけるマーケティング活動の一助とする。
■調査時期:2018 年 8 月 30 日~9 月 5 日
■調査対象:全国 6 地域 19 都府県
首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)、中京圏(岐阜、静岡、愛知、三重)、阪神圏(京都、大阪、兵庫、奈良)、山陽・四国(岡山、広島、香川、愛媛)、福岡県、宮崎県・鹿児島県
戸建持家居住者 20 代~60 代 既婚男女 (回答者数:1175 名)
※回答者数はウェイトバック後の数値。回答者の性・年代・エリア別データを実際の人口構成比で、データに重み付けをし、再集計するウェイトバック集計を行い補正した。
■調査方法:WEBアンケート調査

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