経済同友会は、「企業の採用と教育に関するアンケート調査」を実施。

「企業がどのような人材を求め、どのような基準で採用を行っているか」、また、「企業が学校教育にどのような協力・貢献を行っているか」等の、企業の変化の実態を把握するため、定点観測として、本調査を 1997 年より実施している。
本調査は、第1部は『企業の採用と教育に関するアンケート』、第2部は『教育に対する企業の協力』の2部構成としている。

第1部の調査は、過去に7回(1997 年、1999 年、2003 年、2006 年、2008 年、2010 年、2012年)実施しており、今回は 2014年調査(第8回)として実施するものである。今回の調査では社会情勢や企業の採用を取り巻く環境の変化等を踏まえて、設問設計を大幅に見直している。
第2部の調査は、企業の教育に対する協力・貢献(生徒の職場体験・企業見学の機会の提供、インターンシップ、教員の企業体験・研修の機会の提供等)の実態を調べ、経済同友会のホームページ上で広く情報提供・発信をすることを目的としている。ただし、今回の調査では、インターンシップに注目し、企業での実施状況を詳細に調査した。

【調査概要】
・調査期間 : 2014 年9月1日~10 月 20 日
・調査対象 : 経済同友会 会員所属企業* 810 社 ※2012 年調査では 818 社
 *回答者は人事担当者
・有効回答数: 228 社(回答率 28.1.%) ※2012 年調査では 255 社
・回答企業新卒社員採用数*合計 : 約 2 万 6,600 人 ※2012 年調査では約 2 万 4,500 人
 *大学院博士課程修了(満期退学含む)、大学院修士課程修了、大学学部卒業、短期大学卒業、高等専門学校卒業、高校卒業の合計人数

【調査結果ハイライト】

- 第1部 「企業の採用と教育に関するアンケート調査」結果 -

直近 1 年間の正社員(新卒者)採用実績

・直近 1 年間の新卒採用では、大学院博士課程修了者に特徴があり、「採用した」企業(29.3%)よりも、「採用活動は行ったが、採用には至っていない」企業(45.7%)が多い(P.10)。平均採用数も大学学部 62.2 人に対して、博士課程修了者は 3.2 人と非常に少ない。


新卒者採用(大卒・院卒):選考方法・基準/求める人材 (問1)

・新卒採用でエントリーシートの提出を求めている企業は 84.7%であるが、従業員 999人以下の企業(78.0%)よりも 1,000 人以上の企業(89.0%)で提出を求める企業が多い。

・エントリーシートによる選考段階で重視される「意識や能力/学校に関わる要素」の1位は「志望動機」である。

・面接段階で重視される「意識・性格的要素」は、学歴、文系理系を問わず、1位「コミュニケーション能力」、2位「行動力・実行力」、3位「性格、人柄」もしくは「粘り強さ、ストレスコントロール能力」で、概ね共通している。

・面接段階で重視される「能力的要素」は、1位「論理的思考力」、2位「課題発見・解決力」、3位「自己PR力、自己分析力」で概ね共通している。

・エントリーシートによる選考段階でも面接段階でも、文系に比べて理系では「能力的要素」として、「学生時代に学んだ専門分野・知識」(専門知識)が重視されている。製造業では理系に対してとりわけ専門知識を重視している。一方、文系では「自己PR 力、自己分析力」や「文章構成力、論理的思考能力」が理系に比べて重視されている。

・エントリーシートによる選考段階でも面接段階でも重視されている「経験的要素」としては、「サークルや体育会等の活動」(1位)が突出しており、その後に「アルバイト経験」、「海外経験」が続いている。また、文系理系に関わらず製造業では非製造業に比べて「海外経験」を重視する企業が約 20%多い。

・エントリーシートを求める企業のうち、35.8%が課題を感じている(P.16)。具体的には、「記載内容が類似している」、「志望度に関わらず容易に応募できる」、「エントリーシート作成に負荷がかかっている」といった意見、記載内容が類似しているため、「人物評価に限界がある、面接評価との開きがある」、「選考に負荷がかかる」といった意見が挙げられている。


採用動向(問2)

(1)女性(大学卒業・大学院修了の新卒者)

・直近 1 年間の新卒採用に占める女性の採用割合は、明らかに増加している(「51%超」は 2012 年調査の 18.7%から 2014 年調査では 24.3%に増加)。これは製造業でも非製造業でも共通した傾向であるが、非製造業に比べて製造業ではまだ女性の採用割合が低い企業が多い(20%以下の割合は製造業では 39.5%、非製造業では 18.1%)。

・今後 1 年間で女性の新卒採用を「増やす予定」の企業は、非製造業で 22.2%であるが、非製造業と比べてまだ採用割合が低い製造業では 33.3%と高い。


(2)日本人留学生、外国人留学生、外国人新卒者採用

・日本人留学生、外国人留学生、外国人新卒者を採用対象とする企業は既に過半数を超えている。とりわけ外国人留学生を「採用した」企業が多く、52.3%(2012 年は45.7%)である(製造業ではさらに多く 66.3%)。

・ただし、直近1年間の新卒採用割合は、「5%以下」が大半である。なお、日本人留学生と外国人新卒者の採用割合は、2012 年調査から大きな変化はなかったが、製造業では外国人留学生の採用割合「6~10%」の企業が 2012 年の 15.7%から 2014年の 26.4%に増えている。

・前回 2012 年調査と比較して、特に外国人の留学生と新卒者を「採用した」企業は明らかに増えている(外国人留学生は 45.7%→52.3%、外国人新卒者は 17.7%→29.5%)。これに対して、日本人留学生を「採用した」企業はほぼ横ばい(33.6%→33.0%)で、製造業ではかなり減少している(41.2%→37.3%)(非製造業でもほぼ横ばい(29.0%→30.1%))。


(3)既卒者(大卒未就労者)

・直近1年間に既卒者を「採用した」企業は 27.3%、「採用活動を行ったが、採用には至っていない」企業は 42.7%で、計 70.0%の企業が既卒者を採用対象としている。前回 2012 年調査と比べて、採用した企業は約4%、平均採用数も 3.1 人から 4.4 人へと増加している。

・また、既卒者の採用活動をした企業のうち、大学や大学院卒業からの年数を条件としている企業は 49.3%と、前回 2012 年調査(60.0%)と比較して約 10%少なくなっている。ただし、その場合の卒業からの年数の条件は「3年以内」が 78.9%である(この結果は前回調査とほぼ同じ)。


新卒採用の時期(問3)

・現在の新卒採用の時期は、「春の一括採用のみを行っている」企業が 59.7%と大半であるが、このうち 54.5%は、今後、秋採用の導入や通年採用の導入の必要性を感じている。

・既に秋採用や通年採用を行っている企業、まだ行っていないが今後移行を検討している企業を合わせると、全体の7割強を占める(従業員 1,000 人以上では約8割)。

・春の一括採用のみを行う企業のうち、「本来通年採用であるべき」と考える企業は18.8%で、その理由として「留学生など多様で優秀な人材の確保」、「採用数の確保」といった企業側の事情が多く挙げられる一方、「学生、既卒者への配慮」を理由に挙げた企業もあった。


採用後の新卒者の状況(離職率/活躍する新入社員の特徴)(問4)

・採用後の新卒者の状況として、2012 年度入社の新卒者の3年以内の離職率は、企業によってばらつきがあるが、平均 8.7%である。

・従業員 999 人以下の企業では、元々の採用人数が少ないため、数字がぶれやすいが、離職率 0%の企業が 46.1%と定着率が高い企業が多い点は注目に値する(1,000 人以上の企業での離職率 0%は 13.5%)。

・各社で活躍している新入社員は、面接段階で重視されている「コミュニケーション能力」、「行動力・実行力」、「仕事に対する意欲」、「課題解決力」といった能力や資質を、入社後に実際に発揮している様子が自由記述からうかがえる。


学校教育に対して期待すること(問5)

・学校教育に期待する人格的要素は、中等教育(中学校・高校)、高等教育(大学・大学院)とも1位「対人コミュニケーション能力の養成」、2位「自立心の養成」、3位「ストレス耐性」で共通している。

・学校教育に期待する学力的要素は、中等教育では、1位「基礎学力の養成」、2位「一般教養教育」、3位「論理的思考能力や問題解決能力の養成」に対して、高等教育では1位「論理的思考能力や問題解決能力の養成」、2位「専門的な学問教育」、3位「ディベートやプレゼンテーション能力の訓練」である。なお、非製造業と比べて製造業では、高等教育において「専門的な学問教育」が重視されている。

・学校教育に期待する経験的要素の上位3項目は、中等教育と高等教育とも「クラブ活動、サークル活動等の課外活動」、「ボランティア等の社会活動」、「海外留学など国際交流活動」で共通している。製造業では特に「海外留学など国際交流活動」が重視されている(中等教育2位、高等教育1位)。


- 第2部 「教育に対する企業の協力」調査結果 -

職場体験や会社見学やインターンシップの普及(問1・2)

・前回 2012 年調査と比較して、小・中・高校生を対象とした職場体験や会社見学を行う企業は増加している(高校生対象の職場体験や会社見学で 47.7%から 50.9%に増加)。

・大学生・大学院生等を対象としたインターンシップも 2003 年の調査以来、実施率は過去最高となり、着実に普及している(2003 年の 51.8%から 74.6%に増加)。


大学生・大学院生等を対象としたインターンシップ(問2)

・インターンシップを実施する目的として、「学生に業界や仕事内容を理解してもらうため」、「学生の職業観の育成のため」、「社会貢献活動の一環」を挙げる企業が多い。

・2014 年度の実績としては、文系よりも理系学生を受け入れた企業が多い(文系大学生 59.9%に対して、理系大学生 70.1%)。受け入れ人数は、「1~9 人」が主である。受け入れている学年は、大学3年生と大学院修士1年生が圧倒的に多いものの、実際の応募者に学部3年生や修士1年生が多い可能性がある。

・実施期間は、文系、理系を問わず「(4 日)~1 週間以内」が多い(文系大学生45.6%、理系大学生 37.9%)が、文系に比べて理系では「(8 日)~2 週間以内」も多い(理系大学生 31.0%、文系大学生 24.3%)。

・報酬を付与する企業が過半数を占めているが、内訳は交通費や宿泊費等の実費が主で、「実習手当等の報酬」を付与する企業は 13~21%である。

・実施にあたっての課題は、1位「社内体制の整備」、2位「プログラムの企画・立案」、3位「将来の就職との関連性」、4位「参加者の募集・選考」である。

・来年度以降のインターンシップ実施については、「未定」の企業が約半数を占めているが、方針が決定している企業では、受け入れの人数や頻度は「拡大/増やす予定」もしくは「現状維持」の企業に大きく二分される。受け入れ期間は 91.9%が現状維持である。

・大学1、2年生段階でのインターンシップは、まだ実施していない企業が 68.3%と大半を占めるが、そのうち過半数を超える企業が関心を示している。なお、非製造業では既に実施している企業(38.9%)が製造業(22.7%)に比べて多いうえ、受け入れに関心を示す企業も明らかに多い(「ぜひ受け入れたい」、「関心はある」の合計が非製造業では 67.2%、製造業では 56.9%)。

・国内の事業所での留学生のインターンシップの受け入れは 48.8%の企業で実施しているのに対して、海外事業所での日本人学生の受け入れは 18.6%とあまり進んでいない。まだ受け入れていない場合でも、製造業を中心に国内の事業所での留学生の受け入れに関心を示す企業は多い(「ぜひ受け入れたい」、「関心はある」の合計が 48.8%)が、海外事業所での日本人学生の受け入れに関心を示す企業は少ない(26.7%)。


企業として教育に貢献している取組み(問4)

・多くの企業が既に教育に貢献しており、「出前授業/教室/講座への社員派遣」、「講演会/セミナー」、「協賛/支援/助成/奨学金」、「工場や研究施設の見学」の順に実施企業が多い。

・全ての取組みで前回 2012 年調査よりも実施企業の割合が増えており、企業として教育へ貢献するという姿勢は、これまでよりもさらに一般的になっているといえる。


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