外国人留学生の採用に関する企業調査<2015年11月調査> 

2015年12月18日
DISCOは、全国の主要企業12,795社を対象に、外国人社員(日本に留学している外国人留学生、又は、海外に在住の外国人)の採用に関する企業調査を行いました(調査時期:2015年11月26日~12月4日、回答社数:609社)。

企業のグローバル競争が激しさを増し、新興国へのビジネス展開が進む中、優秀な外国人留学生の獲得をめぐり、各企業がしのぎを削る状況が続いています。日本企業は今後ますます外国人を雇用し、活用する必要に迫られています。DISCOでは全国の有力企業を対象に、外国人社員(日本に留学している外国人留学生、または、海外の大学を卒業した外国人)の採用動向や見通しを調査し、分析しました。

【調査結果】

1.外国人留学生の採用状況

調査に回答した企業のうち、大卒以上の外国人留学生をいわゆる高度人材として雇用している企業は 50.6%と半数を超えており、そのうち 2016 年度の採用を見込んでいる企業は 57.1%だった。
2016 年度の採用予定を従業員規模別でみると、従業員数 1000 人以上の企業では「採用予定あり」が7 割を超えているが(71.8%)、1000 人未満の企業でも半数を超えており、外国人社員の採用が企業規模に関わらず、かなり浸透してきた様子が表れている。
製造業・非製造業で見ると、2015 年度の実績は「製造」が 34.6%、「非製造」が 34.1%で大きな差は見られなかったが、2016 年度の見込みは、「製造」が 60.9%と「非製造」の 53.3%と大きく上回り、製造業において、より外国人社員採用への意欲が高まっていることがわかる。

2.外国人留学生の採用規模と属性

2015 年度に外国人留学生を採用した企業の採用人数をまとめた。「1 名」という企業が 44.1%を占め、「2-3 名」(34.4%)とあわせると、全体の 8 割近く(78.5%)が 3 名以下にとどまる。「11 名以上」は 4.3%だった。ただし、従業員 1000 人以上の大手企業では「11 名以上」が 1 割を超えるなど(10.5%)、企業規模が大きくなるほど採用人数も多くなる。平均人数を見ても、大手企業は 9.50 名で、前年実績(2.79 名)の 3 倍以上と急増しているのが目立つ。大手企業に牽引されるかたちで、全体平均も 2.05名から 5.06 名へと大きく増加した。
 採用区分で見ると、「文系(学部)」が 53.8%、「文系(修士)」が 36.6%、「理系(学部)」が 32.3%、「理系(修士)」が 31.2%と、修士以下では文理とも 3 割を超えた。博士課程については 1 割を下回る。

3.外国人留学生が就いた職種

2015 年度に採用した外国人留学生の就いた職種について尋ねた。製造業では「研究・開発・設計関連」が 37.0%と最も多く、「国内営業」28.3%、「IT・ソフトウエア関連」21.7%と続いた。非製造業では「IT・ソフトウエア関連」が 38.8%と最も多く、製造・非製造ともに IT 技術者の人材ニーズの高まりがうかがえる。また、非製造業では「流通サービス・販売関連」(16.3%)が営業職を上回っており、インバウンド対策による需要増を反映した結果と言える。

4.採用対象とする外国人留学生の種類

2016 年度に採用対象とする外国人留学生の属性について尋ねると、「日本の大学での学位取得を目的とした正規留学者」が 81.9%と圧倒的に多いものの、「語学留学者(母国で大卒以上の学位を取得)」19.7%、「日本の専門学校への留学者(母国で大卒以上の学位を取得)」18.1%と、それぞれ 2 割弱の企業が母国の大学を卒業していれば採用対象としていることがわかった。外国人留学生のニーズが高まり続けていることで、日本への留学形態にこだわることなく採用したいという考えが表れている。

5.外国人留学生を採用する目的と、求める資質

外国人留学生を採用する目的を尋ねた。文系・理系ともに「優秀な人材を確保するため」が最も多く、それぞれ 68.1%、73.2%。次いで「外国人としての感性・国際感覚等の強みを発揮してもらうため」が続き、文系で 46.3%、理系で 43.9%だった。一方で、「ダイバーシティ強化のため」が文系で32.5%、理系で 31.7%と 3 割を超え、社内の体質強化に急ぐ企業の思惑も見てとれる。
外国人留学生に求める資質については、文系・理系とも前年首位だった「日本語力」を抑えて、「コミュニケーション力」が1位となった(文系 55.1%、理系 46.3%)。これは、単に語学力を活用する段階から、語学力を活用して社内外の要衝で力を発揮することを求める段階に深化していると判断できそうだ。

6.外国人留学生に求める語学力

相対的に順位を下げた語学力だが、求められていることに変わりはない。具体的にどの程度のコミュニケーションレベルを求めているのかをまとめた。まず日本語については、内定時にビジネス上級レベル以上(レベルの目安は下表参照)を求める企業は、文系 44.9%、理系 36.0%と 4 割前後だった。
これが入社後には、文系 79.1%、理系 74.4%と大きく増えることから、かなり高い水準の日本語力を求める企業が多いことがわかる。採用時に設ける JLPT(日本語能力試験)のレベルも尋ねたが、最高レベルの「N1」は 17.6%に過ぎず、7 割近く(68.6%)の企業は JLPT の基準を設けていなかった。つまり、基準は設けていないものの、求める日本語能力のハードルは高いということだ。

一方、求める英語力のレベルは日本語に比べると若干下がる。内定時にビジネス上級レベル以上を求める企業の割合は、文理とも 2 割弱にとどまり(16.4%、18.3%)、入社後は文系 46.2%、理系 41.5%と半数弱だった。

7.外国人留学生の出身国(地域)

2015 年度に採用した外国人留学生の出身国(地域)は、「中国」が 77.9%と圧倒的に多く、「東南アジア」25.3%、「韓国」18.9%と続く。
一方、今後採用したい国(地域)となると「東南アジア」が最も多く(76.0%)、「中国」は 59.0%で 2 位。これに「韓国」が 25.0%で続く。「東南アジア」は前年調査においても今後採用したい地域の筆頭だった(70.9%)。日本企業の中国進出に伴う中国人材需要が一段落し、人材ニーズが東南アジアへとシフトする中、思うように採用できていない実態が浮き彫りとなった。

8.外国人留学生を採用したことによる社内への影響

外国人留学生の採用実績のある企業に、採用したことによる社内へのさまざまな影響を尋ねた。
好意的な影響としては、「異文化・多様性への理解の向上」が 71.3%と最も多く、「日本人社員への刺激・社内活性化」69.0%、「グローバル化推進への理解、意識醸成」57.5%と続いた。
反面、外国人留学生を採用することにより社内で起きた「問題」としては、「文化・価値観、考え方の違いによるトラブル」66.1%、「言葉の壁による意思疎通面でのトラブル」64.5%、「受け入れ部署の負担増」41.9%が挙げられている。
これらの諸問題は表裏一体であり、「問題」に対して組織として取り組むことで、社内のグローバル化、ダイバーシティへの理解がなお一層進むと考えて間違いないだろう。

9.海外大学卒の外国人材の採用状況

ここからは、海外大学を卒業した外国高度人材の採用状況について見ていく。
海外卒外国人社員の採用は増加の一途をたどっている。外国人社員を雇用している企業のうち、「2015 年度に採用した」と答えた企業は 22.8%と、「2013 年度」の 10.2%、「2014 年度」の 17.3%から増加傾向が続いている。
2016 年度の採用見込みについても「採用予定あり」が 31.7%と着実に増加傾向が表れており、海外大学卒の外国人材採用は、今後、日本企業の大きな課題の 1 つとなっていくと思われる。

10.海外大学卒の外国人材の就いた職種

2015 年度に採用された海外大学卒の外国人材が就いた職種で最も多いのは「IT・ソフトウエア関連」(34.9%)。昨年 31.6%で1位だった「海外営業関連」は 15.9%に減り、「国内営業関連」と同ポイントで 2 位となった。以下、「生産・製造・品質管理関連」が 12.7%で続いた。
ここでも、IT 分野の人材需要が高度外国人材の採用増をけん引している状況が見てとれる。

11.海外大学卒の外国人材の出身国(地域)

海外大学卒の外国人材の出身国(地域)について、今後重視する順に最大で 5 つまで選んでもらった。「東南アジア」が最も多く 68.0%。「中国」42.0%、「北米」「ヨーロッパ」が同順位で 26.0%。留学生と同様に、東南アジア人材のニーズが増え続けている結果が表れている。

12.外国人社員の受け入れと採用活動の課題

最後に、外国人社員の受け入れのために行っていることや、さまざまな課題、定着に向けての処方となるデータを紹介したい。
まず、外国人社員受け入れのための社内的な取組みについて尋ねた。「いずれも実施しておらず、実施予定もない」が 47.9%、「いずれも実施していないが、今後は実施したい」が 27.3%と、合わせて 7割を超える企業(75.2%)が社内的な取組みを行っていなかった。実施しているものとしては、「外国人社員への日本語コミュニケーション能力の研修」が 15.6%、「外国人社員の日本企業文化研修」が8.4%だった。
外国人社員の採用活動における課題としては、「社内の受け入れ体制が未整備」が 46.0%、「優秀な学生の能力判定が難しい」が 35.0%、「求める日本語コミュニケーション能力を有する人材が少ない」が 28.5%だった。外国人社員の採用のすそ野が広がったとはいえ、企業としてはまだまだ手探りで採用活動を行っているようだ。

13.外国人社員の退職理由と活用課題

雇用していた外国人社員の退職理由を尋ねてみた。最も多かったのが「母国へ帰国するため」(52.4%)で、続いて「キャリアアップのため」33.7%、「仕事への適性の問題」20.2%などが挙がった。日本の企業文化や雇用慣行に起因する退職は比較的少ないものの、今後日本企業がグローバル化を進めるうえで、多かれ少なかれ越えなければならない壁だと言える。
外国人社員の活用のための課題としては、「海外人材を活用できる日本人管理者の不足」が 41.7%、「海外人材の社内での日本語コミュニケーション能力の不足」が 37.2%。外国人社員がさらに活躍するためには、外国人社員自身がコミュニケーション能力を高めるのと同時に、企業側も彼らとのコミュニケーション能力を磨かねばならないだろう。


【調査概要】
調査対象 : 全国の主要企業 12,795 社
調査時期 : 2015 年 11 月 26 日 ~ 12 月 4 日
調査方法 : インターネット調査法
回答社数 : 609 社

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