ジェトロは2015年9~10月、欧州に進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施。

【調査結果概要】

(1)業績見通し
営業利益見通しは高水準を維持。


・過去10年間の製造業の営業利益見通しの推移をみると、「黒字」の割合は2008年のリーマン・ショック発生以前を上回る高水準を2年連続で維持している。

・2015年の営業利益見通しは、「黒字」が72.0%(前年比1.9ポイント増)、「均衡」は14.9%(2.1ポイント減)、「赤字」は13.1%(0.1ポイント増)だった。

・前年(2014年)実績と比べての2015年の営業利益見通しは「改善」が39.4%、「横ばい」が39.9%、「悪化」が20.7%だった。営業利益改善の理由として、「現地市場での売上増加」が63.8%、「輸出拡大による売上増加」が35.1%と上位を占めた。

・2016年の営業利益見通しは、「改善」が43.0%、「横ばい」が47.3%、「悪化」が9.7%となり、業種別ではプラスチック製品や食品・農水産加工品などで60%以上の企業が「改善」と回答した。


(2)欧州経済の先行き、今後1~2年の事業展開
欧州経済の先行きに前向きな見方拡がる。


・欧州経済の先行きに対して「景気後退から抜け出すのにまだ時間がかかる」が52.9%(前年比14.5ポイント減)を占めたものの、「すでに景気後退から抜け出した」は20.2%(8.3ポイント増)、「景気後退から近々(半年以内に)抜け出す見込み」が16.1%(4.6ポイント増)となり、景気先行きについて前向きな見方が増加した。EUの経済成長(2015年1.9%、16年2.0%予測)を企業が実感している結果となった。

・今後1~2年の事業展開を「拡大」と回答した企業は48.5%(前年比3.9ポイント減)、「現状維持」は48.2%(3.8ポイント増)であった。製造業の推移を見ると、「拡大」の割合は49.8%(2.9ポイント減)であった。主な業種では医療機器や化学品で「拡大」が多かったが、事業の拡大意欲は一服し、現状維持を示す企業が増加した。


(3)将来有望な販売先
有望な販売先としてトルコが首位、ドイツとポーランドも上位に。


・将来有望な販売先として、前回に続きトルコが第1位であった(270社)。ドイツと同規模の人口(約7,770万人)を抱えるトルコは経済減速に見舞われるなか、今後も成長が期待されている。トルコを含む中東の国を選んだ理由として「需要増に対する期待」が他地域より高く(79.2%)、さらに地理的な要因として「中近東・アフリカ市場へのゲートウェーであるから」などのコメントが挙がった。

・近年、外需から内需へと成長の軸足がシフトした欧州域内からはドイツが第2位(222社)、ポーランドが第3位(212社)に挙がった。欧州域内の国を選んだ理由として、「需要増に対する期待」などのほか、「M&Aによる被買収企業との相乗効果(シナジー)追求」などのコメントも挙がった。欧州では営業・販売強化を目的とした買収の動きが見られる。

・一方、経済停滞をはじめ、EUなどによる制裁や不安定な為替などのリスクを抱えるロシアは前回の2位から4位となった(203社)。


(4)経営上の課題
「欧州の政治・社会情勢」が浮上、欧州企業の競合先としての存在感高まる。


・経営上の最大の課題は「労働コストの高さ」で45.2%(前年比0.2ポイント増)だった。「人材の確保」が43.4%(0.8ポイント増)と続き、特に景気回復や生産拡大の動きが顕著な中・東欧では、製造を担う人手不足に直面している。

・テロや難民問題を背景に「欧州の政治・社会情勢」が35.0%(前年比9.8ポイント増)と、第4位に浮上した。前回第3位の「景気低迷、市場縮小」は27.7%(11.8ポイント減)と大幅に減少した。

・「新たな競合企業の出現」(30.0%、前年比0.5ポイント増)についてその国籍を聞いたところ、中国企業が55.8.%(2.4ポイント減)で最も多かった。欧州企業は40.0%(11.5ポイント増)が大きく増えた一方、韓国企業は22.6%(5.2ポイント減)であった。特に、自動車や化学関連製品などを取り扱う販売会社で欧州企業を新たな競合先とする見方が多い。


(5)EPA/FTA
日EU・ EPAに期待。


・EUが交渉を進める経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)が事業に与える影響について、日EU・ EPAの「メリット大」が34.9%と他のEPA/FTAに比して期待が高い。地域別では、製造業の割合が多い中・東欧(38.5%)が西欧(34.6%)を上回っている。

・EUが交渉中の他のFTAについては、対タイの「メリット大」14.2%が最も高く、在中・東欧企業に限っては20%であることから、日本メーカーがタイで築いたサプライチェーンは欧州進出企業にとっても重要であることが窺える。対米国(14.1%)、対ASEAN(12.0%)が続いた。



【調査概要】
・調査方法・実施時期:アンケート調査・2015年9月17日~10月15日
・アンケート送付先:欧州進出日系企業1,399社(回答企業数957社、有効回答率68.4%。)
・質問項目:(1)業績見通し、(2)今後1~2年の事業展開、(3)将来有望な販売先、(4)経営上の課題、(5)EPA/FTAなど

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[ジェトロ]
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