賃上げに関するアンケート調査(労・使の当事者および労働経済分野の専門家対象) 

2016年02月01日
労務行政研究所は、1974年から毎年、来る賃金交渉の動向を把握するため、「賃上げに関するアンケート調査」を労・使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に実施している。

2016年の調査結果によると、16年の賃上げ見通しは、全回答者495人の平均で「6689円・2.12%」(定期昇給分を含む)となった。ベースアップ(ベア)実施企業が相次いだ昨15年の厚生労働省・主要企業賃上げ実績(7367円・2.38%)は下回るものの、賃上げ率は2%台に乗るとの予測である。労使別に見た平均値は、労働側6616円・2.10%、経営側6553円・2.08%で、両者の見通しは近接している。また、自社の定期昇給については、労使とも「実施すべき」「実施する予定」が8~9割と大半。一方、ベアについては、経営側では「実施する予定」30.1%と、およそ3割がベア実施の意向を示している。

【調査結果の概要】

1.実際の賃上げ見通し
・全回答者の平均:6689円・2.12%で、賃上げ率は2%台に乗るとの予測
・労使の見通し:労働側6616円・2.10%、経営側6553円・2.08%

●額・率の見通し
16年の賃上げ見通しを東証第1部・2部上場クラスの主要企業を目安とした世間相場の観点から回答いただいたところ、全回答者の平均で6689円・2.12%となった。厚生労働省調査における主要企業の昨15年賃上げ実績は7367円・2.38%であり、これは下回るものの、賃上げ率は2%台に乗るとの予測である。労使別では、労働側6616円・2.10%、経営側6553円・2.08%となった。労使の見通しの差は63円・0.02ポイント。
本アンケートにおける「実際の賃上げ見通し」は、企業業績の回復や政府の賃上げ要請などに後押しされ社会的にも賃上げムードが高まる中、14・15年と労使の見通しに開きが生じる結果となっていたが、16年は両者の見通しは近接している。
賃上げ率の分布は、労使とも「2.0~2.1%」が2割台で最も多く、2.0~2.5%の範囲に、労働側では5割台、経営側では6割超が集中している。各種調査による大手企業の“定期昇給率”は平均で1.6~1.8%程度とみられ、今回の調査では前提として定昇率を「1.8%程度」と提示している。調査結果から、定昇に幾らかのベアが上積みされるとの見方をする人が多いといえる。

2 自社における2016年定昇・ベアの実施
※前項の「実際の賃上げ見通し」は、“世間相場”の観点から一般論として回答いただいたものであるが、ここでは自社における来る交渉に向けた考えを尋ねた。
・定昇の実施:労使とも「実施すべき」「実施する予定」が8~9割と大半を占める
・ベアの実施:経営側の「実施する予定」30.1%に対し、労働側の「実施すべき」は74.5%

●定昇の実施
アンケートでは、賃上げ額・率の世間一般的な見通しに加え、自社における賃金制度上の定期昇給(賃金カーブ維持分を含む)および業績等に応じたベースアップ(賃金改善分を含む)の実施についても労使双方に尋ねた(なお、労働側・経営側の回答者は、それぞれ異なる企業に属しているケースが多い点に留意いただきたい)。
16年の定昇については、労働側91.0%、経営側85.3%が「実施すべき」「実施する予定」と回答。経営側の「実施しない(凍結する)予定」は3.5%(5人)にとどまった。実質的な賃金制度維持分に当たる定期昇給については、労使とも大半が実施の意向を示している。

●ベアの実施
ベアに関しては、経営側では「実施する予定」30.1%、「実施しない予定」37.8%となった。一方、労働側では「実施すべき」が74.5%と4分の3を占めた。ベアに対する労使の見解には、大きな違いがある。
各年においてベアを「実施すべき」または「実施する予定」と回答した割合の推移を見ると、2010年以降、低迷する経済経営環境から、労使ともベアの実施には否定的な傾向が続いていたが、労働側は14年に一転、実施派が主流となった。例年、ベア実施には慎重な姿勢を示してきた経営側も、14年16.1%、15年35.7%と「実施する予定」の割合は増加。16年は30.1%で15年に比べるとやや減っているものの、3割がベア実施の意向を示している。

3 2016年夏季賞与水準の見通し
※自社における16年夏季賞与水準の見通しを尋ねた。
・夏季賞与の見通し:前年夏季と「同程度」が5~6割。「増加する」は2割台

●夏季賞与の見通し
前年(15年)夏季と比べて「同程度」が労働側52.5%、経営側60.1%と5~6割を占めた。各機関集計による昨15年の夏季賞与支給実績(主要企業)は前年同期比増加となったが、16年についても引き続きこれと同程度になるとの見方である。また、労働側では27.5%、経営側では21.7%が「増加する」としており、「減少する」はそれぞれ16.5%、12.6%であった。


【調査概要】
・調査時期:2015年12月7日~2016年1月14日
・調査対象:被調査者6350人(内訳は下記のとおり)
◇労働側 東証第1部および2部上場企業の労働組合委員長等2126人(労働組合がない企業は除く)
◇経営側 東証第1部および2部上場企業の人事・労務担当部長2306人
◇労働経済分野の専門家 主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなど1918人
・回答者数および集計対象:1月14日までに回答のあった合計495人。対象別内訳は、労働側200人、経営側143人、労働経済分野の専門家152人
・集計要領・方法:賃上げ額・率は東証第1部・2部上場クラスの一般的な水準を目安に回答いただいたもので、定期昇給込みのものである。「賃上げ額」「賃上げ率」はそれぞれ別の項目として尋ね、具体的な数値の記入があったものをそのまま集計したため、両者の間には必ずしも関連性はない。

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