中小企業の雇用・賃金に関する調査 

2016年02月29日
日本政策金融公庫は、中小企業の雇用・賃金に関する調査結果を発表。(全国中小企業動向調査(中小企業編)2015年10-12月期特別調査)

【調査結果サマリー】

○雇用

・2015年12月において、正社員が「不足」と回答した企業割合は、全業種計で45.4%となり、前年同月(44.3%)から1.1ポイント上昇した。 「適正」は45.1%、「過剰」は9.5%となった。

・2015年に正社員数を前年から「増加」させた企業割合は30.9%、「減少」させた割合は18.0%となった。2014年実績と比べると、「増加」は7.4ポイント低下、「減少」は0.4ポイント上昇した。一方、「増加」した企業の50.3%、「減少」した企業の61.2%が正社員が「不足」と回答しており、必要な従業員を雇用できていない企業が多く存在することがうかがえる。


○賃金

・2015年に正社員の給与水準を前年から「上昇」させた企業割合は、50.4%となり、2年連続で50%超となった。上昇の背景をみると、「自社の業績が改善」(45.3%)の割合が最も高く、次いで「採用が困難」(14.0%)となっている。2016年については、43.9%の企業が「上昇」させると回答しており、特に正社員が「不足」している企業でその割合は高い。

・2015年の賞与(支給月数)を前年から「増加」させた企業割合は、33.1%となり、前年から2.6ポイント低下した。

・2015年12月の賃金総額が、前年比で「増加」と回答した企業割合は54.3%、「減少」は9.5%となっている。2016年については、48.6%の企業が「増加」、4.3%が「減少」を見込んでいる。


【調査結果】

Ⅰ 雇用

Ⅰ-1 従業員の過不足感
○ 2015年12月における正社員の過不足感をみると、全業種計で、「不足」との回答割合が45.4%となった。「適正」とした回答は 45.1%、「過剰」は9.5%となっている。「不足」の割合は、2014年実績と比べて1.1ポイント上昇した。業種別では、「宿泊・飲食 サービス業」(74.5%)「運送業(除水運)」(72.3%)などで、「不足」と回答した割合が高い。
○ 非正社員の過不足感をみると、全業種計で、33.5%の企業が「不足」と回答しており、2014年実績と比べて4.1ポイント上昇した。
業種別では、「宿泊・飲食サービス業」(77.3%)、「小売業」(46.7%)などで高い割合となっている。

Ⅰ-2 人手不足の影響と対応
○ 人手不足の影響についてみると、製造業では、「残業代、外注費等のコストが増加し、利益が減少」(36.3%)と回答した企業割合が最も高く、次いで「納期の長期化、遅延の発生」(24.5%)、「売上機会を逸失」(21.1%)となっている。非製造業では、「売上機会を逸失」(46.5%)が最も高い割合となり、製造業を大きく上回っている。
○ 人手不足への対応についてみると、製造業では、「残業を増加」(54.3%)が最も高く、次いで「従業員の多能工化」(42.3%)となっている。非製造業では、「残業を増加」(33.3%)は製造業に比べて低く、「従業員の多能工化」(45.4%)、「業務の一部を外注化」(38.7%)、「業務プロセス改善による効率化」(21.6%)が製造業より高くなっている。

Ⅰ-3 従業員数の増減
○ 2015年の正社員数の増減をみると、全業種計で、「変わらない」と回答した企業割合が51.1%と最も高くなった。「増加」と回答した企業は30.9%となり、2014年実績(38.3%)と比べて7.4ポイント低下した。また、「減少」は18.0%となった。
○ 正社員数の増減実績別の過不足感をみると、「増加」と回答した企業の50.3%、「減少」と回答した企業の61.2%が「不足」と回答しており、必要な従業員を雇用できていない企業が多く存在することがうかがえる。
○ 2016年見通しをみると、「増加」と回答した企業割合は35.1%となり、「減少」(6.3%)を上回っている。

○ 2015年の非正社員数の増減をみると、全業種計で、「変わらない」と回答した企業割合が66.8%と最も高くなった。「増加」と回答した企業は20.3%となり、2014年実績(28.0%)と比べて7.7ポイント低下した。また、「減少」は12.9%となった。
○ 非正社員数の増減実績別の過不足感をみると、「増加」と回答した企業の49.3%、「減少」と回答した企業の57.1%が「不足」と回答しており、非正社員についても十分に確保できていない企業が多く存在することがうかがえる。
○ 2016年見通しをみると、「増加」と回答した企業割合は19.0%となり、「減少」(9.0%)を上回っている。

○ 従業員数の増加理由をみると、正社員では、「将来の人手不足への備え」が50.0%と最も高い割合となったほか、「技能継承のため」が27.0%みられており、長期的な観点をもって、人材の確保・育成に取り組む様子がうかがえる。また、「受注・販売が増加」は37.9%、「受注・販売が増加見込み」は27.2%となっており、受注・販売の好転が寄与したという側面もみられる。
 非正社員では、「受注・販売が増加」が44.4%と最も高く、次いで「受注・販売が増加見込み」(24.1%)となっている。
○ 減少理由をみると、正社員、非正社員ともに、「転職者の補充人員を募集したが採用できず」が最も高く、人材獲得競争が激しさを増すなか、やむなく従業員数を減らす企業も少なくないことがわかる。

Ⅱ 賃金

Ⅱ-1 正社員の給与水準
○ 2015年の正社員の給与水準をみると、前年と比べて「上昇」と回答した企業割合が、50.4%と最も高くなった。「ほとんど変わらない」は48.7%、「低下」は0.9%となっている。「上昇」回答の割合は、2014年実績と比べて1.8ポイント低下した。
○ 2016年見通しをみると、「上昇」が43.9%、「ほとんど変わらない」が55.4%となっている。
○ 4割弱の企業が2015年実績、2016年見通しともに「上昇」と回答している一方、2015年実績、2016年見通しを通して「ほとんど変わらない」とする回答が4割強みられる。

○ 正社員の給与水準上昇の背景についてみると、全業種計で、「自社の業績が改善」と回答した企業割合が45.3%と最も高く、「採用が困難」(14.0%)、「同業他社の賃金動向」(11.8%)が続いた。
○ 業種別にみると、「自社の業績が改善」と回答した企業割合は、「電気機械」(67.5%)、「生産用機械」(63.3%)、「建設業」(58.4%)などで高い。「採用が困難」は、「水運業」(37.5%)、「宿泊・飲食サービス業」(33.8%)などで、「同業他社の賃金動向」は、「輸送用機械」(38.8%)などで高くなっている。
○ 雇用状況と給与水準の関係をみると、正社員数が「増加」した企業で、給与水準の「上昇」回答割合が高くなっている。また、正社員が「不足」している企業で、2016年の給与水準見通しが「上昇」すると回答した企業割合が高くなっている。

Ⅱ-2 賞 与
○ 2015年の賞与の支給月数をみると、前年と比べて「変わらない」と回答した企業割合が49.6%と最も高く、「増加」が33.1%、「減少」が12.3%となっている。「支給せず」は5.0%みられた。
○ 夏季・冬季別にみると、冬季は、前年と比べて「増加」が34.8%と、夏季に比べて2.2ポイント上昇した一方、「減少」(11.4%)との回答割合も上昇している。

Ⅱ-3 賃金総額
○ 2015年12月の賃金総額をみると、前年と比べて「増加」したとの回答割合が54.3%と最も高く、「ほとんど変わらない」が36.2%、「減少」が9.5%となっている。2014年実績と比べて、「増加」の割合が低下し、「減少」の割合が上昇している。
○ 2016年の見通しをみると、48.6%の企業が「増加」すると回答している。「減少」は、4.3%となっている。


【調査概要】
調査時点:2015年12月中旬
調査対象:当公庫(中小企業事業)取引先 12,800社
有効回答数:5,060 社 [回答率 39.5 %]

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