シニア消費予測『YOMIKOシニア白書』 

2016年04月25日
読売広告社は、リサーチ・アンド・ディベロプメントと共同でシニア層に関する研究を行い、クライアントの皆様のシニア層向けのプロモーション、商品開発支援等に活用する基礎資料として、シニア層の最新動向にかかわるデータを幅広く収集・分析した『YOMIKOシニア白書』の編集・制作を行いました。

同白書のベース資料「シニアファクトブック」では、両社のオリジナル生活者調査である「CANVASS」「CORE」に加えて官公庁等の各種公的調査の結果からシニア層の動向や意識等の実態の把握・分析を行っております。
またシニア層の家計消費や介護、医療費等については、今後さらに進む高齢化による人口動態の変化を反映した最新データに基づく独自の試算による将来推計を行いましたので、今回その結果の概要をご報告いたします。

【シニア層研究 将来推計レポート・トピックス】

■拡大が続く世帯主50歳以上の家計消費支出は2020年過ぎにシェア7割・170兆円を超える
 一方、急増が続いた世帯主65歳以上の高齢者世帯消費額は2020年以降は横ばい傾向に

■要介護シニア急増 2015~25年で約200万人増加して2030年には900万人超になる
 一方、介護不要の「アクティブシニア」高齢者人口増加は今後5年程度で頭打ちに

■65歳以上医療費 増加抑制しなければ2030年に37兆円、2040年には48兆円に

【調査結果】

シニア層世帯主年代別の家計消費支出の将来推計

■50代の消費拡大の一方、65歳以上の高齢世帯層の消費は間もなく頭打ちに
今年発表された最新の総務省・全国消費実態調査の結果によると、日本の家計消費全体に占めるシニア世帯の消費のシェアは、2014年時点で世帯主が50歳以上で67.6%と全体の2/3以上を占め、60歳以上で45.8%、65歳以上で34.3%、70歳以上で21.8%となっていると推定されます。
今後も二人以上世帯・単身世帯男女それぞれの年代別の消費額が一定で推移するという仮定で、世帯主の年代別世帯数の将来変動(人口・世帯動態の変化)のみを反映した推計では、高齢化の進行と共に世帯主50歳以上では増加が続き2020年過ぎに7割を超えるものの、世帯主60歳以上では2030年頃までは横ばい傾向となることが見込まれます。
また、団塊世代が今後加わる世帯主が70歳以上の世帯の消費シェアは2020年前半までは急上昇するもののその後横ばいで推移することが見込まれます。
2014年のGDPの家計最終消費支出額(暦年名目値・ 約241.6兆円)をベースに、 人口・世帯動態の変化のみを反映した家計消費支出額・年代別概算値を試算したところ、世帯主50歳以上では2020年年代には一時170兆円を超えるもののその後減少に向かい、世帯主60歳以上、65歳以上の世帯の家計消費支出の総額は概ね横ばいで推移することが予想されます。
高齢化がますます進む中でも、60代を中心としたアクティブなシニア世帯の消費拡大の頭打ち傾向が出てくることが予想されることから、消費財メーカーや流通・サービス企業は、各年代のボリューム変動とそのニーズ変化にきめ細かく対応していくことが必要となります。

推計・試算方法
総務省の全国消費実態調査の2004年~2014年の世帯主年齢階級別の消費支出額(総世帯) と世帯数分布により各世帯主年代別の消費支出シェアを算出。
また2015年以降の各年のシェアについては、年代別の家計消費額(二人以上世帯、単身世帯男女ベース)が2014年から一定であるという前提で、日本の世帯数の将来推計での2014年比の各年の世帯主年代別の一般世帯数の変動率を乗じて算出。
家計消費支出額は、2004年~2014年まではGDPの家計最終消費支出額(名目値)をベースにしたシェアを適用し、推計値は2014年実績をベースに各年の年代別の世帯あたり支出額が一定である前提で2014年比の年代別の世帯数の増減を反映して概算値を算出。

~データ出典~
◇世帯主年齢階層別家計消費支出: 総務省統計局 平成16年、平成21年、平成26年全国消費実態調査(総世帯、二人以上世帯、単身世帯)の年齢階級別の消費支出額および世帯数分布
◇2015年以降の世帯主年齢階層別世帯数・変動率: 国立社会保障・人口問題研究所日本の世帯数の将来推計(全国推計・平成25年1月推計) 世帯主の5歳階級別一般世帯数
◇2004年、2009年、2014年(暦年)の家計最終消費支出総額:内閣府 2014年度国民経済計算確報 国内総生産(支出側、名目)家計最終消費支出(除く持ち家の帰属家賃)

最近のシニア層世帯主年代別の家計消費支出動向

■昨年からはシニア消費の伸び悩みの傾向が見える中、シニア各年代別の嗜好 ・ニーズ変化への戦略的な対応がますます重要に

総務省の家計調査年報の世帯主年代別の各年平均の家計消費支出額を見ると、2012年から2014年にかけては55歳以上のシニア世帯ではいずれも増加傾向が続いていましたが、今年2月に発表された2015年平均速報では低下傾向が見られ、世界的な景気の不透明感が高まり株価がピークを超えたことによるマイナスの資産効果の影響などがあったことも考えられます。
二人以上の世帯では世帯主が50代前半前後の世帯が「世帯全体の消費支出額」が最も高く、それ以上の世帯では年代が上がるほど低下傾向が見られますが、「一人あたりの消費」ではまた別の傾向も見られます。
家計調査の2015年平均速報をベースに、二人以上の世帯の「世帯員一人あたりの消費支出額」を算出してみたところ、世帯主の年代が50代後半から60代後半までが最も高いゾーンとなっています。
世帯主70代以上の世帯ではやや低下傾向が見られるものの、世帯主が80代前半までは世帯員一人あたりの消費額は子供との同居が多い子育て世代である世帯主が40代以下の世帯よりもはるかに高い水準となっています。
シニア世帯では、子供の独立等により世帯人員が少なくなることで世帯全体の消費額は低下していくものの、世帯員一人あたりの消費水準は、若い世代よりもはるかに高いポテンシャルを持っていると考えられます。
これから2020年にかけて、人口のボリューム層である団塊世代が、1人あたり消費額のピークである60代後半から70代へと突入していく中で、同世代を中心としたシニア世代の加齢に伴う嗜好やニーズの変化への対応や潜在的なニーズの掘り起こしを行うなどの戦略的な対応を進めていくことがますます重要になります。

~データ出典~
◇世帯主年代別の月平均家計消費支出額:総務省統計局 家計調査報告(家計収支編・二人以上の世帯)平成24年(2012年)~平成27年(2015年)平均速報の全世帯および年齢階級別の消費支出額および世帯数分布数
◇世帯主年代別の世帯員一人あたり消費支出額:総務省統計局 家計調査報告(家計収支編・二人以上の世帯)平成27年(2015年)平均速報の年齢階級別の消費支出額、世帯人員

要介護/アクティブシニア高齢者人口の将来推計

■要介護シニア 2015~25年で約200万人増加 2030年には900万人超に
厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によると、平成27年(2015年)4月度の要介護認定者は608万人となり、平成12年からの15年間で2.79倍、平成22年からは1.25倍となっています。
また、同省の「介護給付費実態調査」によると、要支援を含む要介護の認定者割合(認定率)は前期高齢者の65-74歳では男女とも3%~6%程度と低い水準であるものの、後期高齢者となる75歳以上では急激に増加し、女性では80代後半に、男性では90代前半には過半数を超える認定率となっています。
男女・年齢階級別の要介護認定率は過去数年では大きな変動がなく一定水準で推移していることから、今後もこの水準が続くものと仮定し、2015年10月時点の認定率をベースに、国立社会保障・人口問題研究所の推計に基づく各層の将来人口から試算した65歳以上の要介護のシニアの人口は、2015年(10月時点)の
632万人から5年ごとに100万人前後の増加が続いて2030年頃には900万人を突破し、2050年以降は日本人口の10人に1人が要介護認定者という時代となることが予想されます。
一方、介護不要である「アクティブシニア」の高齢者人口は、2015年の2,795万人から2020年には2,887万人へと100万人以上増加するものの、その後は減少に転じて2,800万人を挟んだ増減を繰り返すことが予想されており、2020年以降の15年間に増える高齢者は要介護シニアばかりという時代となります。

推計・試算方法
各年の男女・年齢階層別の将来推計人口に2015年10月時点の男女別5歳区分の年齢階層別要介護率(要介護者+要支援者数/推計人口)を単純適用して算出。

~データ出典~
◇要介護者数: 厚生労働省 介護給付費実態調査 2015年11月審査分・10月時点データ
◇2015年10月男女・年齢階層別推計人口:総務省統計局 人口推計 各年10月1日現在人口(2016年3月22日公表)
◇2015年以降の男女・年齢階層別将来人口: 国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成24年1月推計)出生中位・死亡中位推計

高齢者医療費および国民医療費の増加・将来推計

■ 65歳以上医療費 抑制しなければ2030年に37兆円、2040年には48兆円に
厚生労働省が2015年10月7日に発表した2013年度の国民医療費によると、国民一人当たり平均の年間の医療費総額は31万円となり、年齢5歳階級別では10代や20代は全体平均の1/3程度と低いレベルであるが、それ以上の年代では年齢が上がるほど増加ペースも大きくなり、後期高齢者では70代後半で78万円、80代前半では93万円、85歳以上では105万円となっています。
2014年度以降も2013年度の一人あたり医療費を増加させずに凍結するとした仮定で人口変動要因のみでの試算(A)では、高齢者医療費の今後の増加は最大5兆円程度にとどまり、国民医療費の総額も人口減少により2030年代には減少に向かうことが予想されます。
しかしながら、一人あたり医療費は、調剤薬局医療費の増加などにより年代でやや差があるものの毎年1~2%程度の増加傾向が続いており、増加率がこのままのペースで継続すると仮定して人口変動要因を加えて推計(C)を行ったところ、2015年で25兆円程度である65歳以上の高齢者の医療費は増加を続け、2030年に37兆円、2040年には48兆円と2倍近くになり、国民医療費全体も70兆円に達することが予想されます。
高齢者を中心とした医療費の増加抑制は急務であり、厚生労働省も積極的に取り組んでいることから、現実には一定程度の増加の抑制が行われて両者の中間程度(B)で推移する可能性が高いと考えられます。

推計・試算方法
厚生労働省が発表する2013年度までの国民医療費の男女5歳階級別の医療費(入院医療費、薬局調剤医療費、入院外+その他医療費の3区分)のそれぞれに対して、2013年比での各年の男女年代別の人口変動率を乗じて人口動態の将来変化を反映。(シナリオA)シナリオCでは、男女年齢階級・種類3区分別に「過去10年平均」「過去5年平均」「過去3年平均」「対前年」の増加率の平均値を算出し、この対前年増加率をシナリオAの各年の数値に適用して算出した。
シナリオBでは、高齢者層を中心に各区分の増加率を半分程度に抑制し、さらに1%を超える部分についてはその超過分を半分に抑制する新たな対前年増加率を設定し、これをシナリオAの各年の数値に適用して算出した。

~データ出典~
◇男女5歳階級別・3区分の一人あたり
医療費: 厚生労働省「平成12年~25年度国民医療費の概況」 第8表 国民医療費・構成割合・人口一人当たり国民医療費、診療種類・性・年齢階級別
◇2014年以降の男女・年代別将来人口: 国立社会保障・人口問題研究所日本の将来推計人口(平成24年1月推計) 出生中位・死亡中位推計 男女年齢5歳階級別人口


「読売広告社、リサーチ・アンド・ディベロプメント試算・推計」

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